円高支援の材料が、欧米で同時に生まれてきた。円売り投機筋にとっては、追い詰められる状況だ。欧米が、9月に同時利下げする可能性が高まったことは、円高へ強力な支援材料になる。円高により輸入物価抑制で実質消費が高まれば、日本経済の浮揚へ向けて大きな力になる。
8月のユーロ圏の消費者物価指数は、前年同月比2.2%上昇で2021年7月以来、およそ3年ぶり低水準になった。この結果、9月の追加利下げが確実である。現在の政策金利は3.75%である。0.25%の利下げになれば、3.50%が新金利だ。一方、米国FRB(連邦準備制度理事会)は9月、利下げすることが決定的になっている。労働需給の緩和が、失業率を上昇させており利下げの理由である。利下げ幅は0.25~0.5%とみられる。この結果、現在の5.25~5.5%金利は一挙に5%も考えられる。
『日本経済新聞 電子版』(8月30日付)は、「8月のユーロ圏消費者物価、2.2%上昇 3年ぶり低水準」と題する記事を掲載した。
8月のユーロ圏の消費者物価指数は、速報値で前年同月比2.2%上昇した。伸び率は2021年7月以来、およそ3年ぶり低水準になった。欧州中央銀行(ECB)は、次回9月の理事会で追加利下げに向けて議論する。
(1)「伸び率は、事前の市場予想と同じ水準だった。7月までは6カ月連続2%台半ばで推移していた。価格変動の大きい食品やエネルギーを除くと2.8%で、7月の2.9%から小幅に鈍化した。ECBは9月12日に金融政策を話し合う理事会を開く。6月に4年9ヶ月ぶりに利下げを決めた後、7月は政策金利を据え置いた。理事会内部では9月の追加利下げを容認する声が上がっている。金融市場の参加者も利下げを確実視している。残る焦点は拙速な金融緩和に慎重なタカ派メンバーの判断に絞られつつある」
ECBは、28ヶ国の中央銀行が加盟している。それだけに意見調整で時間をとられるが、中核のドイツ経済の浮揚を確かなものにするためにも追加利下げが必要になっている。
『日本経済新聞 電子版』(8月28日付)は、「円一段高の芽、ユーロ起点 米欧同時利下げの可能性と題する記事を掲載した。
市場の注目を集めた8月23日の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が9月の利下げを事実上予告し、いったん円高・ドル安が強まったが、その後は落ち着きを取り戻しつつある。だが、円相場が一段高になる可能性は消えていない。波乱の芽はユーロだ。
(2)「この程度で収まったか」。マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)の深谷幸司氏は今週の円相場の動向に、こんな感想を抱いた。9月の米利下げの有無が最大の関心事だったジャクソンホール会議で、パウエル議長は「政策を調整すべき時が来た」と宣言。週明けの為替市場では一時、1ドル=143円台まで円高・ドル安が加速した。だが市場の興奮をよそに、その後は再び145円台に揺り戻す場面もあるなど、一方的に円高が強まる展開にはなっていない」
FRBの9月利下げ「声明」は、円高相場へ大きな支援材料であったが結果は、ほどほどにとどまった。
(3)「何が円高の勢いを鈍らせたのか。理由の一つはユーロの動向だ。23日のニューヨーク市場では円高・ドル安だけでなく、ユーロも対ドルで買われ、一時は2023年7月以来のユーロ高・ドル安水準を付けた。パウエル氏の発言ばかりに関心が集中した結果、米利下げ予告がドル独歩安を招いたわけだ。だが日米欧の金融政策環境をみると、ドル独歩安とは異なる相場観が浮かんでくる。FRBのパウエル議長は9月の利下げ開始を事実上予告した。一方、日銀は7月末に利上げを決め、植田和男総裁は日銀の見通し通りに経済が進めば「もう少し金利を調整できる局面が来る」として、今後の追加利上げを排除しない。
ニューヨーク市場が、円高・ドル安だけに傾かなかったのは、同時にユーロも買われたからだ。ドル売りが円買いとユーロ買いに分散された結果である。この流れが、9月に円買い一本に集中するという予測である。ユーロが、9月に利下げするからだ。
(4)「ジャクソンホール会議では、ECBのレーン専務理事が「高すぎる金利があまりにも長くなれば、慢性的に物価目標を下回りかねない」として、過度の金融引き締めによるリスクに言及した。追加利上げのカードを手放さない日銀に対し、インフレ収束を見込んで利下げ姿勢を強め始めたFRBとECB。そこから浮かぶ為替相場の力学は、ドル独歩安ではなく、円独歩高ではないか」
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