韓国経済は、表面的には先進国型をしている。だが、金融面での脆弱性は覆いがたく、長い金融引き締めによって、次々と実勢悪が表面化している。その一つが、プロジェクト・ファイナンスである。これは、特定の事業・プロジェクトを独立した事業体とし、そのプロジェクトから生み出される収益およびキャッシュフローを返済原資とするファイナンス(融資)である。ところが、韓国の金融引き締めは21年8月に0.5%から引上げられ現在、3.50%である。こうした高金利に耐えられず、事業体が破綻して当初、見込みの利益が上がらず不良債権化している。
『ハンギョレ新聞』(8月30日付)は、「韓国の不動産PF、『不良憂慮』予想よりも深刻 当局予想の2倍」と題する記事を掲載した。
(1)「韓国の不動産プロジェクトファイナンス(PF)の不良水準が金融当局の予想以上に深刻であることが分かった。6ヶ月以内に処分しなければならない「不良憂慮」の判定を受けた事業場の規模は13兆5000億ウォン(約1.5兆円)で、当局の予想値(約7兆ウォン)の2倍に達する。特に、不良事業場は大半がセマウル金庫など相互金融と貯蓄銀行が融資したところだった」
金融当局の監視の目が行き届かないところで不良債権が発生した。
(2)「韓国金融監督院が8月29日に発表した「金融会社の不動産PF事業性評価結果」によれば、「不良憂慮」等級判定を受けた事業場の規模は13兆5000億ウォンに達する。当局は、不動産事業場の安定性の水準によって「良好」「普通」「留意」「不良憂慮」の4等級に分類している。「留意」の判定を受ければ再構造化や自律売却計画を、「不良憂慮」の判定を受ければ競売・公売計画を立てなければならない」
当局は、不動産事業場の安定性の水準によって「良好」「普通」「留意」「不良憂慮」の4等級に分類している。絶えず、金融機関を通して状況把握すべきであったが、実態は生ぬるかった。特に、金融引き締め下では経営破綻が起こって当然である。その「覚悟」が足りなかった感じだ。
(3)「当局は今年5月、PF全体(230兆ウォン=約25兆円)のうち、競公売物は2~3%(4兆6千億ウォン~7兆ウォン)程度になると予測したが、実際の結果は2倍ほど多かった。「留意」と「不良憂慮」の判定を受けた事業場の規模(21兆ウォン=約2.3兆円)である。「不良憂慮」判定を受けた事業場は、主に相互金融が融資したところが多かった。金融業圏別のエクスポージャーを見れば、セマウル金庫などの相互金融が6兆7千億ウォンで最も多く、貯蓄銀行3兆2千億ウォン、証券会社1兆9千億ウォン、キャピタルなど与信専門会社1兆4千億ウォン、保険会社2千億ウォン、銀行2千億ウォンの順だ」
相互金融とは、協同組合として組織されたもので、農協・水産業協同組合(以下水協)・信用協同組合・山林組合・セマウル金庫は、五大相互金融機関とされる。家計金融を取り扱う代表的な庶民の金融機関である。この相互金融が、不動産プロジェクト・ファイナンスに融資して回収で問題が起こった。回収まで長期を要するだけに、相互金融が行うには不適当な融資対象であろう。相互金融は、家計の小口貯蓄を集めている。融資対象は健全なものに限るべきであった。
(4)「当局は、現段階では各金融会社が不動産PFの不良を吸収できる水準の資本を持っていると判断した。今回の評価で引当金がさらに積み立て(6兆7千億ウォン)られたのは、金融会社が増資などを通じて資本比率を高めたためだ」
問題債権が発生したが、これによって個別金融機関の経営に破綻が起こる懸念はないという。不幸中の幸いだが、相互金融では融資対象を限定すべきだろう。
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