中国は、40年以上もインフラ投資優先策を貫いてきたので、もはやリターンが期待できるめぼしいプロジェクトが減っている。そこへ、地方政府の資金調達が困難になってきた事情も加わり、インフラ投資の進捗率は例年よりも遅れている。こうしたことから、投資効果の怪しいインフラ投資を行うよりも、生活難の人たちを救済する現金支給のほうがはるかに効果的とする意見も出てきた。これまでにない変化だ。
『ロイター』(8月30日付)は、「中国地方政府の起債低調 無駄な投資抑制で成長目標達成に暗雲」と題する記事を掲載した。
中国の地方政府による債券発行が、計画に比べて遅いペースとなっている。無駄なインフラ投資に対する監視が強まっているためだが、中国全体の経済成長が、伸び悩む要因ともなりかねない。
(1)「地方レベルの投資は中国経済を安定的に成長させる最も効率的な手段の一つとして長年その役割を果たしてきた。しかし、このような投資が全て生産的であったわけではない。過去10年間で交通量が少なく維持費がかかる鉄道、道路、橋に多額を費やした結果、成長率を上回るペースで債務が増加していることが何よりの証拠だ」
中国の生産性が逓減しているのは、無駄なインフラ投資を増やしている結果である。地方政府が、資金難もあってようやく選別する姿勢を見せ始めている。
(2)「無駄な支出を抑制するため、当局は最も重い債務負担を抱える12省を中心に投資プロジェクトへの監視を強化した。その結果、今年1─7月に地方政府が発行した特別債は3兆9000億元(5460億ドル)の枠に対して45.5%にとどまっている。これは2023年同時期の65.7%、22年の95%と比べて低い水準だ」
当局は、貴重な財源を効果的に投資することを始めている。これが、インフラ投資の進捗率を遅らせ、GDPにマイナス効果をもたらしている。
(3)「中国政府は、今年の経済成長率目標を5%前後としているが、家計消費の低迷と深刻な不動産苦境に脅かされる中、地方の財政出動が予定通り進まなければ目標達成に暗雲が漂う。ムーディーズ・レーティングスのシニアアナリスト、ジャック・ユアン氏は「短期的に採算の合うプロジェクトを見つけるのは難しい。国主導の投資がなければ多くの地方は成長目標を達成することが難しくなるだろう」と語る。同氏を含め多くのアナリストは、当局が7月の主要会議で表明したように成長目標達成を優先するため、今後数カ月で債券発行は加速すると予想。しかし、そのためには中央政府が地方に対して、資金の新しい使い道を認める必要がありそうだ」
今年の5%前後の成長率目標は、しだいに困難になっている。無駄な投資を増やして財政赤字を増やしては、元も子もないからだ。こうして、大きなジレンマに立たされている。
(4)「1─7月のインフラ投資は前年同期比4.9%増と、伸び率は23年同期の6.8%から鈍化した。高水準の債務を抱える甘粛省の省都・蘭州のある政府関係者は、地方が支出を減らしている分野の一つは都市景観整備だと指摘した。特別債を活用した緑地整備は一時的な雇用を生み出すものの、長期的な生活水準の向上にはつながらず、何の収益も生まない。このような支出は今年から行われなくなったという。北京市政府の関係者は「以前の資金申請は簡単だった。(しかし今は)なぜそのプロジェクトをやらなければならないのかを打ち出す必要がある。あらゆるプロジェクトはコストと言われる」と明かす」
1─7月のインフラ投資が、前年同期比4.9%増である。伸び率は23年同期の6.8%から鈍化している。これは、極めて象徴的である。「無い袖は振れない」という厳しい現実を反映している。
(5)「ある政策アドバイザーは匿名を条件に、成長を促進するために政府投資に傾倒した結果、債務と腐敗を招いたと説明。地方政府は債務の利息を返済できるだけの収益を生み出すプロジェクトを見つける必要があるとする。「しかし、そのようなプロジェクトが毎年あるわけではない。低所得層にお金を配り、消費を活性化させた方がいい」と指摘する」。
無駄なインフラ投資をするよりも、低所得層へ現金を支給する方が効果的である。こういうところまで認識が変わってきた。習氏は、直接的な消費刺激策を浪費とみているが、無駄なインフラ投資の方がはるかに浪費的である。


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