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家計が、稼いで使う余裕資金の「黒字額」が減り続けている。実に2年、8四半期連続である。実質所得が、事実上ほとんど増えていないのだ。利子と税金など非消費支出の増加が、黒字減少の主な理由である。金利が、約2年前から上がり始めた影響がでている。だが、金利が上がっても借金を重ねる家計も異常だ。金利が増えれば、借金を減らすのが普通である。それが逆であることが、韓国家計の特色である。

 

『中央日報』(9月3日付)は、「圧迫強まる家計の財布、さらに大きくなる内需不振への心配」と題する社説を掲載した。

 

稼いでも残るものがない」という言葉がぴったりだ。家計の余裕金が2年連続で減少した。高まる物価と増えた借金負担のためだ。統計庁によると、今年4-6月期の世帯黒字額(全国・1人以上・実質)は月平均100万9000ウォン(約10万円)で、前年比1.7%減った。ただ、かろうじて100万ウォン台を維持した。

 

(1)「世帯黒字額とは、所得から利子や税金など非消費支出と衣食住などに使う消費支出を引いた余裕金のことだ。貯蓄や資産購入あるいは投資、負債償還などに使えるお金だ。このお金が減るというのは家計がさらに圧迫を受けて、資産を増やしたり借金の負担を減らしたりすることが難しくなるという意味だ」

 

普通、「可処分所得」という概念が使われる。所得から税金や社会保険料を差し引いたものだ。韓国ではここからさらに、利子を引いている。これが、韓国のいう「世帯黒字額」である。だが、現在のように金融引き締め下では金利負担が増えて当然で、世帯黒字額が減るのだ。となると、金利支払は、家計の借金の結果であるから、一概に政府の責任とは言えない。借金した当人に責任が帰する。韓国では、家計が高金利下でも債務を増やす異常行動に出ている。自ら世帯黒字額を減らす行為に出ているのだ。

 

(2)「さらに心配なことは家計経済の体力が引き続き落ちていることだ。2022年7-9月期から8期連続で世帯黒字額が減って、2006年の統計集計以来、歴代最長期間減少を記録したためだ。世帯黒字額減少は物価が跳ね上がって実質所得が縮小した影響だ。そのうえ利子費用は2022年7-9月期以降、6期連続で二桁増加率を記録して家計の余裕金を減少させた」

 

債務を増やした結果、金利負担が増えている。世帯黒字額は減って当然である。こういう理屈になるはずだが、それを政府の責任としているのは不思議な論理構成である。

 

(3)「家計の財布が薄くなり、余裕金が減れば費用を減らすほかはない。家計経済が活力を失えば内需不振と景気鈍化につながる。実際に商品と外食消費などを含む実質の消費の流れを示すレストランを含んだ小売販売額指数が7月は101.9で、1年前より2.3%減った。歴代最長期間である16カ月間、減少している。景気指標も憂鬱だ。現在の景気状況を示す景気動向指数循環変動値も7月98.4で、前月比0.6ポイント下落した。100を下回る場合、景気が悪化しているという意味だ」

 

金利が上がれば、債務を減らす。こういう正常な行動が取れない点を改めるべきである。

 

(4)「このような状況であるにもかかわらず、大統領と政府の景気認識は楽観的だ。企画財政部は最近の経済動向で「ゆるやかに内需回復の兆しが見える」と明らかにした。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も先月29日の国政ブリーフィングで「韓国経済が確実に生き返っていて今後もっと大きく跳躍するだろう」と話した。このような診断と判断には半導体が主導する輸出回復に対する期待が反映されているようだが、問題は輸出が主導する好調が内需につながっていかないところにある」

 

政府が、景気見通しで楽観的あるのは批判されるべきだ。ただ、家計債務が対GDP比で100%を超えているにも関わらず、さらに借金を重ねる家計の非常識さも是正されるべきだろう。金利引上げは、中央銀行の「警戒警報」である。家計が、それを無視して借金に走るのは異常行動と呼ぶべきである。

 

(5)「民生は、経済指標で明らかになった経済状況よりももっと厳しく大変だ。健全財政基調を維持する現政府の立場では、大々的な内需浮揚策が難しい。このことから、経済の活力を育てるためには、企業投資を拡大した雇用創出によって所得を高め、消費を増やす好循環構造を作らなければならない。このためには、野党を説得して経済再生法案処理を急ぐ一方、産業構造と規制改革にもより一層スピードを出さなければならない」

 

先ず、金利を引下げられる環境の整備である。家計が借金を慎むことによって、利下げ環境条件が整うのである。