中国不動産開発業界にとって、住宅竣工前に販売する「青田売り」がしだいに抑制に向っている。竣工後に販売する正常化が動き出した。この方式では、建築資金のない企業に真似ができないので、業界が自然淘汰に向うであろう。過渡期の住宅販売は、大きく落込むであろう。
『日本経済新聞 電子版』(9月3日付)は、「中国住宅、「青田買い」減少 販売比率18年ぶり低さ」と題する記事を掲載した。
中国の住宅市場で、完成前の予約購入を避ける動きが広がってきた。新築の販売額に占める比率は18年ぶりの低さとなった。住宅不況で資金繰り難に陥った不動産開発会社による工事中断が相次ぎ、完成前の「青田買い」を敬遠する消費者が増えている。
(1)「予約販売は、不動産開発会社にとって資金回収までの期間が短く、新たな開発を進めやすい。住宅供給を拡大する観点から中国の住宅購入の主要な方法として定着した。不動産市場が拡大して価格が上昇した場合でも消費者は割安に購入できるメリットがあった。中国国家統計局によると、1〜7月の新築販売面積は前年同期より21%少なかった。全体でみれば住宅販売は落ち込みに歯止めがかかっていないが、完成前の予約販売と完成後販売を分けると状況は大きく異なる。中国で一般的な予約販売は3割近く減少した一方、完成後販売は2割増えた」
予約販売といえば聞こえは良いが、実態は「青田売り」である。消費者からみれば「青田買い」だ。業界用語では、「青田売り」が正しい用語である。青田売りの抑制は、業者にとっては資金繰りが大変になる。
(2)「新築販売額全体に占める完成後販売の比率は、20%を超えた。各年1〜7月で比較すると2006年以来の高さとなった。住宅不況で開発会社が深刻な資金繰り難に陥ったことが背景にある。22年には、予約販売の物件で工事が中断する例が続出した。引き渡しが遅れて入居できない家主による抗議デモや住宅ローン返済の拒否が全国で広がった。
マンションの販売現場も「青田買い」への警戒感を強める消費者を安心させようと腐心する。「このマンションはすべて完成済みの物件です」。東北部の遼寧省大連市内の住宅展示場で男性営業員は訪れた客一人ひとりに説明して回った」
竣工後販売が、全体の20%になったという。残りは依然、「青田売り」である。竣工後販売は、売れ残れば全て在庫になるだけに、立地条件など慎重になるので勢い新規着工は減るはずだ。
(3)「中国共産党や政府も、引き渡しの遅れという不満が政府批判に向かいかねないと警戒する。党が7月に開いた第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)の決定全文は「予約販売制度の改革」を盛り込み、完成後物件の販売を推進する方針を決めた。地方政府は方針に基づき、具体策を打ち出してきた。完成後の販売を条件に開発企業に税優遇を認めたり、銀行の融資枠を増やしたりする動きがある。完成後物件を買う家主が住宅ローンを借りる際に地場銀行などに審査を優先させるという措置もある」
竣工後販売は、在庫リスクが高まるので地方政府が支援しなければならないだろう。
(4)「広州市は8月、分譲型の公営住宅をすべて完成後販売に切り替える方針を示した。中国のシンクタンク、中国指数研究院の陳文静氏は「完成後販売の比率は今後も緩やかに上昇していく」と見通す。開発会社が完成後販売の物件を増やすと、資金回収までの期間が長くなる。完成前の予約販売に比べて建設に必要なコストが2〜3割上がるとの試算もある。引き渡し遅延のリスクがなくなる分、消費者の安心感は高まる」
完成後販売の物件は、建築コストが2~3割上昇する。これは、金利負担分であろう。ただ、消費者はこれまでのような引渡しリスクがなくなるので、若干の価格アップを我慢することだ。
(5)「値下がり圧力のかかるなかで販売が上向いても、開発企業が必要な資金を回収して資金繰りを改善させられるかは不透明なところも多い。ニッセイ基礎研究所の三浦祐介主任研究員は、「資金の回転が遅くなり、不動産会社はこれまでのような攻めの経営がしにくくなる」と指摘する」
不動産バブル崩壊という最悪条件下のことだ。企業は、生き残るコストと覚悟すべきである。最後まで生き残れるのは、国有不動産開発企業であろう。
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