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長期化する住宅不況は、地方政府の土地売却益を急減させて大幅な歳入不足を生んでいる。これが、北京市や山東省・河南省などで職員の大量解雇を生んでいる。また、国営銀行では住宅不況にからむ不良債権処理で収益が悪化して従業員解雇が始まっている。中国は、深刻な事態だ。ただ、失業しても抗議活動を行えば官憲に取り締まられるので、SNSで情報交換や憂さ晴らしをしているという。 

『ロイター』(9月5日付)は、「失業エピソードをSNS発信する中国の若者、共感と連帯広がる」と題する記事を掲載した。 

過去最多の1179万人を数えた今年の大学新卒者は、前例のない就職難に見舞われている。金融などホワイトカラー分野で人員削減が広がる一方で、テスラやIBM、バイトダンスといった企業でもここ数カ月は採用を絞っているからだ。

 

(1)「中国の16-24歳の人口は約1億人だが、都市部での若年層の失業率は7月に17.1%にまで跳ね上がった。アナリストらによれば、この数値に隠れてはいるが、村落部における失業者も膨大な数に登るという。2023年6月に若年層の失業率が過去最高の21.3%に達して以来、中国政府は若年層の失業データの公表を一時中止し、後に在学中の学生を除外するよう基準を修正した」 

中国政府は、都市部での若年層(16-24歳)失業率が20%を超えたことから、失業統計の定義を変えて、低めの数字を発表している。 

(2)「現在、いわゆる「ギグ・エコノミー」(注:日雇い仕事)の就労者数は2億人を超え、かつての急成長セクターでも生産能力過剰の問題を抱えている。今年になって中国国内の10を超える都市で、配車サービスが供給過剰になっているという警告が見られた。伝統的に、安定した終身雇用の意味で「鉄の茶碗」と呼ばれてきた公務員にも、人員整理の波は広がっている。北京市は昨年、5%の人員削減を公式に発表し、それ以降、数千人が解雇されたと報じられている。河南省でも今年に入って5600人、山東省でも2022年以降に1万人近くの人員削減が行われている

 

失業者が救いを求めた配車サービス業も、10都市以上で供給過剰が警告されている。公務員にも解雇の嵐が吹き付けている。北京市は昨年、5%の人員削減を公式発表したが、数千人が解雇されたという。河南省や山東省でも公務員解雇が起こっている。公務員まで解雇される時代だ。 

(3)「コロンビア大学のヤオ・ルー氏(社会学)の試算によれば、23-25歳の大卒者のうち約25%が、学歴に見合わない仕事に就いているという。匿名を条件に取材に応じた中国のエコノミストは、中国の現役大学生は4800万人近いが、その多くは安い初任給に甘んじ、生涯納税額も従来世代よりも少なくなる可能性が高いと指摘する。「『ロストジェネレーション(失われた世代)』とまでは言わないが、膨大な人的資本が無駄になっている」とこのエコノミストは言う」 

習氏の政策ミスが、若者を大量失業に追込んでいる。大学まで学んで膨大な人的資本が、無駄になっている。中国経済にとって大きな損害である。

 

(4)「アンナ・ワンさん(23)は今年、深セン市の国営銀行の職を辞した。プレッシャーの大きさと頻繁なサービス残業が原因だった。約6000元の月給に対して、「3人分の業務量をこなしていた」という。ワンさんの元同僚も、給与削減やとうてい処理不可能な業務量を伴う職への配置転換などが広がっており、実質的に退職を強要している、と不満を口にする。ワンさんは現在、履歴書の代筆や覆面調査員などのアルバイトをしている」 

国営銀行も解雇の風が吹いている。不良債権の増大が利益を圧迫しているからだ。習氏は、さらに銀行へ住宅がらみの不良債権処理の積増しを迫っている。職員の解雇は、さらに進むであろう。 

(5)「オリビア・リンさん(30)は7月に公務員を辞めた。広範な賞与削減が実施され、今後は人員削減もありうると上司がほのめかしたからだ。公式発表によれば、リンさんが勤務していた深セン市では、今年になって4つの地区事務所が閉鎖された。「全体として、最近は職場環境が悪く、財政面での締め付けもひどいという印象があった」とリンさんは言う。リンさんは現在テクノロジー系の求人を探している。だが、1カ月求職活動をしても1度も面接にたどりつけなかった。「2021年とは全く状況が違う。当時は、1日1件は確実に面接を受けられた」と言う」 

深セン市では、今年に入って4つの地区事務所が閉鎖されている。これには当然、大量の解雇者が出ている。

 

 

(6)「雇用市場から締め出された中国の若者たちは感情のはけ口を求め、長期の失業状態を生き延びるためのコツを教え合うようになっている。冒頭のフーさんが使っているSNSサイト「小紅書」では、「失業中」「失業日記」「解雇された」といったハッシュタグの閲覧回数が合計21億回に達している。ユーザーは、ありふれた日常茶飯事を描写し、解雇からの日数を数え、上司との気まずいやり取りをシェアし、アドバイスを提供する。泣き顔の自撮り写真が添えられていることもある。 

中国社会は、昔から「小話」が得意である。庶民が、苦しみを笑いで紛らせてきた歴史の復活である。これが、習氏の唱える「共同富裕論」の実態であろう。乏しさを分け合う社会とは悲劇的である。