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韓国は、高学歴化社会である。4年制大学進学率は、64、69%(2020年)で、世界2位である。とりわけ、医師志望が顕著である点で世界でも異色だ。医師希望の理由が、高収入で定年と無関係と極めて「俗っぽい」点にあるように、「医は仁術」という崇高な意識でないのが気懸かりな点である。これは、韓国の就職事情と深く関わっている。ホワイトカラーが就職難である一方、ブルーカラーが人手不足というミスマッチを引き起している。労働力配分の「平準化」が起こらないという不思議な構造になっている。雇用の二重構造が起こっている。これが、韓国最大の弱点である。

 

高学歴者の就職難は深刻である。大学を卒業して就職できるまでの期間が、平均で14ヶ月もかかるのだ。終身雇用制によって、転職市場が未発達であるのも大きな要因であろう。第一志望でなくても、とりあえず第二志望の企業へ就職し、機会をみて転職する選択もある。韓国では、こういう選択をしないのだ。大企業・公企業・公務員が最大の就職希望先である。大卒は、他を「雑魚」扱いで見向きもしないのである。

 

こういう労働のミスマッチが起こっている中で、AI(人工知能)は、労働力不足を補うとの認識だけが一人歩きしている。

 

『中央日報』(9月16日付)は、「製造業人員不足の韓国』AIを活用すべき、『100年企業』CEOの助言」と題する記事を掲載した。米国ハネウェルのヴィマル・カプール最高経営責任者(CEO)の発言だ。

 

AIは産業界で確実にチャンスだ。我々はAIソリューションを通じて企業がさらに効率的に意思決定ができるようサポートしている。

 

(1)「企業の生産性はAIで高まる。もちろんソーシャルメディアや個人に及ぼすマイナスの要素は懸念すべき点だが、ビジネスの観点でAIの利点は確実だ。我々はAIソリューションをビジネス全般に拡大するために生成AI委員会を設置した。特に韓国では製造業の人材不足現象が深刻化している。AIが、労働力不足問題の解決に一定レベルで役立つと考える

 

韓国では、製造業の人材不足が深刻化していると指摘している。一方では、大学卒が就職できるまでに平均して14ヶ月もかかっている。このギャップは、韓国経済全体にとっても大きな損失である。韓国は、国を挙げてこの問題を解決しなければならないにも関わらず、そのような動きは皆無だ。他国のことながら、なんとかならないのかと心配するほどである。ハネウェルのヴィマル・カプールCEOは、こういう韓国特有の事情をご存じないから、「AIが、労働力不足問題の解決に役立つ」という原則論を掲げているのだ。

 

『中央日報』(9月15日付)は、「ある自営業者の男湯乱入 韓国の自営業者の実状短く強く残す」と題するコラムを掲載した。

 

かつては百貨店に勤務して自営業者が、なぜ大企業を辞めて自営業になったかを語っている。日本では、あり得ないケースであろう。

 

キム・ドンヒさんは現在、クレジットカード配送業者です。彼の1日の稼ぎは、携帯電話にかかっています。彼は自営業者です。昔は会社員でした。クレジットカード配送料は、「1件当たり1000ウォン(約106円)なので時間がお金」としながら忙しく働いている。

 

百貨店で昇進できず名誉退職(注:自主退職)を選んで、衣類の自営業に飛び込んだ。突然、営業資金の出し手が資金を引き揚げて倒産した。5年前のことだ。それからが茨の道だ。クレジットカード配送業者に転じた。

 

韓国では、名誉退職が50代に起こっている。解雇ではなく、「このたび一身上の都合で」という退職願を出した退職である。他企業への転職でなく自営業へ転身する。日本では、ちょっと考えにくいケースだ。大企業から自営業へという変化が、韓国の雇用構造の歪みを示している。中間項がないのだ。韓国では、製造業にAIを導入する以前に、雇用のミスマッチを解決しなければならないのだ。