16日午後22時過ぎ、ドル円相場は一時140円を突破して「円買い」勢力が強くなっている。この結果、市場では年内に135円や137円といった声が聞かれるほどだ。目先の関門は、17~18日にFRB(連邦準備制度理事会)が利下げ幅を0.25%か0.50%にするかによって、円相場の動きは異なる。今回の利上げが、米国の中立金利を早く4%以下にする政策意図があれば、0.5%利下げもありうるという。微妙なところである。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月13日付)は、「FRBの利下げジレンマ『大きく始めるか小さく始めるか』」と題する記事を掲載した。
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、FRBが17~18日の利下げに備える中、難しい判断を迫られている。それは小さく始めるか、大きく始めるかということだ。
(1)「FRBは、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で2020年以来となる利下げに踏み切ることが確実な情勢だ。FRB当局者らは、今後数カ月間に複数回の利下げを実施できるとの自信が高まっていることを示唆しているため、利下げ幅を伝統的な0.25ポイントにするか、さらに幅広い0.5ポイントにするかという問題に直面している」
0.25%か、0.5%の利下げか。市場は固唾を飲んで見守っている。
(2)「来週のFOMCで公表される四半期に一度の経済見通しが、問題をさらに複雑にする可能性がある。この見通しは、当局者が年内に何回の利下げを予想しているかを示す。FRBは年内にあと3回の会合を残している。来週と11月と12月に1回ずつだ。市場はFRBが年内に1ポイントを超える利下げをすると見込んでいるため、それよりも小幅な見通しが示されれば、市場の期待が後退して金融環境が引き締まり、FRBがまさに利下げしようとしている時に借り入れコストが上昇しかねない」
市場は、年内1%の利下げを見込んでいる。この想定が崩れると金利が跳ね上がるリスクが生まれる。市場との対話を重視するFRBが、市場の期待を裏切れないであろう。
(3)「FRBは通常、0.25ポイントの幅で動くことを好む。小幅の調整であれば、政策変更の影響について調べる時間を多くとれるからだ。一部の当局者は、景気が一層減速しているように見えるようになってからペースを上げる方が良いとの見方を示している。一方で、11月と12月に0.5ポイントの利下げが実施される公算が大きいと考えているのなら、金利が最終的な目標からより遠い今こそ動くべきだ、と当局者が結論付ける可能性もある。現・元当局者によると、より小幅で始めることを支持する意見は、経済が基本的に好調だとみなしている。彼らは、0.5ポイントで利下げを始めると、経済についてより大きな警告を発することになり、市場がより速いペースの利下げを見込むようになる可能性があると指摘する。それは市場が上昇するきっかけとなり、インフレとの戦いを終えるのをより困難にする恐れがある」
利下げが、0.25%から始まれば社会は安心する。だが、0.5%から入ると、景気が危ないのかと警戒観を持つようになるので、さらなる大幅利下げを求められると危惧する。
(2)「FRBが、広範なコンセンサスの形成を好むことや、大統領選直前に通常より大幅な利下げを行う理由の説明が難しいことを考えれば、0.25ポイントの利下げから緩和を始めるのが最も抵抗感の小さい手法になる。2011~2023年にカンザスシティー地区連銀総裁を務めたエスター・ジョージ氏は「0.25ポイントが最初の利下げとしてはやりやすい」と指摘。「『しばらくは金利を高めに維持するとか、経済がさらに弱まるように見えればもっと積極的な利下げができるとか』言うことができる」と語った」
11月の大統領選を控えて、0.25%利下げが穏当としている。
(3)「通常より大幅な利下げで緩和をスタートさせるのを正当化する主な理由は、これまでの利上げで成長がさらに鈍化するリスクに対して保険をかけるというものだ。現在ジョンズ・ホプキンズ大学金融経済学センターの研究員を務めているファウスト氏は「今われわれは、予防的な0.5ポイントの利下げを声高に求めるような状況にないと思う。しかし、私個人としては0.5ポイントの利下げから始める方がやや好ましいと思う。私は依然、FOMCでもそうした決定が下される可能性は十分あると思っている」と語った。ファウスト氏は、FRBが大幅利下げに踏み切る場合、「それを怖く見せないために、多くの文言を」費やすことで、投資家をおびえさせかねないという懸念を抑制できると思うと述べ、「それが不安な状況の兆しになってはならない」と付言した」
0.5%利下げが、先行き経済を悲観しているのでないことを十分に説明して行うべきである、としている。
(4)「ファウスト氏はまた、年内に計1.00ポイントの利下げがあるとの見通しを何人かのFRB当局者が示すと思うと語った。その場合、0.25ポイントの利下げからスタートすると、その後今年末までにより大幅な利下げを予想しているのに、なぜ初回にそれをしなかったのかという、変な疑問を生じさせるリスクが出てくるという。
年内に1%ポイントの利下げ論が有力である。この場合、初めに0.5%引下げ後2回で、0.25%づつ引下げれば理屈にあうとしている。
(5)「2009年から2018年までニューヨーク地区連銀総裁を務めたウィリアム・ダドリー氏は、FRB当局者がそうだと考えていると述べている通りに、本当にインフレ率上昇と労働市場軟化の間でリスクが均衡しているなら、FRBは金利を中立的な水準により大きく近づけたいはずだとの見方を示した。すべてのFRB当局者が中立金利は4%を下回るとみていることをふまえると、0.25ポイント刻みの利下げは理にかなっていない。同氏は「論理的には、より速いペースで引き下げる必要がある」と述べた」
FRBが、中立金利(好不況に関係ない金利水準)を4%以下にする計画ならば今回、0.5%利下げしてその意思を見せるべきとしている。
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