VW(フォルクスワーゲン)は9月2日、ドイツでの工場閉鎖を検討していると公表した。乗用車のほか商用車、車部品など独国内の工場約10カ所を対象に、1カ所以上を閉鎖する可能性があるとしている。VWが本拠地で工場閉鎖に踏み切れば、1937年の同社設立以来で初めてとなる。
自動車は、ドイツの基幹産業である。そのドイツ自動車業界を代表するVWが、複数の工場閉鎖を検討していると発表した。VWは、トヨタ自動車に次いで世界2位の座にあるが、EV(電気自動車)需要の見通しを誤り、先行投資負担が大きく工場閉鎖の危機に追込まれた。
『日本経済新聞 電子版』(9月20日付)は、「ドイツ工場閉鎖検討のVW、独経済相『支援考えている』」と題する記事を掲載した。
ドイツ国内工場の閉鎖を検討している自動車大手フォルクスワーゲン(VW)を巡り、ハベック独経済・気候相は19日、記者団に対して「連邦政府と州はどのようにしてVWを支援できるか考えている」と語った。
(1)「独政府は2023年12月に電気自動車(EV)の購入補助金を打ち切り、販売不振に拍車をかけたとみられていた。ハベック氏は購入補助については明言を避けながらも「EVを強化するための手段が確かに政治的課題だ」と述べた。VWが検討している独国内工場の閉鎖については、「その会社とそこでの雇用がドイツにとって非常に重要だ」と強調した。需要の落ち込みを背景に同工場はすでに減産しており、夜勤の停止など従業員の労働時間を短縮している」
ハベック独経済・気候相は、EV補助金打ち切りがVWの経営に打撃を与えたことから、EV補助金復活を示唆する発言を行った、
(2)「独最大の産業別労働組合IGメタルは予定を1カ月前倒し、9月25日からVWとの労使交渉を始める。工場閉鎖と人員削減、従業員への補償などについて議論する予定だ。独経済紙マネジャーマガジンによると、VWは中期的に最大3万人を削減する可能性があるという。VWとIGメタルは否定している」
IGメタルは、「経営陣は、従業員に対する責任を果たしていない」とし、労使交渉で工場閉鎖と人員削減について反対の立場をとる考えを改めて示した。リストラ計画の撤回に加え、7%の賃上げも要求すると強い姿勢をみせている。
工場閉鎖には、2の壁が指摘されている。強力な労組のIGメタルの壁とドイツ政界の壁 とされている。2025年秋にドイツ連邦議会(下院)選挙が行われるのだ。その選挙直前に生産拠点の大幅削減と大量解雇ができるのかという問題である。与党・ドイツ社民党の支持基盤は、IGメタルを含む労組である。会社側の要求だけを貫くというのは難しいという理由の背景である。
『日本経済新聞 電子版』(9月11日付)は、「VW、最大労組との協約破棄 工場閉鎖・大量解雇に道筋」と題する記事を掲載した。
独フォルクスワーゲン(VW)は9月10日、本国で検討する工場閉鎖に関し、雇用保障を含めた労働組合との労働協約を破棄すると明らかにした。同国最大の産業別労組IGメタルに通知した。工場閉鎖に伴う大規模な人員削減の現実味が増してきた。IGメタルや同社労組は解雇に伴う補償など条件闘争を本格化させる。
(3)「VWは、2029年までの雇用保障を含めた複数の協約を労組と結んでいる。現行の協約を打ち切ることで、工場閉鎖時に人員削減が可能になる。会社側は、数千人規模の削減を検討しているとされる。雇用保障の協約は今年末まで有効で、期限を迎えると会社は2025年7月から強制的な人員削減が可能になる。労組側は、新たな協約締結に向けた交渉を9月中に始めることを求めている」
VWは、すでに2029年までの労組と結んだ雇用保障を含めた複数の協約を破棄した。工場閉鎖に備えた準備である。会社側が、不退転の決意で臨んでいることわかる。
(4)「ドイツでは、会社が決めた工場閉鎖方針に対し、閉鎖撤回を求めるストライキはできないが、閉鎖時の従業員への補償などに関するストは合法とされている。ストもちらつかせる労組陣営と、会社側の条件交渉は今後本格化する。すでに同労組は、VWの工場閉鎖の代替策として、週4日勤務の導入を要請することを示唆する。さらにVWでは従業員代表が監査役会に、メンバーとして参加するなど労組の経営への影響力が強い。交渉は一筋縄ではいかない見通しだ」
労組は、工場閉鎖撤回求めるストはできないが、従業員補償を求めるストは合法化されている。労組は、解雇を巡る条件闘争が可能だ。労組は工場閉鎖の代替策として、週4日勤務の導入を要請することを示唆している。解雇者を出さない提案である。政府は、この提案を支援すべくEV補助金の復活をするのだろうか。ドイツにおける自動車産業は、基幹産業だけに、難しい対応が求められている。
ドイツ自動車業界に比べれば、日本の自動車産業は微動だにしない堅塁を誇っている。業界の協調がうまく進んでいるからだ。日本の自動車7社は、EVを核にトヨタグループと日産・ホンダ・三菱自の2グループに分かれた感じだ。
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