a0005_000022_m
   

韓国経済は、高金利下でゾンビ企業が続出している。財閥企業も、不採算部門を抱えて整理に着手している。資産規模で財閥2位(1位サムスン)に位置するSKグープ(半導体や石油化学など)が、23年の純利益で94%減という惨憺たる状態である。韓国経済の脆弱性を露呈している。 

『日本経済新聞 電子版』(9月30日付)は、「9割減益の韓国SK、不採算事業切り捨て 9兆円でAI投資」と題する記事を掲載した。 

韓国財閥大手SKグループが、大幅な合理化に着手した。M&A(合併・買収)を重ねる中でサービス業などの不採算事業が増えたほか、先行投資のコストが膨らんで経営を圧迫しているためだ。2026年までに事業売却などで80兆ウォン(約9兆円)を捻出し、人工知能(AI)分野に振り向ける。SKの崔泰源(チェ・テウォン)会長は、「市場の変化を綿密に検討し選択と集中をしなければならない」と指摘する」

 

(1)「崔会長は、「新たな転換時代を迎え、未来に備えるため根本的な変化が必要だ」とも話す。27年までに30兆ウォンのフリーキャッシュフローをつくり、負債比率を100%以下にする目標を掲げる。SKは1953年に繊維を祖業として石油事業などで拡大した一族経営の財閥だ。3代目の崔会長の下で半導体など幅広い事業を相次ぎ買収し、総資産は334兆ウォンと首位サムスングループ(497兆ウォン)に次ぐ国内2位だ」 

M&Aを積極的に行ってきたので、過剰債務を抱えている。金融引き締め下で、収益構造の弱体化ぶりを露呈している。 

(2)「足元の業績は振るわない。韓国の公正取引委員会によると、SKのグループ全体の23年12月期の売上高は前の期比10%減の約200兆ウォン、純利益が同94%減の約6000億ウォンに落ち込んだ。背景にあるのは、M&Aによる事業の急拡大だ。SK傘下の子会社は23年12月末時点で219社と10年前の14年(80社)から3倍近くに増えた。多様な子会社が自立的に経営判断し、それぞれが利益追求にまい進する――。SKはこんな理想を掲げて各社に経営のかじ取りを委ねた」

 

SKグループは、今年第1四半期末時点での純借入額が85兆9000億ウォン(約9兆1000億円)で、昨年同期比で4兆ウォン(約4000億円)ほど増えた。2021年末と比較すると50%以上の急増だ。純借入額は、財務安定性を判断する重要な指標だ。昨年、ハイニックス(半導体)の大規模な損失とともに、低金利期間中に大々的に実施したバッテリーなどの新事業への投資が足を引っ張っている。野放図なM&Aの結果だ。 

(3)「バラバラの経営判断は、グループ内の事業の重複を生み、不採算事業が目立つようになった。24年に入って、レンタカーや家電、食品流通などの事業を売却してきた。韓国ハンファ投資証券によると、SKが24年上半期に売却計画を進めた資産総額は4兆6000億ウォンと23年の1年間に比べ3倍に増えた。その他にも売却を検討するほか、新たなビジネスで利益を生むなどして80兆ウォンを捻出する」 

SKの弱さを露呈している。指令塔不在を証明している。不思議な財閥である。

 

4)「集中する先はAIとエネルギーだ。グループ内で目下、最も業績の伸びに勢いがあるのが半導体メーカー、SKハイニックスだ。生成AIの駆動に必要な「広帯域メモリ(HBM)」と呼ばれる最先端半導体で世界トップシェアを持ち、24年1〜6月期の売上高は過去最高となった。この虎の子の技術をグループ全体で生かす。崔会長には「AIは個別の企業ではなく産業インフラとして構築するべきだ」との持論がある。3月に会長直轄でグループ内のAI関連事業で情報交換を担う部署を立ち上げた。SKハイニックスのHBM製品を軸に、SKテレコムのデータセンターや、SKシルトロンの半導体素材などで相乗効果を狙う」 

広帯域メモリ(HBM)」が、最大の収益源になっている。サムスン技術者が、サムスンが放棄したHBMをSKハイニクスへ持ち込む「機縁」でドル箱になった。全くの偶然である。SKハイニクスは今や、「広帯域メモリ(HBM)」の競争力によって助けられている。

 

5)「電池事業は、赤字だが切り捨ての対象にはしない。電気自動車(EV)拡大やAI普及による電力消費の増加を見据えて「未来に必ず市場が生まれると確信した事業には投資を続ける」(同社)という。11月には石油や電池を手がける子会社と再生可能エネルギー事業を強みとする子会社を統合し、総資産100兆ウォンの「アジア最大規模の民間エネルギー企業」(SKグループ)を立ち上げる準備を進める」 

電池事業は、EV不振で世界的な苦境に立たされている。今が、我慢のしどろである。 

6)「半導体の研究開発(R&D)では、日本企業との連携も強めている。HBMは半導体を積み重ねる技術が求められ、日本が強みを持つ製造装置や材料メーカーとの協力が欠かせないためだ。SKハイニックスは旧東芝メモリのキオクシアホールディングスに間接出資している」 

SKハイニクスは、日本との関係強化に努めている。半導体「後工程」で強みを持つ日本が、提携強化の相手になっている。