中国最大の産業である住宅新規販売は、一段と深刻の度合いを深めている。不動産開発大手100社の9月の新築住宅販売額は、前年同月比で約37.7%減とさらに傷口を広げている。政府が、相次いで緊急経済対策を発表している背景には、住宅販売がさらに落込んでいるという厳しい現実がある。
『ブルームバーグ』(10月1日付)は、「中国の住宅販売、9月は前年同月比37.7%減ー販売不振さらに深刻化」と題する記事を掲載した。
中国の住宅市場では9月に低迷がさらに深まった。長引く不動産危機に歯止めをかけるために政府が一連の措置を発表する前だった。
(1)「中国房産信息集団(CRIC)の暫定データによると、不動産開発大手100社の9月新築住宅販売額は前年同月比で約37.7%減の2517億元(約5兆1500億円)と、8月(26.8%減)から減少ペースが加速した」
9月の販売額は、8月の落込みよりもさらに大きい37.7%減になった。不思議なのは、こういう状況でも不動産開発企業の倒産情報が出ないことだ。
(2)「中国共産党政治局は先週、不動産セクターの安定化に向けてこれまでで最も強力な措置を発表。中国の主要3都市が住宅購入に対する規制を緩和し、中央政府もこれに追随した。中国人民銀行(中央銀行)は、数百万世帯を対象に最大5兆3000億ドル(約761兆円)相当の既存住宅ローンの借り換えを容認した」
主要3都市とは、上海・深圳・広州である。広州は住宅販売規制(頭金など)を全て撤廃した。
(3)「中指控股(チャイナ・インデックス・ホールディングス)の調査ディレクター、陳文静氏は、「住宅購入者は9月、不動産刺激策を待ち望みながら様子見を続けていた。支援策強化を受けて10月には住宅購入活動がやや活発化する可能性があるが、全国的な住宅市場の低迷に歯止めをかけるにはさらなる緩和策が必要だ」と指摘した」
10月は、国慶節など大型連休が始まるので、規制手直しの効果がどの程度まで出るかである。
『ブルームバーグ』(9月30日付)は、「中国、上海など主要都市が住宅購入の規制緩和-最新てこ入れ策」と題する記事を掲載した。
中国の主要3都市は、住宅購入に対する規制を緩和した。低迷する不動産業界の浮揚に向けた中央政府による最新のてこ入れ策を実行に移した。
(4)「9月29日遅くの声明によれば、貿易の中心地である広州は規制を全て撤廃。住宅購入者の適格性審査をやめるほか、所有可能な住宅の数を制限しないと説明した。1級都市で規制を全撤廃したのは広州が初めて。また金融ハブの上海と、ハイテク産業で知られる深圳は、より多くの人が郊外の住宅を購入できるようにしたほか、一部の人に関して購入可能な住宅の数を増やす措置を講じた。上海と深圳はこのほか、住宅を購入する際の頭金の最低要件について1軒目を15%、2軒目は20%にそれぞれに引き下げた。需要の喚起を目指す」
1級都市である広州が、住宅に関わる規制を全て撤廃した。広州は、製造業が盛んな地域である。輸出を支えているが、輸出も新規受注減に見舞われている。地域経済が落込んでいるのだ。上海と深圳も頭金引下げを行った。
(5)「中国当局は9月下旬、苦境にある国内不動産市場を支えるための措置を発表。最大地域経済5兆3000億ドル(約754兆円)相当に上る既存の住宅ローンの借り入れコスト引き下げや、2軒目の購入における頭金要件を引き下げるといった規制緩和を盛り込んだ。29日はまた、中国人民銀行(中央銀行)が住宅ローンの借り換え容認について発表。人民銀の声明によれば、住宅所有者は11月1日以降、ローンの条件について現在の貸し手と再交渉できるようになる。また固定金利のローンを選択した人も、最新のローンプライムレート(LPR)に基づいた新たなローンを再交渉することが可能」
約754兆円相当に上る既存の住宅ローン金利も引下げられる。約0.5ポイントとみられる。ただ、この既存借入金利引下げが、新規住宅販売促進なる可能性は低い。借入金利が下がったから、「もう一軒買う」という層は現れまい。投機であるからだ。
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