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台湾の頼清徳総統は10月5日、中華人民共和国よりも台湾の歴史(中華民国)が長いため、中華人民共和国は台湾の人々の祖国にはなり得ないと述べた。10月10日の台湾の建国記念日に相当する「双十節」を前に行われた関連行事でこのように挨拶した。中華人民共和国が10月1日に建国75周年を迎え、数日後には中華民国が建国113周年を迎えることに言及したもの。

 

『ロイター』(10月7日付)は、「『中国は台湾の祖国になり得ない』、記念日行事で頼総統」と題する記事を掲載した。

 

(1)「頼氏は、「年数という観点で言えば、中華人民共和国が中華民国の人々の『祖国』になることは絶対に不可能だ」とした上で、「中華人民共和国の75歳以上の人々にとっては、むしろ中華民国が祖国になるかもしれない」と述べた」

 

中国共産党は、国民党との内戦で勝利して「中華人民共和国」を建国した。敗北した国民党の「中華民国」は台湾へ移転した。この関係からいえば、「中華民国」の母国が「中華人民共和国」とは言えないのであろう。だが、習近平中国国家主席は、中国共産党が、中国の国土と国民を統治しているので中国の正統な政権という主張になる。

 

習近平氏にとって、頼氏の発言は「聞き捨て」にならぬものである。何らかの軍事的圧力を台湾へかけてくると予想されている。

 

『ロイター』(10月7日付)は、「中国、10日の台湾総統演説後に軍事演習の可能性ー関係筋」と題する記事を掲載した。

 

台湾の頼清徳総統が10日、建国記念の日に相当する「双十節」の式典で演説するのに合わせて、中国が台湾に圧力をかけるために軍事演習を開始する可能性が高いと、台湾高官が明らかにした。

 

(2)「中国は5月、頼氏の総統就任後に「分離主義的行為」への対応として、台湾周辺で「連合利剣2024A」と称する軍事演習を実施した。台湾の安全保障当局高官は、収集した情報や中国政府の動向を分析した結果、すでに演習が計画され、頼氏の演説の内容に関係なく、「連合利剣2024B」といった名前を付けて行われる可能性があるとの見解を示した。頼氏の演説が口実に使われる公算が大きいと述べた」

 

台湾は、中国が頼氏の演説を口実にして、かねてから準備している「連合利剣2024B」作戦を展開するだろうと予想している。台湾包囲の軍事作戦を繰返して、台湾市民に「自主防衛」を諦めさせる戦術とみられている。だが、民主主義の恩恵に浴している台湾市民が、言論の自由もなく人権蹂躙の共産党体制を受入れるとは思えない。香港の現状を見れば、それが明らかだ。

 

(3)「ロイターが入手した台湾安全保障当局の内部メモは、中国が演習を頼氏の演説での「挑発」のせいにするかもしれないとしている。「(中国は)絶えず各国のレッドラインを試し、(武力攻撃以外で打撃を与える)グレーゾーン作戦を最大化しようとしている」と指摘した。台北を拠点とするある外交筋は、米大統領選挙が近いことから、中国は演説に対する軍事的反応を抑制する可能性があると語った。大統領選直前に台湾問題が国際的な注目を集めることを中国は望んでいないという。「中国はもはや台湾周辺で軍事演習を行う口実を必要としていない。いつでも好きなときに実施できる」と述べた」

 

下線部のように、中国は絶えず他国の出方を調べている。秦の始皇帝が、統一を実現した手法がこれだ。一国ずつ「落とし」、最後は中核を手に入れる戦術である。「合従連衡」とは、同盟(合従)を破壊しながら一対一の関係(連衡)を持ち込み、最後は「飲み込む」(占領)のだ。こういう中国伝統の領土拡張策を阻止するには、最後まで「同盟」をしっかりと組むことにある。途中で、心変わりして中国側へつけば、それで「終わり」である。

 

ドイツの哲学者カントは18世紀末、著書『永遠平和のために』の中で、共和国(民主国)は、同盟を組んで独裁国へ対抗しなければ、平和を維持できないと説いている。同盟を組むことが、平和を維持する唯一の方法である。まさに、現代で言えば集団安全保障論の原型である。

 

不幸にして戦争になった場合、同盟国は互いに協力して戦術を組めるが、独裁国は同盟軍が少ないので、それだけで戦いにおいて不利になる。日露戦争で、「新興国」日本が強国ロシアに勝利を得たのは、米英が日本を外交戦術で支援した結果だ。当時のロシアは、米英に対抗する力がなかったので、米英の外交力に屈したのである。外交も安全保障において重要な役割を役割を果す。