習氏「木を見て森を見ず」
ベンチャー発展の芽消える
世銀が見限る経済運営方針
中央集権体制維持が命取り
中国の株式市場は9月下旬、政府の金融緩和と2兆元(約400兆円)の特別国債発行のメディア情報を手がかりに3割も急騰した。だが、10月8日の大型連休明けの市場では、早くも乱高下に転じるなど株価上昇の持続力に疑問を呈した。9日の上海総合指数の終値は、前日比6.61%の値下がりで3258ポイント。過去にも、当局の景気刺激策を手がかりに株価は急騰したものの、景気の実勢悪で線香花火に終わった。今回も、同じケースが予想されている。
2014年後半、刺激策モードによって株価が高騰した。だが、15年半ばには暴落した。上海総合指数は、14年10月から15年6月に2倍以上に跳ね上がった。だが、その後の2カ月で40%超も急落したのである。これは、中国の経済構造が「剛構造」であるからだ。GDPの40%以上は固定投資であり、個人消費が40%に満たないという「歪んだ」構造にある。経済の安定は、個人消費が半分以上を占めて初めて実現する。中国の経済構造は、これと完全に逆行している。弾力性がないのだ。
習近平国家主席は9月30日、中華人民共和国の建国75周年を記念する演説で「潜在的な危険に留意し、雨の日に備えなければならない」と述べた。習氏は「前途は平坦でない。障害や困難があり、激流や嵐のような大きな挑戦もあるだろう」と語ったのだ。習氏は、一般論で危機感を述べたが具体論を明らかにしていない。経済の危機感か、世界覇権奪取構想の危機感か不明だが、「中国式現代化」を達成するというこれまでの意欲に変わりはなさそうだ。
「中国式現代化」とは、中国独自のモデルによって「強国建設と民族復興を推進する」という内容だ。独自のモデルとは、社会主義である。政府の統制・計画によって経済を発展させ、中華民族を「世界一」へ押上げるという民族主義である。「世界協調主義」が普遍的である現在、中国が民族主義を前面へ押し出しているのは、異色の国家モデルである。それだけに、西側諸国は警戒観を強めざるを得ない。
習氏には、中国式現代化を旗印にすることで、習氏の「終身国家主席」の座を確実にする狙いが込められている。それは、独裁政権を強固にするものだ。西側諸国と相容れない、政治的・軍事的な摩擦を引き起す要因をはらんでいる。これが、中国式現代化を阻む要因になっている。
中国は今後、経済の行き詰まりによって、成長率が逓減する宿命を負っている。不動産バブルという歴史的な「経済負荷」を抱えている結果だ。この状態から脱出するには本来、統制経済でなく市場経済に依拠しなければ不可能である。米国経済が、世界恐慌(1929年)とリーマンショック(2008年)と二度も起こした歴史的経済破綻を乗り越えられたのは、市場経済による「目に見えない整合性」機能が働いたものである。
中国式現代化には、不動産バブル崩壊からの復活を不可能にさせる多くの要因が含まれている。習氏はそれに気付かず、やみくもに計画経済を推進させる「大号令」を出しているのだ。しかも、「民族復興」という前時代的な目標を掲げていることが、ヒトラーの「民族復興」と重なり合い不気味に映るのである。ロシアのプーチン氏の「大ロシア復興」とも二重写しになる。民族主義は、戦争を引き起す重要な動因である。危険因子なのだ。
習氏「木を見て森を見ず」
習近平氏は、未だに不動産バブル崩壊が抱える過剰債務の抜本的な処理を回避している。金融緩和で乗り切れると甘い期待をかけているのだ。具体的には、「三種の神器」(EV・電池・ソーラパネル)輸出で住宅不況の穴埋めが可能とみている。だが、これからの世界貿易には、数十年ぶりの低調予測が出ている。
IMF(国際通貨基金)が、今年4月に発表した「世界経済見通し」によると、世界の経済成長率の5年先(中長期)予測は3.1%で、「過去数十年間で最低の水準」まで落ち込むと見込まれるほどである。先進国では、出生率が低下するほか、AI(人工知能)などの技術革新は、かつての自動車産業のような雇用吸収の波及力に乏しいのだ。そして、公的債務の増大が、世界経済の回復に影を落とす、としている。
こういう状況下で、中国が輸出を経済復興の主軸にすることは不可能である。どうしても、内需を盛り上げる以外に経済成長を支える方法はなくなっている。中国国内の不安心理を和らげなければならないのだ。こうなると、行き着く先は不動産バブル崩壊後の過剰債務処理の促進である。習氏が、最も忌避している財政支出の拡大=財政赤字増大にならざるを得ない局面だ。今年は、財政赤字の対GDP比が3%である。現在のような「緊急時」に3%の枠に収まっていては、どうにもならないだろう。
習氏は、「原理主義者」である。パンデミックで3年間、「都市封鎖」していたのがその証拠である。習氏の側近が、パンデミック早期解除を進言しても、最後まで受入れなかったほどだ。失敗を恐れることが、原理主義へ走らせている理由であろう。こういう習氏の習性からみて、財政赤字拡大は至難の術である。どうにもならなくなるまで、動こうとしないであろう。(つづく)
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