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ドイツ経済が、再び「欧州の病人」呼ばわりされる事態を迎えている。主因は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰と、中国経済の不振の影響をフルに受けている。個人消費が不振でもあり、「構造不況」のリスクを抱えている。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月10日付)は、「ドイツ『2年連続でマイナス成長へ』欧州の病人、再び」と題する記事を掲載した。

 

ドイツ政府は9日公表した秋の経済見通しで、2024年の実質成長率をマイナス0.2%と4月時点のプラス0.%から下方修正した。マイナス成長は2年連続になる。個人消費の戻りが鈍く、設備投資や生産も冷え込む。ロシアの安価なエネルギーと中国市場の拡大に頼った成長が限界を迎え、構造的な経済不振の様相が強まってきた。

 

(1)「2年連続のマイナス成長に陥れば、02〜03年以来である。1990年に東西ドイツが統一してからは2度目になる。当時は2000年代にかけて景気低迷が長引き「欧州の病人」と呼ばれた時期にあたる。構造改革の遅れから統一に伴う好景気が一過性に終わり、次第に失業率が高まっていった。今回の景気下振れの主な要因は個人消費の不発だ。ウクライナ危機後の急激なインフレが落ち着き、賃上げに伴って景気持ち直しをけん引するとみられていた。24年はほぼ横ばいで伸び悩む見通しだ。新型コロナウイルス禍前の購買力を取り戻すのは25年となる恐れがある」

 

ドイツの対GDP比の名目個人消費は、51.05%(2022年)で日本の55.46%(同)を下回っている。ドイツ社会は節約ムードが強く、日本人がみても驚くほどの節約ぶりである。不況下では一層、「節約魂」が発揮されているに違いない。

 

(2)「ドイツ経済の屋台骨である製造業の不振も長引く。企業の景況感を示す製造業の購買担当者景気指数(PMI)は9月に40.6と1年ぶりの低水準となった。生産や新規受注がそろって落ち込み、人員削減の動きも出ている。設備投資を控える企業も多く、24年の成長率見通しを押し下げた。問題は、景気回復が遅れ続ける構造不況に陥るリスクだ。ウクライナ侵略によりロシアからの安価なガスの調達が途絶えた。主な貿易相手国である中国も内需が振るわず、11月の米大統領選では共和党のトランプ前大統領が輸入関税の強化に言及する。ドイツの輸出先である米中で火種を抱える」

 

ドイツは、これまでロシアへ依存しすぎた。ドイツは、帝政ロシア時代から深い繋がりがあり「親類付き合い」をしてきた仲である。こういう深い縁は、簡単に薄められないのであろう。ドイツは、中国へも経済的にシフトしすぎている。かつての「東独」を抱えているから、共産主義への親近感が強いのだ。これが今、ドイツ経済に大きなブレーキとなっている。

 

(3)「独Ifo経済研究所など主要シンクタンクは、「中国からの高品質な工業製品に押されて、競争力が低下している」と警鐘を鳴らす。独産業界は海外投資を優先させるなど産業空洞化への懸念も高まっており、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は製造コストが割高なドイツ国内工場の閉鎖を検討中だ。先行きを巡って、ドイツ政府は強気な見方を堅持した。25年の成長率は1.%、26年は1.%と1%台まで回復する想定を置いた。賃上げの継続による個人消費の持ち直しや欧州中央銀行(ECB)の利下げを追い風に、景気が底入れに向かうと期待する

 

来年は、プラス成長が期待されている。ECBの利下げ効果の波及によって一応、住宅建設復活もありプラス成長が期待されている。

 

(4)「ただ、景気回復が軌道に乗るかは不透明だ。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会も個人消費の回復を見込んできたが、景気不安が強まるなか実際にお金が回るかは見通せない。レジャー需要の持ち直しで恩恵を受けるのは旅行先として人気が高い南欧などに偏りがちだ。長引く景気不安はショルツ政権への批判に直結する。9月に旧東ドイツ地域であった州議会選挙では、移民流入と並んで景気低迷への不満から極右政党に票が流れた。景気対策を打とうにも連立政権の内部で足並みがそろわず、景気浮揚の道筋を描けないでいる」

 

25年景気の問題点は、個人消費の回復がどこまで進むかである。財政赤字は、対GDP比で3%枠がはめられているので、財政出動にも限界がある。

(5)「ドイツは、欧州最大の経済大国でユーロ圏20カ国の域内総生産(GDP)のおよそ3割を占める。ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッツシャー所長は、「独政府が示した25年の成長率は経済調査機関の見通しと比べて0.3ポイント高い」と指摘。「不確実性はなお大きく、投資と消費の回復が遅れる可能性が高い」として下方修正が入るリスクに言及した」

 

ドイツ経済研究所は、25年もマイナス成長の危険性を指摘している。投資と消費の回復遅れが原因である。