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星野リゾートは、2028年に米ニューヨーク州で温泉旅館を開業する。日本のホテル会社が米国で温泉旅館を開業するのは初めてだという。開業場所は、マンハッタンから車で約3時間半の温泉地、シャロンスプリングス。古くは先住民が鉱泉を利用し、19世紀中盤にはリゾート地として開発されたが、その後、衰退した。地元の協力を得ながら地域の活性化に貢献するという。 

『日本経済新聞 電子版』(10月17日付)は、「星野リゾート、米国で28年に温泉旅館 おもてなし世界へ」と題する記事を掲載した。 

星野リゾート米ニューヨーク州で2028年に温泉旅館を開業する。四季の移ろいを楽しめる露天風呂を設けるほか、日本文化に親しめるよう趣向をこらす。インバウンド(訪日外国人)需要が活況とはいえ、国内だけでの成長には限りがある。日本の8倍という世界最大の旅行・観光市場である米国に日本のおもてなしで挑む。

(1)「シャロンスプリングスは、自然の豊かな観光地で気候も日本に似ているという。温泉旅館の建設には30億〜40億円を投資する。和風の建築やデザインに加えて、温泉や日本食でもてなす。露天風呂では雪見や紅葉を楽しめるようにする予定だ。夏にはかき氷、正月にはもちを用意するなど暦に合わせた趣向も検討する。具体的なブランドや客室単価は今後、詰める。星野リゾートが国内で手掛ける温泉旅館ブランド「界」が一つのモデルとなる。界は平均30〜40室で、1人の従業員がフロントやレストランサービス、客室清掃など様々な業務を担う「マルチタスク」が基本で、1施設に必要な最大の人員数が減り、効率的に運営できるという」 

米国で、純和風の温泉旅館を開業するという。和風温泉をONSEN文化として、米国で根付かせる意欲的な企画である。日本が観光地として世界トップの評価を得ていることから言えば、海外進出の可能性が「低い」わけではあるまい。

 

(2)米国は、2000カ所以上で温泉が出るといい、星野リゾートはカナダも含めて5施設の温泉旅館開業を検討している。訪日客の温泉への関心は高い。日本政府観光局(JNTO)の訪日旅行に関する調査によると、「地方への訪問意向を高めるもの」として米国は18.%が「温泉」を挙げ、「ラグジュアリーな宿泊施設」や「スキー」などを上回った。カナダも23.%が「温泉」を選んだ。ただ、海外では大浴場に入る習慣にはなじみがない。外資系ホテルも温泉旅館に注目する。米ハイアット・ホテルズ・コーポレーションは、同社初の温泉旅館を大分県由布市、鹿児島県屋久島町、神奈川県箱根町で26年以降に開業する」 

外資系ホテルも温泉旅館に注目している。米ハイアットが、26年以降に日本国内3箇所で開業予定である。外資も、ビジネスとして温泉旅館に注目しているのだ。 

(3)「星野氏は、「マーケティングの観点から日本のホテルチェーンが世界に進出するには日本らしい温泉旅館しかない」と話す。インバウンドが増加し、外資系の高級ホテルの日本進出も増えている。星野氏は「外資系ホテルと対等な戦いをするためには相手の国に出向く必要がある」と指摘する。そこで狙いを定めたのが、世界最大市場の米国だ。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、米国の旅行・観光市場は2023年に2兆3600億ドル(約352兆4500億円)と、2位の中国(1兆3000億ドル)、4位の日本(2970億ドル)を大きく上回る」 

米国は、世界最大の旅行・観光市場である。懐の大きい市場であるだけに、温泉旅館が進出できる余地は十分あるのだろう。後は、マーケティングしだいだ。

 

(4)「日本に比べ客室単価も高い。不動産データ分析大手、米コスター・グループ傘下のSTRによると、23年9月〜24年8月の平均客室単価(ADR)は米国が157.7ドルに対し、日本は131.0ドル、英国は153.2ドルだ。星野リゾート・リート投資法人が所有する国内の界8施設の23年5月〜24年4月のADRは4万8146円、最高級ブランド「星のや」は9万3378円だった。米ニューヨーク州の施設のブランドは未定だが、国内以上の高単価も期待できる」 

米国の客室単価は高いという。平均客室単価は、約2万3400円で、日本よりも2割高である。「温泉旅館」という高いグレードの客室単価になると、日本以上の単価設定が可能だ。米国で、最高級ブランド「星のや」クラスを開業すれば、客室単価は10万円を超えることは確実だ。 

(5)「帝京大学の吉村久夫教授(観光経営学)は、「訪日客は日本に対する知見や期待感をもって来日し、温泉だけでなく食事や寺社仏閣巡りなどの文化体験を全体で楽しむ。日本をよく知らない現地の米国人のニーズを1施設でどこまで獲得できるかは未知数だ」と指摘する。温泉は日本独自の文化から「ONSEN」という英語でも通じる世界共通言語へとなりつつある」 

韓国の訪日リピーターは、韓国国内の日本モデルの施設へ出かけるなど人気が高い。米国で訪日リピーターは、同様に星野リゾートが開発する「ONSEN」へ足を延ばすチャンスは十分あるとみる。頭から「ノー」と決めつけないであろう。