a0960_008417_m
   

中国当局は、本格的な財政出動をしないで景気を下支えする手段を探し回っている。10月17日には、不動産融資枠の年内倍増を発表。18日は、人民銀行総裁が年内の預金準備率の追加利下げを表明した。21日には、企業向け貸出金利のLPR引下げと「テンコ盛り」である。これほどまでに、矢継ぎ早な景気刺激策を打ち出しているのは、習近平国家主席の「鶴の一声」が出ている結果であろう。各部門が、競って政策の「バーゲンセール」に打って出ている。習氏への「忠臣度比べ競争」の状況だ。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月21日付)は、「中国、矢継ぎ早に金融緩和 企業の資金需要は乏しく」と題する記事を掲載した。

 

中国人民銀行(中央銀行)が矢継ぎ早に金融緩和を進めている。21日にはさまざまな融資金利の目安となる最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を引き下げた。政策金利と位置づけた短期金利や預金準備率の下げに続く措置だが、銀行融資は低迷している。

 

(1)「人民銀は、企業向け貸出金利の基準となる期間1年のLPRを前月から0.25%引き下げ3.%にした。住宅ローン金利などの目安となる同5年超も0.25%下げて3.%とした。引き下げは7月にそれぞれ0.%ずつ下げて以来、3カ月ぶり。期間1年の引き下げ幅は過去最大だった。中国の79月の実質GDP(国内総生産)は前年同期比4.%増と、46月の4.%増から減速した。不動産不況が長引き、消費が低迷したままだ。危機感を持つ人民銀は、緩和的な措置を相次いで打ち出している」

 

中国当局が、24年のGDP押上げ効果を目指した金融緩和であれば、その期待は完全に外れる。金融効果の発現は、1年以上も先であるからだ。株価のテコ入れであろう。

 

(2)「潘功勝人民銀行総裁は924日の記者会見で、商業銀行への資金供給で用いられる7日物の短期金利を引き下げる方針を示した。潘氏は、これを主要な政策金利に位置づけるとし、LPR下げの見通しも語っていた。人民銀総裁が利下げを予告するのは異例だ。預金準備率も、9月27日に0.%下げた。10月18日には株式市場の支援策として、上場企業の自社株買いを資金使途とする融資枠3000億元(約6兆3000億円)を設定すると発表した」

 

自社株買いは本来、自己資金で行うものだ。借入金での自社株買いは、見え見えの完全な株価押上げ策である。露骨である。

 

(3)「米ゴールドマン・サックスは21日、LPR下げについて「資金調達コストを下げるための継続的な取り組みを反映している」と指摘。年内の預金準備率0.%下げに加え、来年もさらなる緩和措置が見込まれるとした。人民銀が7月に期間1年と同5年超のLPRを下げた後、8月と9月の新規の銀行貸し出しはいずれも前年同月と比べて3割超のマイナスとなった。設備投資や住宅投資に充てる融資期間の長い貸し出しは9月に前年同月を34%下回った。経済の根本的な問題である需要不足が深刻なままで、企業や家計の借り入れ意欲は低いためだ」

 

7月に期間1年と同5年超のLPRを下げた後、8~9月の新規の銀行貸出が前年比3割も減っている。これこそ、「流動性の罠」と言われる事態である。貸出金利を引下げても、資金需要が増えないどころか減少している。最悪事態だ。

 

(4)「住宅市況も停滞した状況に変わりはない。9月末の新築住宅の在庫面積は1年前から2割増えた。販売不振は住宅価格の下落も招いている。大胆な金融緩和を進めても貸し出し増につながらない現象はバブル崩壊後の日本でもみられた。中国では19月の工場建設など固定資産投資のうち、民間企業は前年同期を0.%下回った。先行き不安を強めた民間企業が事業拡大などに向けた投資に尻込みしている」

 

どこを向いても需要不足である。資金需要が増えるはずがない。魚のいない場所で、釣りをしているような構図である。

 

(5)「就業者の8割が働く民間企業の慎重姿勢は、雇用や家計所得の回復を遅らせている。19月の消費動向を示す小売売上高は前年同期比3.%増で、伸びは16月の3.%増から縮小した。企業の守りの姿勢が、家計の節約志向を招く「負のスパイラル」から抜け出せていない」

 

消費動向、一段と縮小している。19月の小売売上高は、前年同期比3.%16月の3.%増から縮小した。

 

(6)「習近平指導部は9月に開いた共産党の重要会議、中央政治局会議で必要な財政支出を進めると決めたが、追加財政の規模は見えないままだ。藍仏安財政相は12日の記者会見で、国債発行による国有大手銀行への資本注入などの追加財政支出の方針を発表した。具体的な規模には触れず、消費刺激のための具体策も説明しなかった。当面は財政政策よりも手を付けやすい金融緩和を先行させ、市場心理の改善につなげる方針とみられる。伊藤忠総研の玉井芳野主任研究員は「政府の各部局が記者会見などで立て続けに政策をアピールするのは、市場の期待をつなぎ留めたいという思惑がある」と分析する」

 

習氏は、財政支出拡大に「臆病」になっている。自身の政治責任とされることを忌避しているのだ。