カナダの技術調査企業「テックインサイト」が10月22日、ファーウェイの「アセンド910B」を分解した結果、TSMCの製品が使われていたことを確認し騒ぎが広がった。TSMCが、ファーウェイへ輸出していない半導体を使っていたからだ。アセンド910Bは、ファーウェイが昨年初めに公表したAIチップセットである。今回の事例は、先端技術関連製品の輸出制裁が実効をあげることの難しさを示している。
『日本経済新聞 電子版』(10月29日付)は、「米のファーウェイ制裁に『抜け穴』、TSMC製が迂回流通か」と題する記事を掲載した。
中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する米国の半導体輸出規制に「抜け穴」が浮上した。半導体世界大手である台湾積体電路製造(TSMC)の先端品が別の中国企業を通じて流れた可能性が指摘される。規制の実効性確保が課題だ。
(1)「10月中旬以降、カナダの調査会社テックインサイツによる分解の結果、ファーウェイの人工知能(AI)向け半導体「アセンド910B」からTSMC製のようなチップが見つかったことが欧米メディアの報道で明らかになった。チップは回路線幅7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの先端品という。米政府は安全保障上の懸念を理由に2020年9月中旬以降、米国製の製造装置などを用いて作った半導体のファーウェイへの供給を原則禁じている」
ファーウェイが、AI向け半導体「アセンド910B」(7ナノ)を発売した。中国が、7ナノ半導体を製造できるのかと世界を驚かせたが、そのような製造技術はないことが別途、証明されている。やはり、ファーウェイはTSMC製品を迂回輸入していたのだ。問題は、TSMCがファーウェイへ禁輸しているだけに、どこから入手したかである。
(2)「TSMCは23日の声明で、規制の発効以降はファーウェイ向けに出荷をしていないと言明。TSMCが「現時点で(米政府の)調査対象になっていない」との認識を示した。ファーウェイもTSMCへの発注を否定した。ロイター通信は26日、アセンド910Bにチップを供給したとして、TSMCが中国の半導体設計会社・算能科技向けの出荷を止めたと報じた。暗号資産(仮想通貨)のマイニング(採掘)装置大手である中国ビットメインと関係のある会社という」
TSMCは、中国の半導体設計会社・算能科技向けの出荷を止めた。半導体設計会社が、7ナノ半導体を大量に輸入すること自体おかしな話だ。疑ってかかるべきであった。
(3)「算能科技も27日にファーウェイとの直接・間接の取引を否定し、TSMCに調査報告書を提出済みだと説明した。経路はなお不透明だが、TSMCの半導体は外部の第三者を迂回してファーウェイに渡った可能性が有力視されている。民間大手シンクタンク、台湾経済研究院の劉佩真氏は「米規制の運用上の『抜け穴』が浮き彫りになった」と分析する。TSMCは半導体受託生産の世界最大手で他社からの請負に特化している。顧客を通じた迂回流通の把握には、ハードルがある」。
全ての「抜け穴」防止は難しい問題である。商社経由の発注であると確認のしようがない。やはり、ユーザーとの直接販売に限ることになろう。
(4)「TSMCは顧客の7割近くを米アップルや米エヌヴィディアなど北米企業が占め、24年12月期はAI需要を支えに前年比で30%近くの増収を見込む。流用が疑われる製品の供給を続ける必要性は乏しく、ビジネスの一部を失っても目先の影響は限られそうだ」
中国大陸向けの輸出は一切、中止するくらいのことをしなければ、迂回輸出を防げないであろう。
(5)「AI半導体は、対中半導体規制の本丸の一つで、今後はさらなる規制につながるかが焦点となる。米議会下院中国特別委員会のジョン・ムーレナー委員長は、23日の声明で今回の件が「米国の輸出管理の壊滅的な失敗を示している」と強調。米政府が直ちに対策をとるよう訴えた。台湾経済研究院の劉氏は規制に実効性を持たせるうえで「企業にできることは限界があり、(企業などへの)米政府の支援措置や、第三国(・地域)を含めた輸出管理の改善がより効果的だ」と指摘する」
ファーウェイを直接、罰する方法はないのだろうか。抜け穴を利用する「ユーザー」が、存在するからこういう事態になる。


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