サムスン電子は、非メモリー半導体技術の未熟さによりファンドリー事業(半導体受託生産)が、大赤字に陥っている。問題は、これが自社のスマホ生産にも影響しており、非メモリー半導体を外部から購入しなければならない羽目に陥っている。こうして、自社生産の限界が露呈されるとともに、スマホ部門の採算性悪化という新たな問題を引き起している。
『ハンギョレ新聞』(10月30日付)は、「半導体技術競争力の低下でサムスン全体が揺れる、スマホとの相乗効果も低下」と題する記事を掲載した。
サムスン電子の自己資本利益率(ROE)の後退は、「総合電子企業」の強みが色あせた現実を示している。総合電子企業としてのサムスンの特徴は、スマートフォンのような完成品をはじめ、これに入る半導体やディスプレイなど部品まで全て自社で作る点にある。各事業間の相乗効果を通じて利益を最大化できることがメリットである。逆に、さまざまな事業の中で一つが揺れ始めれば、危機が簡単に会社全般へと広がるというデメリットにもなる。その過程で効率が低下し、利益も停滞する。サムスン電子でもこのような危機が現れているというのが専門家たちの診断だ。
(1)「証券会社の資料を総合すると、サムスン電子の非メモリー半導体部門は今年3兆6000億ウォン(約3990億円)水準の営業損失を記録する見通しだ。サムスンの非メモリー半導体は、設計担当のシステムLSI事業部と製造担当のファウンドリー(半導体受託生産)事業部に分けられる。証券会社各社は、これらの事業部が昨年に続き、今年と来年もサムスン電子の営業利益を数兆ウォン削減するものとみている」
サムスンは、非メモリー半導体が技術面で遅れており、これがファウンドリー事業部のほかに、スマホ事業へも跳ね返って業績全体の悪化を招いている。
(2)「その理由はなんだろうか。非メモリー半導体部門の主な顧客は、ほかでもない同社のモバイル事業部だ。非メモリー半導体部門の主要製品はスマートフォンの頭脳の役割を果たすアプリケーション・プロセッサー(AP)「エクシノス」であるためだ。ギャラクシーのスマートフォンを作るモバイル事業部は、エクシノスと他社の製品を比較してからどの部品を使うかを選択する。通常は、エクシノスと米国「クアルコム」の「スナップドラゴン」を混用してきた。スナップドラゴンは品質が相対的に優れているが、他社から買ってくるだけに割高であるため、独自生産するエクシノスと共に使われてきた」
サムスンの非メモリー半導体部門の主要製品は、スマートフォンの頭脳であるアプリケーション・プロセッサー(AP)「エクシノス」である。このエクノシスが、歩留まり率の低下によって割高になっている。となれば、代替品として米クアルコム社製品を使わざるを得ない。それだけ、コスト高になっているのだ。
(3)「業界は、来年初めに発売されるギャラクシースマートフォンの新製品に、エクシノスが搭載されない可能性が高いとみている。エクシノスの生産における収率(良品比率)が低いため、「ギャラクシーS23」に続き「ギャラクシーS25」もスナップドラゴンに「全賭け」するとみられている。それが事実なら、非メモリー半導体部門においてはエクシノスの販売量が大幅に減ることになる。モバイル事業部にとっても、クアルコムだけに依存すると交渉力が低くなり、より多くの費用を支払わなければならないため、これは悪材料といえる。結局、サムスンのモバイルと非メモリー半導体のいずれにとっても収益性が悪くなりうるという話だ」
サムスンが、来年初めに発売予定のスマホ新製品では、APにクアルコム社製品を採用せざるを得なくなる。これは、自社製非メモリー半導体の使用量が減ることを意味するので、サムスン全体の業績の足を引っ張る。
(4)「サムスンのような総合電子企業で、一方の事業の苦戦が他方の事業にも打撃を与え悪循環を招くという点を示している。エクシノスの生産を担当するファウンドリーは2017年に独立事業部としてスタートし、会社の新しい成長動力として注目されたが、半導体の回路線幅が7ナノメートル(nm)以下に薄くなる「超微細化」の局面に進入した後、技術競争力が急激に落ちたという市場の評価を受けている。そして、エクシノスを中心にモバイル事業の競争力にも悪影響を及ぼすようになったわけだ」
サムスンは、前宣伝と異なり7「ナノ」生産局面に入って、技術競争力が急激に落ちたとみられている。半導体「後工程」の未熟さが一挙に表面化しているのだ。これは、半導体メーカーにとって致命傷である。
(5)「サムスン電子は最近、ファウンドリーだけでなく、主要事業が全て競争力の低下に直面したとみられている。「絶対王者」として君臨してきたメモリー半導体は、高帯域幅メモリー(HBM)のような先端領域で力を発揮できずにいる。モバイル事業部も今年初め「ギャラクシーS24」で話題になったが、その後フォルダブルフォンの実績不振と相次ぐ品質問題に悩まされている。NH投資証券のリュ・ヨンホ研究員は「(サムスン電子の資本利益率が下落するのは)すべての事業が総体的に厳しいため」とし、「例えば、モバイル事業はエクシノスを使えないので利益が増えず、家電とディスプレイも停滞しており、半導体も予想ほど成長できずにいる」と語った」
サムスンの非メモリー半導体の弱体化は、日本半導体が衰退した過程と二重写しになっている。日本は、高技術ゆえに安価なパソコン(PC)やスマホの半導体生産に即応できず敗北した。サムスンは、日本と異なり低技術ゆえに高度の非メモリー半導体を低コストで生産できない事態に陥っている。技術面での対応は、短期間で克服するのは不可能だ。サムスンは正直正銘、困難な局面へ遭遇した。
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