総選挙の各党別の比例票が発表された。自民党は533万票も減らしたが、立憲民主党は7万票増にとどまった。国民民主党は、358万票と138%増であり、自民票減少の67%の受け皿になった計算だ。自民党と国民党の公約は似かよっている。有権者は、安心して国民民主党へ乗換えた格好である。「一時避難」とも言えそうだ。
『毎日新聞』(10月30日付)は、「『この時を待っていた』、キャスチングボート握った国民民主」と題する記事を掲載した。
自民党、立憲民主党、日本維新の会に続く第4党となった国民民主党は、議席数以上に国会で存在感を示しつつある。自民、公明の与党が過半数を割り、他党との協力なしには国会運営が進まないためだ。一方で、政権奪取を目指す立憲も、国民民主との連携は避けて通ることができず、国民民主が永田町の大勢を左右する状況が生まれつつある。
(1)「国民民主の玉木雄一郎代表は29日の記者会見で、「キャスチングボートを握る計画を少し前倒しする形にできた」と衆院選の結果を満足げに語った。公示前の7議席から4倍の28議席に伸ばし、単独での法案提出も可能になった。自公だけでは衆院過半数の233まで18足りないが、国民民主が協力すれば過半数に達する議会構成となっている」
民放では、玉木雄一郎氏とはどんな人物か紹介している。今や、注目の政治家になった。農家の出身という。働く者の立場が分るのだろう。玉木氏は、先鋭な野党とは一線を画している。
(2)「玉木氏は以前より「対決より解決」を掲げ、政権批判だけではない、提案型の野党のあり方を模索してきた。これまでも政府予算案に賛成したり、一部の政策で与党と協議したりするなど、政策ごとに「是々非々」で対応する姿勢を取っている。与党側からすれば「国民民主が最も連携しやすい相手」(自民ベテラン)だ。ただ、玉木氏は自公政権への連立入りには否定的だ。閣僚などのポストを条件に連立入りすれば、政策重視を訴えて集めた支持を失いかねない。一方で、政策ごとに協力する「パーシャル(部分的)連合」には含みを持たせ、与野党問わず協議に応じると述べている。29日の記者会見でも「ほしいのはポストではなく、選挙で約束した経済政策の実現だ」と述べた」
玉木氏は、「対決より解決」を訴えている。旧社民党路線である。自民党は、こういう穏健な野党・国民民主党と話し合えるのが救いであろう。誠実に対応することだ。
(3)「玉木氏が、協力の条件として第一に挙げるのは「減税」の実現だ。基礎控除と給与所得控除、いわゆる「年収の壁」を計103万円から計178万円に引き上げることを衆院選の公約に掲げ、「手取りを増やす」とのスローガンは現役世代からの支持を集めた。燃料高騰対策として、ガソリンに上乗せされている暫定税率を廃止することも求めている。国民民主はかつて他党との連携で苦い経験がある。ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を巡り、自公に接近しながら、結果的に難色を示され3党協議離脱に追い込まれた。政策実現で存在感を示そうとしたが、少数政党ゆえに自公に「足元を見られた」(野党関係者)形だ」
労働力不足の状況で、「年収の壁」である計103万円を計178万円へ引上げるのは当然のことだろう。これによって、どれだけ所得税が減るのか。財務省は、そちらが気になっている。玉木氏は、財務省出身である。その辺りのことは計算済みのはずだ。
(4)「玉木氏は、「日本では2大政党的政権交代は難しい」というのが持論で、連立政権を前提とする「穏健な多党制」を主張してきた。小選挙区で議席獲得が難しくとも、中小政党も議席を得やすい比例票の獲得を目指し、競合を辞さずに積極擁立を続けてきた戦略が奏功した。今回、国民民主がキャスチングボートを握る状況が生じ、玉木氏周辺は「この時を待っていた。国民民主が掲げた政策を実現させれば、さらに支持を広げられる」と期待する。玉木氏も他党を巻き込んで政策を実現し、来年の参院選に臨む意向で「参院選が正念場だ。いかに勢力を伸ばせるか実力が問われる」と意気込む」
日本の政治的土壌は、言い悪いは別として保守系である。今回の「政治とカネ」の発端になった共産党の全国比例票は、19.3%も減っている。本来ならば、政治改革の先導者だけにそれなりの評価があっても良かった。だが、公約が現実離れしている。「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定と安保法制を廃止する。日米同盟の強化に反対する」となっている。これでは、安心して1票を投じられないのだろう。中ロに寝首をかかれるからだ。
(5)「国民民主が求める「減税」には代替財源の確保が課題となる。玉木氏は税収の上振れ分を充てるとしているが、安定財源もなく減税を実施するのは困難だ。立憲関係者は、「国民民主の政策には現実味がない。与党が簡単に受け入れるとは到底考えられない」と分析した」
国民民主党は、賃金上昇率が「物価+2%」に達するまで消費税5%に減税する。インボイス制度は廃止すると公約に掲げている。だが、インボイス制は脱税防止で不可欠である。中小業者に多額の「益税」を与えることになるからだ。つまり、消費者が支払った消費税のうち、国庫に納入されず、合法的に事業者の手元に残る部分である。インボイス制は、先進国共通である。税法上の公平性は維持されなければならない。国民民主党は甘えないことだ。
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