テイカカズラ
   

米国大統領選は、世界注目の的である。11月5日の投票日を前に、ハリスvsトランプの支持率は互角とされてきたが、直前になって大きな変化が出てきた。 

トランプ氏が、絶対に有利とされていたアイオワ州で、ハリスが3ポイント差で逆転との世論調査結果が出た。10月28~31日に有権者808人を対象に実施した地元紙『デモイン・レジスター』と『メディアコム・アイオワ・ポール』の調査によると、ハリス氏の支持率が47%でトランプ氏(44%)をリードした。 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月4日付)は、「アイオワ州でハリス氏優勢、最終盤のサプライズに注目」と題する記事を掲載した。 

この週末、民主党は贈り物を手にした。ただしそれは幻のように消えるかもしれない。アイオワ州の政治調査の判断基準である世論調査「アイオワ・ポール」で、大統領選民主党候補のカマラ・ハリス副大統領の支持率が共和党候補のドナルド・トランプ前大統領を3ポイント上回った。

 

(1)「だれも接戦になるとは考えていなかったアイオワ州で、衝撃的な調査結果が出たことで、11月5日の大統領選直前に支持率が動き、ミシガンやウィスコンシンなどの激戦州でハリス氏に追い風が吹く可能性があるという民主党関係者の期待が高まった。大統領選最終盤に行われた複数の世論調査を見ると、両候補は激戦州で互角の争いとなっている。ただ民主党関係者は、ハリス氏支持に向かう変化が高齢女性や無党派層を中心に起きたとアイオワ・ポールが示したことについて、トランプ氏の最近の集会を受けた全体的傾向の表れではないかと期待している。ニューヨーク市のマジソンスクエアガーデンで行われたトランプ氏の集会では、一部の登壇者から人種差別や性差別を含む侮辱的な発言が飛び出した」 

激戦の大統領選を最終的に動かすのは、予想外の事態発生とされてきた。今回は、ニューヨーク市のトランプ氏集会で、一部の登壇者から人種差別や性差別を含む侮辱的な発言が飛び出して非難されている。こういうことが、「トドメの一撃」になりかねないのだ。

 

(2)「共和党関係者はすぐさまアイオワ・ポールが外れ値だと言い、調査結果に水を差した。前回の2020年大統領選で、トランプ氏はアイオワ州において8ポイントの差で勝利しており、同州では大統領選の選挙運動も大規模な宣伝活動も行われていない。アイオワ州選出の議員は全員が共和党の議員で、同州は何年も共和党支持の傾向が続いている。この週末に公表された他の世論調査では、順位が劇的に入れ替わる兆候は限定的だった。昨年初め、民主党全国委員会は党大統領候補指名争いの初戦からアイオワ州の党員集会を外し、2020年の指名争いでバイデン大統領を救ったサウスカロライナ州に変更した。そのため民主党関係者の中には、党は基本的に地方有権者の獲得競争をあきらめたとの見方を暗に示す人もいた」 

アイオワ州は、共和党の「聖地」である。絶対的な強みを持つ同州で、ハリス氏リードは、激震となっている。共和党としては、「驚天動地」に違いない。

 

(3)「共和党は、党大統領候補指名争いの初戦の地をアイオワ州から変更しなかった。トランプ氏は1月、同州の指名争いで過半数の票を獲得、過去最大の差をつけて勝利した。アイオワ州共和党委員長のジェフ・カウフマン氏はXに投稿し、アイオワ・ポールの最大のスポンサーである地元紙デモイン・レジスターと同調査の世論調査専門家のアン・セルツァー氏が、「彼らに残されていたほんの少しの信頼性を失った」と述べた。アイオワ・ポールの最大のスポンサーである地元紙デモイン・レジスターと同調査の世論調査専門家のアン・セルツァー氏は、電子メールで同氏が採用した「今回の世論調査の手法は、ドナルド・トランプ氏がアイオワ州で優勢であることを示した2020年と2016年のアイオワ・ポールで私が使ったものと同じだ」と述べた。 

共和党は、世論調査手法にケチを付けている。世論調査担当者は、トランプ氏が優勢であることを示した2020年と2016年の時の手法と全く同じと説明している。こうした世論調査の変化を受けて、為替市場は、「トランプ優位説」が崩れ始めた。ドル指数が下落に転じたのである。

 

『ブルームバーグ』(11月4日付)は、「ドル指数が大幅低下、トランプ氏勝利の見方後退示唆か-原油は上昇」と題する記事を掲載した。

 

アジア時間4日の外国為替市場では、ドルが下落している。米大統領選の最新の世論調査で、共和党候補のトランプ前大統領に明確なリードがないことが示され、投資家の間でトランプ氏勝利の見方が後退した。 

(4)「ドルは対円や対ユーロ、対豪ドルなどで下げ、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は2カ月強ぶりの大幅低下となった。米国債先物は上昇している。トランプ氏が、勝利する可能性に絡んだいわゆる「トランプトレード」は、米国債利回りとドル相場の上昇に絡むものだ。しかし、大統領選投開票を2日後に控え、3日に発表された一連の世論調査では、ハリス氏とトランプ氏の支持率が全米および勝敗を決する激戦州の有権者の支持率でほぼ互角となり、引き続き接戦の様子が示された」 

トランプ復帰予想で「トランプトレード」がつくられてきた。その流れに変化が起こっている。ドル指数と米10年債利回りは過去数週間に7月以来の高水準を付けていた。同氏が掲げる減税や関税賦課が財政赤字拡大、インフレ加速につながって、債券相場を圧迫するとの懸念によるものだった。