世界2位のドイツVW(フォルクスワーゲン)は、かつてない経営危機に追込まれている。「第2のGM」同様の窮地に喘いでいるのだ。EV(電気自動車)戦略の誤りと、中国市場の不振が重なり合っている。PER(株価収益率)は、こともあろうに3.3倍という捨値同様の扱いだ。
『フィナンシャル・タイムズ』(10月31日付)は、「窮地のフォルクスワーゲン、中国対策示せず」と題する記事を掲載した。
独フォルクスワーゲン(VW)は、コスト削減で危機を乗り切れるだろうか。同社はドイツ国内のいくつかの工場を閉鎖し、数万人の人員削減を計画している。だが現時点の問題は、VWがリストラする必要があるかどうかではなく、それだけで窮地を脱することができるかどうかだ。
(1)「相次ぐ業績見通しの下方修正や、直近では7〜9月期決算が64%減益となったように、VWは問題が山積している。最大の問題は、より低価格で優れた車を生産している中国だ。VWの中国での納車台数は2024年1〜9月に10%減少した。同社は、中国における合弁事業からの24年の寄与を「出資比率に応じた営業利益」である約16億ユーロ(約2600億円)と見込んでいるが、これは22年の約半分にとどまる」
VWは、中国で急速に競争力を失っている。加えて、ドイツ国内のEV不振でダプルパンチを食った形だ。
(2)「中国メーカーとの競争は、中国国内でも海外でも構造的なものであり、容易に反転させられるものではない。欧州連合(EU)による中国製電気自動車(EV)への追加関税は、中国車の躍進を止めることにはならず、遅らせるだけだろう。そのうえ、欧州の自動車販売は循環的な減速傾向にあるとみられる。24年は市場全体で1400万台と、新型コロナウイルス禍以前の1600万台を下回ると予想されている。こうした状況によって、VWは持続不可能なほど高い原価率に苦しんでいる」
VWは、持続不可能なほど高い原価率に苦しんでいる。24年通期の売上高営業利益率は、従来予想の「6.5〜7%」から5.6%に下方修正した。売上高営業利益率は、自動車メーカーにとって5%台維持がレッドラインとされている。これを割込むと、新車開発などで支障を来すとされる、VWは、経営的にギリギリの線へ追込まれている。
(3)「問題の多くは、同社の中核であるVWブランドにある。同ブランドは好況時でも利益率が低い。7〜9月期には1.8%に低下した。これは同社の通期目標である5.6%を大きく下回る。金融情報サービスS&PキャピタルIQによると、ライバルの仏ルノーは通期で8%近いEBITマージン(利払い・税引き前利益が売上高に占める比率)を達成する見込みだ。VWは26年までにVWブランドの利益率を6.5%に引き上げることを目指している。同社は23年、26年までにコストを年間で100億ユーロ削減する計画を発表した」
VWブランドは、もともと「大衆車」で、ビートル(カブトムシ)などのモデルがその象徴である。こうして、低い利益率であることが経営的に響いている。
(4)「米投資銀行スタイフェルのダニエル・シュワーツ氏は、最近報道された工場の閉鎖と人員削減によってさらに40億ユーロのコスト削減が可能になるかもしれないと指摘する。合計すると、VWブランドの売上高の約15%に相当し、これは利益率の目標達成に必要な額を大きく上回る。このように必要以上にコストカットできることが、自動車販売の大幅な減速を緩和できるVWの大きな可能性を示している、と投資家は期待するかもしれない。ただ懸念されるのは、これが国内外における中国メーカーのシェア拡大や、EV販売による利益率の低下、内燃機関車の価格下落など環境の悪化を反映しているのではないかということだ」
工場の閉鎖と人員削減によって、さらに40億ユーロ(約6600億円)のコスト削減が可能とみられる。一見、これは余裕がありそうである。実際は、経済環境の悪化を反映してさらなるコストカットを余儀なくされているに過ぎない。
(5)「これらが、人員削減や工場の閉鎖が激しい反対を受けることと相まって、VWの予想PER(株価収益率)が3.3倍にとどまっている理由だ。投資家は明らかに、VWが再び軌道に乗れると信じていないのだ」
予想PERは、3.3倍まで低落した。投資家は、半ばVWを見放している結果だ。
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