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中国の半導体業界は、トランプ次期米大統領の下での米中対立に備え、半導体製造装置の輸入拡大や、海外の人材採用、新たな提携の機会などを模索している。だが、根本的な対策はうてずにいる。米同盟国の足並みが乱れれば、その隙を狙うという「落ち穂拾い戦術」でえある。

 

『ロイター』(11月12日付)は、「中国半導体業界、トランプ政権下の米中対立に備え戦略模索」と題する記事を掲載した。

 

中国の半導体業界はトランプ次期米大統領の下での米中対立に備え、半導体製造装置の輸入拡大や、海外の人材採用、新たな提携の機会などを模索している。

 

(1)「トランプ氏の大統領選勝利後に中国の半導体企業や団体、アナリストが発表した30以上の記事や調査リポートによると、トランプ氏の政策により疎外される国や企業との緊密な連携、自給自足体制の強化などが検討されている。トランプ氏は1期目の任期中、通信複合企業の華為技術(ファーウェイ)中興通訊(ZTE)、半導体受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)を「エンティティーリスト」に追加し、米国製部品の購入を制限した。一方、バイデン政権は中国企業が米国製の先端半導体を入手できないよう広範な輸出規制を導入した」

 

中国は、戦略物資の半導体で包囲されている。先端半導体を製造する能力はゼロである。米中対立が招いた結果だが、「第二のソ連」への道を歩むのであろう。

 

(2)「北京半導体行業協会の幹部は7日に「微信(ウィーチャット)」に掲載された記事で、半導体企業に対し海外事業を強化し進出先を多様化するよう促した。対中制裁のための日米欧の協調がトランプ政権下で弱まれば、特定の半導体の輸入を再開するチャンスがあるかもしれないと述べた。またトランプ政権が1期目のように、中国の学生や専門家が米国で働きにくくなる政策を実施すれば、中国企業は海外の人材誘致に乗り出すべきだと訴えた。「トランプ氏の就任後、専門的な人材、多国籍企業、海外との協力といった面で、中国半導体産業の発展に利益がもたらされる可能性がある。新しい状況や変化にタイムリーに適応すべきだ」と指摘した」

 

トランプ政権下で、日米欧の協調が弱まれば、その隙をついて半導体の輸入を再開するチャンスがあるかもしれないと淡い期待を賭けている。気の毒な状況だ。

 

(3)「また多くの記事は、トランプ政権下で中国半導体業界に対する輸出規制や関税が一段と強化されると予想し、自給体制の拡充を目指すべきと主張している。セキュリティー用半導体IC(集積回路)やパワー半導体を手がける済南魯晶半導体は同社のウィーチャットアカウントに、「トランプ氏の1期目は、半導体の重要性と国産化の必要性を認識させ、中国の半導体産業が自立する道を開いた」と投稿した」

 

半導体自給率は、未だ25%程度である。製品輸入がなければ、関連製品の生産がストップする状態だ。薄氷を踏む思いが続く。

 

(4)「中国半導体業界では、米大統領選の結果にかかわらず米国との厳しい関係が続くとみられていたが、一部では民主党のハリス政権が実現した場合、業界にとってより長期的な課題が予想されたとの声が出ていた。中国税関総署のデータによると、19月の半導体製造装置の輸入は約30%増の241億2000万ドルと、企業が半導体装置の輸入を強化していることが示された。このうち79億ドルは最先端半導体の製造に必要な露光装置で、前年同期比35.44%増加した。オランダからの輸入が70億ドルを占めた。業界筋によると、中国企業は大統領選による影響に備えて半導体製造装置の発注を最大化していた」

 

半導体装置の輸入は、今年がピークで来年は減少すると予測されている。来年の半導体生産量も減少見込みである。

 

(5)「ホワイト・オーク・キャピタル・パートナーズの投資ディレクター、Nori Chiou氏は「中国のハイテク企業は第1次トランプ政権時に関税の影響を受けたため、将来のリスクを軽減するために生産能力を徐々に拡大してきた」と指摘。「今回は、2018年の貿易戦争や20年の大統領選の時よりも準備が整っている」と語った」

 

前回は、トランプ氏から「不意打ち」を食らった。今回は、2度目だけに準備をしているという。ただ、半導体は日進月歩の世界だ。古い製造装置では、西側から遅れるだけ。差は開くばかりだ。