テイカカズラ
   

韓国では、家計の柱である40~50代の中高年社員に「退職勧告」の嵐が吹いている。この悲惨な状況は、大企業だけでなく中小企業にも蔓延し事実上、「45歳定年制」という深刻な事態だ。年功序列賃金制の結果、40~50代の賃金削減が行われている。 

『中央日報』(11月13日付)は、「定年延長どころか『会社から出て行け」』40~50代の半分が切られる新たな45歳定年時代」と題する記事を掲載した。 

大企業の部長まで務めて従業員20人ほどの中小企業役員になったソンさん(46)。彼は最近、社長との面談で「仕事を減らすからパートタイムで働いてほしい」という通知を受けた。事実上、「年俸を減らしたい。会社を出てほしい」という意味だった。

 

(1)「韓国統計庁のマイクロデータを分析した結果、今年6月末基準で、過去1年以内に退社した40~50代の失業者のうち、「非自発的」失業者が占める割合は50.8%となった。2014年の42.3%から10年間で8.5ポイント増えた。全年齢層で非自発的失業者が占める割合の44.4%より6.4ポイント高い。非自発的失業は職場の休廃業、名誉退職・早期退職・整理解雇、臨時・季節雇用終了、「仕事がない」または、事業不振などの理由で退社した場合だ。言い換えれば40~50代の失業者の半分が意思と関係なく仕事を辞めたという意味だ」 

韓国では、40~50代の失業者の半分が自分の意思で退職したのでない悲惨な状態だ。企業の都合で無理矢理、職場を離れた人たちである。家計の重い責任負っている層だけに胸が痛む話だ。 

(2)「実際に最近屈指の大企業では名誉退職の風が激しく吹いている。KT(注:韓国最大の通信会社)は8日付けで希望退職を断行した。対象人数は2800人。KT全社員の6分の1に達する。ポスコは先月初めに満50歳、勤続10年以上の事務職を対象に希望退職申請を受け付けた。イーマートは3月に創立後初めて勤続15年以上、課長級以上の社員を対象に希望退職を実施した。SKオン、LGハロービジョン、ロッテホームショッピングなども会社設立後初めて希望退職を実施した。都市銀行の40~50代の希望退職受付は例年行事として定着して久しい。サムスン電子さえ今年末まで海外系列会社を中心に最大30%の人員削減を推進している」 

日本で言えばNTTに当るのが、韓国のKTである。また、日本製鉄に当るのがポスコである。こういうリーディングカンパニーが、「早期退職」を募っている。韓国経済が、深刻な事態にあることを示している。

 

(3)「大企業はまだ事情が良い。退職者向けに希望退職を募集した後に再就職教育プログラムを用意したり、慰労金まで上乗せするケースが多いからだ。だが中小企業では考えることもできない。今年初めに中小企業を退社したキムさん(53)は、「大企業に務めていた時は人事規定もあり、労働組合のため会社がむやみに退社を勧める感じは受けなかった。中小企業に移ったら容易に『会社の事情が悪いので部長級以上は出て行ってほしい』という形で通知された」と打ち明けた。彼は「再就職するには評判を気にしなくてはならないので労働庁に通報することもできない」と話した」 

大企業の人員整理では形式を整えているが、中小企業になると血も涙もない扱いである。

(4)「企業が、45歳定年退職を押しつける背景は景気低迷にともなう業績不振が最初に挙げられる。ここに年功序列型賃金構造という構造的な問題も加わる。経済協力開発機構(OECD)によると、勤続年数が10年から20年に増える時に韓国の労働者の平均賃金上昇率は15.1%で現れた(2019年基準)。OECD主要28カ国で最も高い。平均賃金上昇率の5.9%だけでなく、米国の9.6%、日本の11.1%とも対比される」 

韓国で、「45歳定年」であるのは、年功序列賃金であることも響いている。勤続年数が10年から20年に増える時、韓国はOECDの中で最大の賃金上昇率となっている。ここを狙われているのだ。

 

(5)「経済が、高度成長している時は問題ない。だが、低成長時代に入り込むと企業の立場では40~50代が会社の経営に負担になる人材になった。賃金が高い上に会社の人材構造で占める割合も大きいためだ。ある大企業の人事担当役員は「40~50代が主軸である高費用・逆ピラミッド人材構造では変化した事業環境には早く対応しにくい。着実に希望退職を進めて雰囲気を刷新してこそ生き残ることができる」と説明した」 

韓国は、低成長時代に合わせた賃金体系を構築すべきである。年功序列賃金から職能給などを取り入れたできるだけフラットな賃金体系へ是正すべきだ。だが、労組が頑として受入れないという悩みを抱えている。 

(6)「韓国開発研究院(KDI)のハン・ヨセプ研究委員は、年功序列にともなう賃金上昇の傾きが急なほど企業が40~50代の労働者の早期退職を誘導しようとする傾向が大きくなる」と話した。問題は、一度主要な職場から押し出された40~50代が再就職するのが容易でない点だ。再就職に成功しても職の質が落ちる。中高年労働市場の雇用、その中でも高賃金・高熟練雇用が不足するからだ。労働研究院のキム・スンテク選任研究委員は「40~50代の非自発的失業者は大企業と中小企業、正規職と非正規職の二重構造でいずれも下層部に追いやられ、結局定年より早く労働市場から離脱する可能性が高い」と話した」 

下線部は、韓国雇用制度の弱点を示している。与野党はこの是正で協議すべきだが、国会は政争で空転している。救われないのは国民だ。