a0070_000030_m
   


産業政策が協議の対象へ

日本GDP押上げの主役

石破地方創生は角栄直伝

地方の発展機会を生かす

 

第二次石破政権が発足した。11月11日の石破首相は記者会見に臨み、半導体・AI(人工知能)支援に2030年までに10兆円超の支援を行うと発言した。25年の通常国会で立法化させると明言。日本の中軸産業として、半導体・AIを基盤することが明確になった。 

石破首相が念頭にあるのは、ラピダス支援である。政府が、ここまで踏み込んできたのは、2ナノ半導体製品化への技術的メドが立ったからであろう。技術的に不透明であれば、ここまで明言するはずがない。ただ、大手メディアの中には依然、懐疑的にみている向きもある。過去の日本半導体が、凋落した強い印象を引きずった「後ろ向き」議論とみられる。技術的側面の最新状況について、理解不足が重なっているのだろう。 

日本半導体の凋落は、成功体験がもたらした失敗である。大型コンピュータ用の半導体製造で絶対的な自信を持っていたが、時代は変わってPC(パソコン)やスマホという小型携帯の半導体需要へ移ったのだ。高い技術を必要とせず、ただ低コストが競争条件であった。日本半導体は、この潮流変化に追いつけず脱落した。基本技術は依然として、「健在」である。日本が、半導体の「後工程」で他国を圧倒していることこそ、その証明であろう。

 

日本半導体は現在、40ナノ(10億分の1メートル)が限度とされる。それが一挙に、「2ナノ」へ挑戦することから、前述の技術懐疑論が出る理由である。こういう技術的な壁は、米IBMの基本技術移転のほかに、世界的な最先端半導体技術の支援を受けることで克服する。ベルギーの半導体研究開発機関imec(アイメック)とも提携している。さらに、カナダのテンステレントとは10年間の技術提携で、CPU(中央演算処理装置)で機能するAI半導体を開発している。電力消費量10分の1という画期的半導体だ。 

さらに、「1ナノ」という世界未達の技術開発に向けて、ラピダスは東京大学、仏半導体研究機関のLeti(レティ)と共同で次世代半導体設計の基礎技術を共同開発する。レティの半導体素子技術を生かし、自動運転やAIの性能向上に欠かせない1ナノ品の供給体制を構築するのだ。過去に失敗した技術の壁は、国際協力によって克服可能である。こういう技術発展を無視して、大手メディアは「ラピダス失敗説」を流しているのであろう。
 

産業政策が協議の対象へ

自民、公明両党はそれぞれ政務調査会の会議を開き、半導体・AI支援策の原案について議論している。その後、国民民主党を加えた3党の政調会長間でも協議し、経済対策の早期策定に向けた本格的な調整に入る。単なる、首相の政策アドバルーンでないことを示している。

 

10兆円超の支援財源は、赤字国債でない恒久的な国債発行が予定されている。政府保有のNTT株とJT株を担保にして国債発行するものだ。NTTは、次世代通信網(6G)「IOWN:アイオン」(2030年実現)の世界標準を目指している。光通信であり、日米政府が支援を約束している技術だ。それだけに、NTT株には将来性が期待されるので、新しい半導体・AI支援の財源になっても何らの懸念がない銘柄だ。 

ラピダスは、明春に2ナノ試作品を発表する予定である。この試作品を需要先へ提示して受注につなげる意向だ。現在、約40社と交渉中とされる。いずれ受注先が明らかになれば、ラピダスの株式公開も可能になろう。政府は、仮にこれまでラピダスへ支給した補助金を、株式へ転換させれば値上がり益を手にすることになろう。今後10年間で、10兆円超支援分も部分的に株式へ切替えれば、大きな値上がり益を期待できるはず。損しない「投資」になろう。 

政府は、10兆円超の半導体・AI支援フレームによって、今後10年間で50超円超える官民投資が行われると見込んでいる。その結果、最終的には160兆円の波及効果が見込まれるという。これは、台湾TSMCが熊本県へ半導体工場を建設して判明したように、多方面の関連需要を引出している結果から推計したものであろう。関連企業の進出に伴う雇用や住宅の新規需要を生み出しているのだ。

 

石破茂首相は前述の記者会見で、大きな経済効果を生んでいる「熊本でのTSMC半導体工場のような例を他の地域にも」と目指している。 

地元熊本県では、TSMCが工場建設を開始した22年から31年までの10年間の経済効果が、約11兆円以上にも及ぶと、地元銀行の九州フィナンシャルグループが試算している。25年からは、熊本第2工場の建設が始まる。これも10年間で11兆円以上になろう。熊本県では、TSMCに対して第3工場建設も要望している。豊富な水資源が、熊本県の強みになっている。

 

日本GDP押上げの主役

半導体・AI需要増が、波及効果を含めて最終的に160兆円の需要を生むとすれば、現在の名目GDP(24年=IMF推計)の約600兆円に対して、実に4分の1増にも当る規模の大きさになる。名目GDPで160兆円も増えるとなれば、日本経済にとっては、過去にない最大の貢献となろう。(つづく)

 

この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。

https://www.mag2.com/m/0001684526