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韓国仁川市で81日、地下駐車場に駐車されていた1台のEVが自然発火。周囲の自動車に引火して140台以上が全焼または一部焼損した。電池の製造元は、いずれも中国製であった。ポルトガルのリスボンでも、8月に空港近くのレンタカー会社の駐車場で火災が発生した。200台以上が全焼した。火元が、テスラ車である可能性を報じている。英国では、ロンドンのEVバスで火災が発生し、地元当局は中国BYD製電池を搭載したバス約2000台をリコールした。こうした中で、日本EV電池は発火事故が少なく信頼性を高めている。全固体電池が発売されれば、さらに評価を高めるであろう。 

『東洋経済オンライン』(11月8日付)は、「失速『EV』相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖危機感つのらす中韓勢 日本勢には好機か」と題する記事を掲載した。 

現在、EV用電池として主に使われているリチウムイオン電池には、エネルギー密度が高く、航続距離を延ばしやすいというメリットがある。反面、過充電や過放電、大きな衝撃が加わった場合などに出火リスクが高いなど安全性に課題が残る。

 

(1)「電池メーカー、自動車メーカーともに過充電を防ぐシステムや衝撃を逃がす構造に工夫を凝らすなど安全性を向上させる取り組みは進めている。しかし、EV自体が普及し始めて日が浅く、メーカーが想定していない使われ方をするケースもある。また、電池の製造、特に大量生産における品質の安定性は常に課題となる。安全性に関わる問題を解決しなければ、いずれ破滅的な結果を招きかねない」。91日に中国四川省で開かれた電池産業フォーラムの講演でCATLの曾毓群(ズン・ユーチュン)董事長はそう訴えた」 

中国は、政府の自動車EV化政策で尻を叩かれ、電池の安全性に十分な配慮がされなかった。今になって、その弊害が噴出している。 

(2)「安全性への疑念が深まれば、EV失速に一層拍車をかけることになる。「品質と安全性の高い製品に裏打ちされた日本勢にとってチャンスとなる」。日系の大手自動車メーカーや電池メーカー幹部からはこうした声が多く聞かれる。日本の電池メーカーは安全性に自信を持つものの、コスト最優先の風潮の中でシェアを落としてきた。車載電池のグローバル市場でのシェアはパナソニックが6%にとどまるなど、日本勢を合計しても10%に届かない。改めて安全性がより重視されるようになれば、日本製電池が巻き返す余地が出てくる。もっとも、安全性を強みとしてきた日本勢でも火災事故はゼロではない。実は、2019~20年モデルイヤーのリーフに関して、電池火災の報告がアメリカで9件確認され、今年9月に現地当局へリコールの届けを出している。急速充電中に電池内の電気抵抗が増加する可能性があり、電池が急激に加熱され発熱や火災が発生する可能性があるという」 

日本のEV電池は、安全性重視でコストが高いことで、世界シェアは10%程度である。日本の自動車会社が、EVへ本格的に取組まない影響も見逃せない。

 

(3)「三菱自動車は、2009年に世界で初めて量産型EV「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を投入した。これまで投入したEV3車種では、電池に起因する火災事故が発生していないという。リーフに関しては、日産が言うように詳細がはっきりしない以上、電池に欠陥があると断言できない。約70万台というリーフの累計販売台数を考えれば、海外勢のEVと比べても安全性は高いのかもしれない」 

日産リーフは、米国で9件の火災事故が起こっている。だが、約70万台の累計販売台数での事故である。三菱自動車のEVは、火災発生事故がゼロである。 

(4)「トヨタ自動車、日産、ホンダは、大容量かつ発火の可能性が低いとされる全固体電池の開発を進めると同時に、電池の内製化にも動き出している。伊藤忠総研エグゼクティブ・フェローの深尾三四郎氏は「発火事故をこれまでほとんど起こしていない日本勢の電池ニーズが高まる可能性がある。中国勢の安値競争に追随しなくても戦えるよう、日本は官民をあげて電池安全に関する標準規格のルールメイキングで主導権を握るべきだ」と指摘する。日本勢が電池の安全性で業界をリードできれば、電池メーカーだけでなく、自動車メーカーにとっても武器になる」 

トヨタ、日産、ホンダは、27年頃には全固体電池登載EVを発売する。火災事故が起こりにくい構造とされるので、「日本EV安全神話」をつくり出すきっかけになろう。

 

(5)「日本EVは、テスラやBYDに先行を許してきた。遅れた理由は、EVの収益性が厳しく、製品としてまだ欠点も多く、市場動向を見極める意向が強かったことだ。電池のエネルギーマネジメントでも、安全性を重視して余裕を持たせれば、航続距離や充電時間面でEV商品性を一定程度犠牲にするほかない。「日本勢EVなら安全」というブランドを構築できれば、テスラやBYDを追撃するうえで大きな意味を持つ」 

日本がEVへ全力投球しなかったのは、リチウムイオン電池に技術的問題を抱えていたからだ。全固体電池へ移行すれば、その恐れは消える。日本製EVは、全速力で走れる環境が整うのだ。