半導体産業は、70年以上の成長期を過ぎて、今や進化期に入り込んだと指摘されている。それは、量的成長から質的発展を意味する。サムスンは、メモリー半導体で量的成長を遂げてきたが、非メモリー半導体という質的発展の扉を開けられない技術的壁に直面している。深刻な事態だ。サムスンは、創業期から自前技術の育成に力を入れずに、外部から必要な技術を導入する「依存型」できた。その限界が今、噴出している。日本半導体技術「窃取」が典型例である。
『中央日報』(11月14日付)は、「岐路に立つサムスン、『TSMCの模倣』超えファウンドリーで新たに戦略立て直さなくては」と題する記事を掲載した。
(1)「サムスン電子のファウンドリー(半導体委託生産)が岐路に立った。会社が「メモリー競争力回復」に優先順位を置き、ファウンドリー投資を縮小して人材配置を調整している。すると韓国の半導体装備会社とデザインハウスでは「業界最大手が厳しいので業界はみんな厳しい」というため息が出ている。システム(非メモリー)半導体はファウンドリーを中心にファブレス(設計)、デザインハウス(回路設計)、装備企業、後工程などが緊密に関わるが、ファウンドリーが萎縮すれば連鎖的に仕事が途切れる」
サムスンが、ファウンドリー部門縮小に向っている。巨額投資を見直し人材の再配置を始めている。これは正直正銘、サムスン危機を意味する。
(2)「サムスンファウンドリーが立つ場所は、すなわち韓国電子産業の岐路だ。「同じものを安く作る」量産競争力から、「顧客と市場を読み取る」企画・サービス競争力への転換点を迎えたためだ。サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長は先月、ファウンドリーに対し「事業を育てようとする熱望は大きい。分社に関心はない」と話した。オーナーの意志が確認されただけに短期的成果を超えこれを一貫して実現するリーダーシップが切実だという指摘が出る。「いまサムスンに必要なものはただ1人の先覚者」であり、「そうでなければ危険を遠ざけようとする官僚主義企業にすぎない」と、『サムスン・ライジング』の著者ジェフリー・ケイン氏は最近中央日報とのメールインタビューで話した。
サムスンは、官僚主義に陥っていると指摘されている。前例がない限り、新たなことに挑戦しないからだ。技術の世界では、自殺行為である。
(3)「元サムスン役員らと半導体業界関係者は、「TSMCの模倣」ではなくサムスンだけのファウンドリー戦略を立てなければならないと助言する。ソウル大学のキム・ヒョンジュン名誉教授は「サムスンは2030年にTSMCに追いつくとして性急だった」と指摘した。例えば3ナノメートル(ナノは10億分の1)GAA工法を世界で初めて導入したが、「初めての開発」のスローガンに埋没し、その後落ち着いて我慢強く歩留まりを高めて行くことができなかったということだ」
サムスンは、TSMCの後追いできた。まさに、「前例踏襲主義」の表れである。かつて、日本の半導体技術を正規のノウハウ料金を払わず、高額アルバイト料で「窃取」した振舞が、本腰を入れた自前技術開発を阻害した。
(4)「複数の元サムスン役員によると、この4~5年間にサムスンファウンドリーはTSMCが検証した成功の方式を追うケースが多かった。例えば、サムスンファウンドリーはアップルやテスラなどの注文型半導体(ASIC)を設計・製造できる能力を育てたが、これをファウンドリー事業部でやるべきなのかとの内部論争の末に「TSMCはASICをしていない」という理由でこれをシステムLSI事業部に移管したという。当時サムスンのASIC競合会社だったブロードコムは、その後相次ぐ大型買収合併を経て圧倒的なASIC市場1位になり、グーグルとオープンAIが注文したチップ生産を担っている」
前例踏襲主義によって、新たな発展の芽を摘んでしまった。注文型半導体を設計・製造できる部門の育成を放棄したのも、この悪しき前例踏襲によるものだった。
(5)「成均館(ソンギュングァン)大学化学工学部のクォン・ソクチュン教授は、「メモリー半導体もこれからは汎用よりはAI用、ハイブリッド、コア・メモリー統合など多様化する可能性が大きい。サムスンが既存のメモリー事業戦略を固守するのは有利でない」と話した。続けて、「システムあるいはメモリーのひとつだけ見る単線戦略ではなく、新しいメモリー半導体需要を反映した戦略的変身で市場を創出しなければならない」と助言している」
サムスンがメモリー半導体へ回帰するのは、質的発展を放棄するに等しい戦略である。日本は、ラピダスがAI半導体という最先端部門で着実に技術蓄積を積み、来春には試作品を出すところまでこぎつけている。日韓半導体は技術的に逆転する気配である。
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