あじさいのたまご
   

クボタが、農地に太陽光発電設備を設置し、農業をしながら発電する「営農型太陽光発電」を全国で展開する。2024年度内に栃木県周辺の50カ所で事業を立ち上げ、25年度以降に他の地域にも広げる。全国の管理されていない農地を活用し、食料とエネルギーの「地産地消」を促すという。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月12日付)は、「クボタ『農業しながら太陽光発電』全国で 放棄地を再生」と題する記事を掲載した。

 

JR宇都宮駅から車で20分ほど移動すると、あたり一面に畑が広がってきた。しかし、ところどころ雑草が生い茂った一帯が目に付く。農家の高齢化などに伴い、管理する人がいなくなった「耕作放棄地」だ。

 

(1)「農林水産省によると、日本では毎年、1万ヘクタール(1億平方メートル)以上の農地が放棄されている。全国の農地面積は1961年の約609万ヘクタールをピークとして減少傾向にある。2023年には約430万ヘクタールと1961年の7割の水準になった。耕作放棄地など荒廃農地は22年に全国に約25万ヘクタールあり、これは東京都の面積を上回る。将来にわたって食料を安定的に確保するためにも、適切に管理されていない農地をうまく活用できないか。名乗りを上げたのが、農機メーカー国内トップのクボタだ」

 

日本では毎年、1万ヘクタール以上の農地が放棄されている。もったいない話だ。高齢による農業リタイアである。この農地を太陽光発電と農業の二本立てに編成するもの。これこそ、本当の「グリーン&クリーン・ビジネス」である。

 

(2)「クボタは、宇都宮市周辺で2024年10月までに農業をしながら太陽光パネルを使って発電する「営農型太陽光発電」の施設を10カ所ほど稼働させた。24年度中に栃木県周辺の50カ所に広げ、対象面積を20ヘクタール、発電容量を5メガ(メガは100万)ワットとする計画を持つ。25年度以降には蓄積したノウハウを活用し、全国の耕作放棄地で営農型発電事業を展開する。30年に売電による収入を年間50億円規模とすることを目指す。地域に制限を設けず大規模に営農型発電を手掛けるのは、一企業としては初の試みとみられる」

 

30年の売電による収入は、年間50億円規模を目指すという。このほかに、農業収入も加わる。農業法人が目指すビジネスとしては好適であろう。

 

(3)「クボタは農機の販売・メンテナンスや効率的な収穫技術の共有などで、全国の農家と協力的な関係を築いている。自治体との広範な連携ネットワークも生かし、地域ニーズを掘り起こす。設備の設置などへの初期投資はかさむが、運営開始後は事業黒字を維持しながら、十数年で投資分を回収できると見込んでいる

 

下線部は、十数年で太陽光発電の投資回収を見込むという。農業収入が、これにどれだけ加わるかが、ビジネスとしての腕のふるい所であろう。

 

(4)「クボタは農地に柱を立てて、耕作地の上部に「屋根」のような形状で太陽光パネルを設置した。パネルの位置には農機メーカーならではの工夫を施している。農機をスムーズに動かせるように、柱と柱の間は約5メートルを確保し、パネルの高さは地上から約3メートル空けた。パネルを斜めに傾けて設置することで、農地への日射が遮られる比率を指す遮光率は3割程度に抑えている。そのため、米や麦、大豆などほとんどの農作物は通常通りに生育するのに十分な日照を得られるという

 

農地として、日射が遮られる比率(遮光率)は3割程度に抑えている。そのため、米や麦、大豆などほとんどの農作物は通常通りに生育するのに十分な日照を得られるという。これは、「二毛作」「三毛作」に値する収益性が見込めよう。

 

(5)「発電した電力は「自己託送」という仕組みを使って、トラクターを製造するクボタの筑波工場(茨城県つくばみらい市)に売電する計画だ。事業が軌道に乗れば、近隣にある工場など他社への販売も視野に入れる。売電収入の一部はアグロエコロジーにも還元する。地権者としては農地の管理を任せられ、賃借料収入も得ることができる。クボタで新規事業を担う社長肝いりの組織、イノベーションセンターに所属する楠本敏晴氏は「当社、農業法人、地権者の3者がウィン・ウィン・ウィンの関係になることを目指す」と話す」

 

農地で発電した電力は、クボタが責任をもって売電するという。地権者は、安心していられる。

 

(6)クボタの北尾裕一社長は以前から、地域で完結する農業や水の循環システムを理想に掲げている。営農型太陽光発電のインフラ整備ではクボタが先導しながら、地域の金融機関や企業、農業法人を巻き込み、多くの関係者が出資し合う事業モデルも構想する。こういったモデルが確立できれば、クボタにとって投資額を抑えられるだけでなく「地域のみなさんの発電所とすることができる」(楠本氏)。収穫した農作物を地元で流通させれば、食料の地域循環につながる可能性もある」

 

下線のように新しい事業モデルである。地域創生事業にもなる。