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中国の習近平国家主席は16日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のため訪れているペルーのリマでバイデン米大統領と会談し、米中関係の改善に向けドナルド・トランプ氏と協力する用意があると伝えた。その際、「4つのレッドライン」を通告した。なかなかの高姿勢である。

 

『ブルームバーグ』(11月18日付)は、「習主席「四つのレッドライン」強調ートランプ次期米政権にメッセージ」と題する記事を掲載した。

 

中国の習近平国家主席は、来年1月に退任するバイデン米大統領との最後の首脳会談で、トランプ次期米大統領に明確なメッセージを送った。中国は友人になりたいが、必要なら闘う用意があるというものだ。

 

(1)「アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催されたペルーのリマで16日、米中首脳会談が行われた。トランプ氏への向き合い方を示す機会と捉えた習氏は、米中は「新たな冷戦」を戦うべきでなく、衝突は不可避でないと強調した。それには両国がうまくやっていく道を見いだす必要がある」

 

中国は、「冷戦」を恐れている。デカップリングがさらに深まれば、中国経済は破綻するからであろう。中国輸出が、高関税によって阻まれれば、中国はじり貧に陥る。ならば、自ら内需拡大を行えば良いはずだが、赤字国債を増やして習氏の権力基盤を弱めるという身勝手な理屈づけで、輸出依存経済を継続したいのだ。

 

(2)「習氏はその一方で、中国の「四つのレッドライン(越えてはならない一線)」にあらためて言及。中国共産党支配の弱体化、中国の民主化の後押し、中国の経済的発展の阻害、台湾独立支援の動きをトランプ氏が避ける必要性を示唆した。中国国営中央テレビ(CCTV)を含む国営メディアは、四つのレッドラインに触れた発言を取り上げ、今後の米中関係の課題を提起すると伝えた」

 

4つのレッドラインは、以下の点だ。

1)中国共産党支配の弱体化

2)中国の民主化の後押し

3)中国の経済的発展の阻害

4)台湾独立支援の動き

中国国家主席として、極めて自信のない発言だ。自ら、中国統治に自信があればこういう「弱々しい」ことを要求するはずがない。外部勢力によって、中国共産党はひっくり返るという危惧の念に怯えているのだろう。長期不況も解決できない習近平政権が、自分を倒さないでと、米国へお願いしている形である。台湾は、中国統治下になく「名義」だけを強調している。台湾問題は、台湾市民が決定権を持っている。

 

(3)「習氏は会談後に発表した声明で、「それらに挑んではならない。米中関係にとって最も重要なガードレールであり、安全網だ」と訴えた。バイデン氏との事実上最後の会談を受けた長い声明は、中国が最悪の事態に備えながらも最善を期待している状況をうかがわせる。トランプ氏は中国への60%の関税賦課を予告しているほか、次期国務長官にマルコ・ルビオ上院議員、次期国家安全保障担当補佐官にマイケル・ウォルツ下院議員を指名するなど、外交政策チームに対中強硬派を起用する意向だ」

 

中国は、共産主義による統治の限界をみせている。経済停滞が、その証明である。市場主義を都合良く利用しており、「市場主義=民主主義」という原理を棚上げしている結果だ。共産主義による統治は、時代遅れになっている。

 

(4)「それでもトランプ氏は、米国が台湾をどの程度支援すべきか疑問を提起し、中国ビジネスに大きな利害関係を持つイーロン・マスク氏と関係を深めている。マスク氏は2023年に台湾が「中国の不可欠な部分」と発言し、台湾指導部から非難された。関税の脅しがトランプ氏の大統領1期目と同様に交渉の出発点になるのか、同氏が中国阻止を目指すイデオロギー的傾向を強めているのかは不明だ」

 

マスク氏のトランプ氏接近は、EVのテスラ生残りを画したものだ。米国内でEV補助金中止要求は、他社EV「撲滅」を狙っている。テスラの全自動運転を認めさせるため、政府規制の骨抜きを目指している。危険な話だ。

 

(5)「習主席の発言は、譲れない領域に抵触しない経済問題の協議には応じる用意を示すものだ。譲れない領域としては、必要なら武力行使も辞さないと警告する台湾問題が恐らく最も大きい。習氏はバイデン氏との会談後、台湾総統を初めて名指しし、台湾独立を求める「頼清徳の本質を米国はしっかり見る」べきだと述べた」

 

習氏は、台湾総統の頼氏に相当の敵愾心をみせている。自分より「優秀」であることに気付いて警戒しているのだ。中国前首相、李克強氏(故人)への反発とよく似たケースである。習氏には、こういう本能的は「嗅覚力」が備わっている。