韓国企業数で99.9%を占める中小企業が、金利高・高い人件費・中国ダンピング攻勢で苦境に立たされている。せめて、今年だけでも年越しをしたいという悲痛な状況へ追込まれているのだ。金利高解消で利下げをすれば、家計債務が急増して個人消費を圧迫するという悪循環が始まる。韓国経済は、どこから手をつければ回復できるか、分らないほど混迷した状況にある。

 

『東亜日報』(11月21日付)は、「破産企業が過去最大、『今年だけでも生き残ろうという気持ち』」と題する社説を掲載した。

 

(1)「今年に入ってから10月までに破産を申請した企業が、年間基準で史上最大値をすでに上回っていることが分かった。1~10月に全国の裁判所で処理された法人破産宣告(認容)件数は1380件で、昨年同期(1081件)より27.7%増えた。破産申請が最も多かった昨年の全体(1302件)をすでに上回っている。新型コロナも持ちこたえていた企業が、長期化した不況と金利高にこれ以上耐えられずに崩れている」

 

韓国経済が抵抗力を失っているのは、大企業の「稼ぐ力」(収益力)が低下して、歳入が減っていることだ。文政権時代に、コロナ対策で国債を増発した結果、対GDP比の債務残高が2024年に52.88%(IMF推計)まで高まっている。韓国のようなミドルクラス国家は、公的債務の対GDP比が50~70%が限度とされている。特に、韓国のような通貨危機に陥り安い経済は、健全財政が要請される。そういう意味で、安易に国債へ依存できない状況にある。

 

文政権の公的債務の対GDP比は、就任時の2017年が38.01%であった。それが、5年後の2022年には49.80%と11.8ポイントも押上げてしまった。問題の多い政権であった。

 

(2)「破産した企業は、卸売や小売業、製造業、情報通信業、建設業など業種を問わずにいる。製造業の中では機械・装置、電子、金属加工分野に集中した。東亜(トンア)日報の取材チームが視察した京畿道平沢市(キョンギド・ピョンテクシ)や華城市(ファソンシ)一帯では最近、廃業した工場が少なくない。電子機器メーカーの工場の前には、壊れたテレビなどの在庫だけが放置されており、自動車メーカーの協力会社の工場では、工場設備がトラックに運ばれて売られていた。取材チームが会った企業は、「どうにかして今年だけでも生き残ろうという気持ちで、ひたすら耐えている」と話した」

 

現政権は、財政赤字を増やさないように懸命になっているが、公的債務の対GDP比はジリジリと高まっている。24年は52.88%(IMF推計)まで高まりそうだ。こういう状況下であり、財政出動にも頼れないジレンマに陥っている。


(3)「今年に入ってから、半導体と自動車を中心に輸出は回復したが、中小企業は景気回復を全く体感できないと話した。金利高と高い人件費にともなう資金難、中国発低価格物量の攻勢に苦しめられ、輸出好調の温もりが中堅・中小企業にまで広がらなかったためだ。大企業だからといって事情が良いわけではない。建設景気の低迷と中国の低価格物量の攻勢により、ポスコは今年、工場2ヵ所を閉鎖し、現代(ヒョンデ)製鉄も慶尚北道浦項(キョンサンブクド・ポハン)工場の稼動中断を決めた。流動性危機に追い込まれた大企業は、経営の不確実性に備え、「優良事業」まで整理して持ちこたえている」

 

大企業も工場閉鎖へ追込まれている。中国からのダンピング輸出攻勢に苦しんでいるからだ。中国の輸出価格は、常識を超えた「捨値価格」であり、対抗しようがない状態である。

 

(4)「問題は、来年も状況が良くなる可能性が高くないということだ。20日、国際通貨基金(IMF)は、今年と来年の韓国経済成長率の予測値を軒並み下方修正した。今年は2.5%から2.2%に、来年は2.2%から2.0%に下げた。特に来年は、グローバル経済の不確実性のために「下方リスク」がさらに大きいと明らかにした。米国のドナルド・トランプ第2期政府の発足後、通商環境が変われば、成長率が1%台に下がる可能性を排除しなかったのだ」

 

25年も不況は続きそうだ。IMFは、2%割れを示唆している。国際投資銀行の多くも1%台成長予測である。

 

(5)「政府は、堅実な企業が一時的危機で崩れないよう、規制緩和や税制・金融などの支援などを通じて積極的に支援しなければならない。賃金・雇用体系の改善、産業構造の再編など根本的な構造改革も急がれる。IMFも、「経済回復力強化のために、強力な経済政策が必要だ」と指摘した。今すぐ、今年を越すのも難しいという企業の息が止まる前に急がなければならない」

 

韓国の悩みは、与野党が限りない政争を繰り広げていることだ。まともに議案を審議しないという「極限」状況にある。どうにもならないのだ。