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何か、西部劇を見ているような展開だ。トランプ次期米国大統領が、中国へ10%関税引き上げを予告した途端に、中国は米国人3人を解放した。米国も、中国人3人を開放した。中国はこれまで、バイデン大統領が正規の外交交渉で開放を要求しても応じなかった。それが、トランプ氏の「一喝」で開放したのだ。「トランプに弱い習近平」という構図を、世界中へ知らせることになった。だが、「拍手喝采」しているだけで済まない事態でもある。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月28日付)は、「中国拘束の米国人3人解放、トランプ次期政権を警戒」と題する記事を掲載した。

 

米ホワイトハウスは27日、中国で長期間不当に拘束されていた米国人3人が解放されたと発表した。3人は帰国し、近く家族の元に戻る。米政府が中国に解放を強く求めていた。来年1月に退任するバイデン大統領にとって外交成果となる。

 

(1)「米政府は中国側への見返りや、拘束者の身柄交換をしたのかどうかについて明らかにしていないが、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、米国で禁錮20年の刑を言い渡され服役していた中国の情報機関職員と関係者の計2人が27日時点で釈放されていたと報じた。バイデン氏は、今月16日にアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれたペルーで中国の習近平国家主席と会談した際にも米国人の解放を要求した。ブリンケン国務長官やサリバン大統領補佐官もそれぞれ中国側への働きかけを続けていた」

 

中国は、トランプ氏の米国大統領就任前に、米中の懸案事項を解決しておこうとしている。トランプ氏が就任すれば、どんな難題を吹っかけられるか分らないと警戒しているのだ。トランプ氏の「目には目、歯には歯を」という強硬策に怯んでいるようにみえる。

 

(2)「発表によると、解放されたのはマーク・スウィダンさん、カイ・リーさん、ジョン・リアンさんの3人。米メディアによると、スウィダンさんは麻薬関連の罪で死刑判決を受け、リーさんとリアンさんはそれぞれスパイ罪で服役していた。来年1月に就任するトランプ次期大統領は、世界各地で拘束されている米国人について「私が大統領になる前に解放しなければ、大きな代償を払うことになる」と警告していた。既に、中国への追加関税を課すことも発表し、対中圧力を強める構えで、中国側は次期政権の出方をうかがっているとみられる」

 

中国は、相手が強硬策を取らない限り対応しないことを示している。これは、極めて教訓的だ。中国の軍事侵攻を抑止するには、中国を上回る軍事力を持つしか解決策のないことを示している。中国へ軍事的に対抗する術は、「合従連衡」でしかないのだ。同盟を組むことで、中国の侵攻を防げる。

 

「強面」のトランプ氏は、こういう力の信奉者である。それだけに、「独断政治」の危険性が指摘されている。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月28日付)は、「トランプ関税の意味『経済政策は自分で決める』」と題する記事を掲載した。

 

トランプ次期米大統領が22日にヘッジファンドマネジャーのスコット・ベッセント氏を財務長官に指名すると、ウォール街や米経済界の多くは安堵した。

 

(3)「ベッセント氏は財政タカ派で、ドルの基軸通貨としての地位を擁護し、最近まで関税に慎重だった。同氏の起用は、トランプ氏が市場寄りの政策を優先し、経済成長を後押ししてインフレと金利を抑制する意思があることを示唆した。だがその安堵(あんど)は72時間しか続かなかった。トランプ氏は25日、大統領就任初日にカナダとメキシコに25%の関税を、中国に10%の追加関税を課して、不法移民と合成オピオイド「フェンタニル」の流入が止まるまで続けると発表。これで同氏が選挙戦で示した通り、破壊的ポピュリスト(大衆迎合主義者)として統治する方針であることがはっきりした」

 

トランプ氏は、カナダとメキシコに25%の関税を、中国に10%の追加関税を課すと発表した。これで、トランプ氏が自分で経済政策を決めるスタイルであることを明白にした。

 

(4)「ここから得られる教訓は、トランプ氏の経済チームの最重要メンバーは同氏自身、ということだ。「トランプ氏の1期目は、多くの大言壮語が最終的に撤回された」。パイパー・サンドラーの政策アナリスト、アンディー・ラペリエル氏は26日の顧客向けメモでこう指摘した。「2期目も大言壮語は多いだろうが、実行に移されることも多くなるだろう。スタッフの大半はたいてい、トランプ氏にこうした政策を思いとどまらせようとはしないからだ」と指摘」

 

トランプ氏が一人で物事を決めることは、極めてリスキーである。「大衆政治論」の危険性を予告しているのだ。中国が震え上がる前に、世界も同じ時限爆弾を抱えていることに気付くべきだろう。