中国の地方財政は、「蟻地獄」に陥っている。一度はまったら、脱出不可能であるからだ。不動産バブルでウナギ登りであった地価が、中国地方政府の土地売却益を膨らませてきた。土地売却益は、そのバブルが弾けて急減し、地方政府を恐慌へ陥れている。新税でも設定しない限り、財政赤字を埋める手段はないのだ。中国政府にその計画もなく、中国経済は方向感覚を失っている。ハッキリ言えば、お手上げだ。
『日本経済新聞 電子版』(11月28日付)は、「中国の土地売却収入、3年で5割超減 経済対策の足かせ」と題する記事を掲載した。
地方政府の財政難が加速してきた。中国財政省によると1〜10月の土地使用権の売却収入はピーク時の2021年同期と比べ5割超減った。地方の歳入の柱である売却収入の減少は習近平指導部が進める経済対策の足かせになる。
(1)「財政省が発表した1〜10月の土地使用権の売却収入は2兆6971億元(約56兆円)で、前年同期と比べて23%減った。22年以降、3年連続で前年を下回る水準となっている。売却収入が最も多かった21年同期からは55%減った。売却収入は特別会計に相当する「政府性基金」に計上する。地方政府が発行する専項債(インフラ債)と呼ぶインフラ開発に充てる地方債の主要な返済原資にもなる」
今年1〜10月の土地売却益は、最も多かった21年同期から55%も減っている。2021年の土地売却益は、地方政府の歳入全体で約35%も占めていた。それが、55%も減れば、歳入全体では約15%も減る計算になる。大変は「歳入欠陥」だ。行政サービスを大幅に削減するほかない。そのしわ寄せは、特に農村部の年金や医療衛生へ行くと憂慮されている。もはや、無駄なインフラ投資を行う余裕は100%消えた。
(2)「中国の土地は国有制で、地方政府が土地の使用権を不動産開発企業に売る。マンション販売の長期不振で新規開発が冷え込んだ結果、土地使用権の売買も減った。中国国家統計局によると、1〜10月の新築住宅の販売面積は、前年同期と比べて18%減だった」
土地国有制が、不動産バブルの「原点」になった。地方政府は、「打ちでの小槌」で地価を押上げて財源を作ってきた。「土地本位制」(学術用語でない)のなれの果てだ。
(3)「習指導部が、これまで打ち出した経済対策は地方債の活用を柱に据える。地方政府による特別地方債の発行残高の上限を24年から3年間で6兆元引き上げた。これとは別に今後5年間で4兆元分の特別地方債を手当てする。不動産対策として専項債の活用範囲を広げた。不動産開発会社が開発に着手していない土地や、在庫住宅の買い取りにインフラ債の使用を認めた。いずれの対策にも中央の主体的な関与はなく、地方の責任での債務解消を進める」
習近平氏は、自らの責任にならないように、すべて地方政府の責任へ転嫁している。地方政府は、負担増を恐れてインフラ債(専項債)の発行が低調だ。2024年通年の発行枠に占める1〜8月の発行済み比率は66%で、3年ぶりの低水準に落ち込んでいる。中央政府は発行を加速するよう促すが、地方政府は歳入減を踏まえ過度な発行を抑えている。
(4)「地方政府は、借金返済や利払いの原資となる売却収入の低迷で、将来の返済余力を見通せない。返済難に陥るのを危惧するところもあり、米ピーターソン国際経済研究所は「地方から十分な関心を集められず効果を発揮できない可能性がある」と指摘した。中国の中央政府(国務院)は、利払い費が歳出の10%を超えた地方政府に財政再建を指示する仕組みを設けている。地方政府は、この警戒基準を超えないよう自己防衛する姿勢を強めている」
地方政府は、利払い費が歳出の10%を超えると財政再建を指示させる仕組になっている。これでは、インフラ債を円滑に発行するはずがない。中国は、中央政府も地方政府も「火の粉」を被るのを極力避けている。これでは、じり貧経済に陥って当然だろう。
(5)「中央政府による追加の不動産支援策が、地方の税収を減らす可能性も出てきた。中国財政省や住宅都市農村建設省などは12月から、個人が住宅購入時に支払う不動産取得税(契税)の減税措置を拡充する。北京や上海など4大都市で、2軒目購入にかかる税率は最大1%に下げる。別荘などの高級住宅の売買で支払う土地増値税も、2年以上の居住歴を条件に免除する。減税となる不動産取得税と土地増値税は、いずれも地方税にあたる。政府は消費者の負担を軽くして住宅在庫の解消をめざす。だが、地方政府にとっては税収減を招くことになる。地方財政のさらなる逼迫は避けられない」
不動産支援策で、個人が住宅購入時に支払う不動産取得税(契税)の減税措置をしている。これらの措置による「減税分」は、すべて地方政府の税収減になる。中央政府の「懐」は痛まない工夫がされている。なんとも「身勝手」な姿に映るのだ。中国経済の復活にはほど遠いのである。
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