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世界では、トランプ次期米大統領の財政出動に期待する「トランプトレード」が拡散したが、韓国は「トランプストーム(嵐)」という暴風雨に見舞われた。例の関税引き上げ論による悪影響である。最大の不安は、トランプストームが半導体や自動車、バッテリーといった韓国産業をけん引する虎の子を直撃することだ。これだけでない。多額の補助金受領問題が危うくなってきた。

 

バイデン米政権によるCHIPS・科学法のもとで、韓国企業の半導体は、米政府の補助金を当てにしながら対米投資を拡大してきた。だが、トランプ氏は高率な輸入関税を軸に国産回帰を進め、補助金の拠出は絞る方針である。この「逆転の発想」で、サムスンやSKハイニクスは青ざめている。

 

『ハンギョレ新聞』(11月29日付)は、「半導体補助金『ばかげた話』扱いの米国、国際的信頼は気にも留めないのか」と題する社説を掲載した。

 

来年1月に任期が始まる第2次トランプ政権で中心的な役割を果たすことになる長官候補者が、サムスン電子などが米国に半導体生産工場を作る対価として支給することにした補助金を「浪費」と呼び、再考する意向を表明した。

 

(1)「(バイデン政権は)半導体などの先端技術産業で、中国の挑戦を振り切るために、「価値を共有する」同盟国が団結しなければならないと言っていた。それにもかかわらず、政権が変わると「ばかげた話」だと言う。ドナルド・トランプ前大統領がこのように約束を反故にするならば、米国の国際的信頼は大きく失墜し、企業は苦労して準備した投資計画を変更せざるをえなくなる最悪の状況に追い込まれる可能性がある。韓国政府は米国の次期政権を強く説得し、互いに不必要な被害が発生しないよう最善を尽くさなければならない」

 

韓国のサムスンやSKは、バイデン政権による補助金支給を頼りに、米国での工場建設に踏み切ったが、トランプ政権への「代替わり」で、補助金受給が怪しくなってきた。

 

(2)「第2次トランプ政権で、イーロン・マスク氏とともに「政府効率化省」(DOGE)のトップを共同で務めることになったビベック・ラマスワミ氏は26日(現地時間)、自身のX(旧ツイッター)に「米インフレ抑制法(IRA)やCHIPS法(半導体および科学法)による浪費の補助金が、(トランプ大統領が政権に就く2025年)1月20日より前に急いで支給されている」としたうえで、「このようなすべての土壇場での手法を再検討し、監察官に最後の瞬間に行われた契約を綿密に調査するよう勧告する」と明らかにした。ジョー・バイデン大統領が、米国の立ち遅れている半導体生産能力を引き上げるために超党派的な法律まで作って出した約束を、次期政権の長官候補者が調査を必要とする「不適切なもの」だと断定し、反故にする可能性があるという意向を公然と明らかにしたわけだ」

 

次期閣僚候補のビベック・ラマスワミ氏は、補助金の支給に目を光らせている。これは、韓国企業にとって青天の霹靂であろう。

 

(3)「米国を信じて困難な投資決定を下した同盟国と主要企業を裏切るようなものだ。トランプ氏はこれに先立ち、CHIPS法について「貧しい国々に金をばら撒くきわめて悪いディール(取引)」だとし、「高関税を課せば、彼らが来てただで半導体工場を作るだろう」という見解を示した。その後、市場が大きく動揺すると、ジーナ・レモンド商務長官が乗り出し「離任する日まですべての補助金を支給することが目標」だと強いけん制球を投げた」

 

レモンド商務長官は、バイデン政権の責任において任期中に補助金を支給するとしている。

 

(4)「米商務省は4月、サムスン電子と補助金64億ドル(約9700億円)、8月にはSKハイニックスと補助金4億5000万ドル(約690億円)、政府融資5億ドル(約760億円)を支給する予備取引覚書をそれぞれ交わした。予備取引覚書は現時点では法的効力がない。これに対して、米国のインテルと台湾のTSMCは今月、法的効力のある最終契約を結んだ。このまま放置しておくと、韓国企業が真っ先に標的になりかねない」

 

米国のインテルと台湾のTSMCは今月、法的効力のある最終契約を結んだ。サムスンとSKは、未だ予備取引覚書である。大急ぎで、最終契約を結ばなければならない。そうしないと、契約が水の泡になる。

実業家のイーロン・マスク氏は、前記のビベック・ラマスワミ氏と共に、トランプ次期大統領の歳出削減の取り組みを主導するよう任命された。この取り組みは新設される「政府効率化省(DOGE)」を通じて行われる。マスク氏は、政府の支出を少なくとも2兆ドル削減できるとの考えを示しているものの、それが年間なのか、あるいは一定期間における数字なのかは明言していない。

直近の2024会計年度(9月30日まで)の連邦政府歳出は6兆7500億ドル(約1028兆円)だ。このうち、2兆ドル削減は不可能とされている。となる、少額補助金削減に焦点をあわせ「戦果」にすることも考えられる。