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日産自動車は11月、米国や中国市場の販売不振で悪化した収益構造を改善するため、世界で生産能力20%、人員9000人を削減すると発表した。不振の日産が、再び輝きを取り戻す具体策はあるのか。ここで、浮上してきたのが、ホンダとの統合論である。すでに、『フィナンシャル・タイムズ』が報じて注目されている。

 

『ロイター』(11月29日付)は、「日産とホンダ 苦境克服に統合の選択肢」と題する記事を報じた。

 

トヨタ自動車の国内最大の競合2社は、力を合わせて現在抱える問題に打ち勝つ時が来たのかもしれない。日産自動車の苦境はより鮮明で、業績不振を受けて生産能力と人員を削減する緊急再編策打ち出した。ホンダの四輪車事業も精彩を欠いている。

2社を統合すればコスト削減や収益立て直しのほか、電気自動車(EV)やその他の技術への効率的で効果的な投資が可能になる。

 

(1)「日産の内田誠社長による事業再編計画は9000人の人員削減と生産能力の20%削減が伴う。ビジブル・アルファがまとめた市場予想によると、それでもなお、2026年3月期の自動車事業の営業利益率は0.4%にとどまる見込み。また、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は26日、日産がルノーの保有分に代わる株主として、銀行や保険会社などの長期投資家を模索していると報じ、関係者の話として、ホンダに一部株式を売却する可能性も排除していないと伝えた」

 

日産の2026年3月期の自動車事業の営業利益率は0.4%に止まるという。9000人の人員削減と生産能力の20%を削減しても、この程度の営業利益率では「死に体」である。自動車産業の営業利益率は、最低で5%が必要である。このラインを割れば、新車開発は不可能とみられている。日産は、再編を決断すべき時期であろう。

 

(2)「ホンダの四輪事業の営業利益率はわずか3.6%で、二輪事業の18%を大きく下回っており、26年3月期も1%ポイント程度しか改善しない可能性がある。ビジブル・アルファの予想によると、日産とホンダの同年度の合計販売台数は600万台近くになる見通し。主要市場が重なる両社が統合すれば管理、調達から工場・研究まで、あらゆる経費の削減が可能になる。ただ、営業利益率をトヨタの10%に匹敵させるのは並大抵のことではなく、必要となるコスト削減は約120億ドルと、両社の売上高合計の7.5%に相当するという」

 

ホンダの四輪事業営業利益率はわずか3.6%である。日産と同様に新車開発能力は著しく制約される。日産・ホンダの統合論には、それなりの根拠がある。日産とホンダの合計販売台数は600万台近くになる。主要市場が重なる両社が統合すれば管理、調達から工場・研究まで、あらゆる経費の削減が可能になる。コスト削減は、約120億ドル(約1兆8000億円)という。これは、凄い統合効果である。

 

(3)「(両社統合で)利益率7%を目指すことは、両社が経営統合してコスト削減なしに達成可能な3%と、トヨタの10%のちょうど中間値で、可能かもしれない。そのためには、売上高の約4%に相当する経費を削減する必要がある。これは、プジョーとフィアット・クライスラーが19年に、合併してステランティスを設立することで合意した際に目標に掲げた2.7%を上回る。一方でコスト削減率は、ルノーと日産、三菱自動車の3社連合が17年に打ち出した事業目標に基づくものに一致する。日産とホンダは金融子会社を統合することで、より多くのコストを削減できるだろう」

 

両社統合で、営業利益率は7%になるという。これは、「死中に活を求める」話である。大同小異で統合を推進すべきであろう。

 

(4)「日産とホンダの経営統合はこれまでも取り沙汰されている。FTは、19年に日本政府関係者が両社に経営統合を提案したと報じている。日産のカルロス・ゴーン元会長は過去に、電気自動車(EV)やソフトウエアでの提携について、ホンダによる「偽装買収」と表現している。両社はこれまで、統合する意向を全く示していない。ただ、業績不振や計算上の統合効果を踏まえると、検討する価値はありそうだ」

 

日産は、メンツを捨ててホンダとの統合を真剣に模索する時期だ。ゴーン元会長は、EVなどの両社提携は、ホンダによる「偽装買収」として暗にホンダの技術力を評価している。