為替市場で指標的役割の「10年物国債」は、米中で利回り格差が広がっており、中国人民元相場の下落が続いている。米中金利差は、9月末に1.6%まで縮小していたが、再び拡大している。12月3日には、2.1%台まで広がっている。この拡大傾向は当面、続きそうだ。中国経済には、明るい徴候が何ら見えないことが負担になっている。
『日本経済新聞 電子版』(12月3日付)は、「中国人民元、17年ぶり安値に接近 金利急低下で売り圧力」と題する記事を掲載した。
中国の人民元が、約17年ぶり安値水準に接近している。中国の金利急低下を受け、為替相場に大きな影響を与える米中金利差が再び拡大しているためだ。中国は現状、行きすぎた人民元安をけん制している。だが、トランプ米次期政権の対中政策次第では一定の人民元安を容認する可能性もある。
(1)「3日、日中の上海外国為替市場で、人民元は一時1ドル=7.2996元まで下落する場面があった。2023年11月3日以来約1年1カ月ぶり安値水準となる。人民元は、23年9月8日に付けた7.351元を下回ると、07年12月26日以来、約17年ぶりの安値水準となる。市場では、「人民元安加速の核心は米中金利差の拡大にある」(光大証券の高瑞東アナリスト)との見方が一般的だ。9月末に1.6%まで縮小していた米中金利差は再び拡大しており、3日は2.1%台となった」
米中の10年物国債利回りが拡大している。米国が高いのだ。人民元が売られている理由である。
(2)「米国では、11月5日の米大統領選の投開票日以降、トランプ次期米政権が掲げる財政拡張的な政策への思惑で「トランプ・トレード」が広がり、米金利上昇・ドル高の勢いが増した。中国の債券市場では国債買いの勢いが増している。10年物国債利回りは2日の取引で初めて心理的節目の2%を下回った」
米国では、「トランプ・トレード」で、株高・ドル高・債券安(金利高)が起こっている。中国経済は、この影響を大きく受けている。この現象は一時的と見られるが、中国の金利安(債券高)は続きそうだ。楽観的な材料が見当たらないからだ。
(3)「中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が11月8日に決めた景気対策は、地方債の増発だけで、住宅市場の活性化など需要刺激策を盛り込まなかった。家計資産の大部分を占める住宅価格の下落は心理悪化を通じて高額消費の不振を招き、物価が上がりづらい「ディスインフレ」をもたらしている」
ここでは、「ディスインフレ」という言葉を使っているが、現状は金融引き締め下にはない。正しくは、「デフレ」である。国債利回り低下は、まさにデフレ現象そのものである。
(4)「中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は2日の北京市での講演で「25年も経済を下支えする形での金融政策を継続する」との政策方針を示した。潘氏は年内に商業銀行から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率を下げると明言している。緩和的な金融政策を背景に「長期金利の低下が継続すれば、人民元の下落圧力はさらに拡大する」(高氏)」
人民銀行は、長期の金融緩和継続姿勢を堅持している。人民元の下落圧力が続くことになる。
(5)「人民銀は3日、人民元取引の目安となる「基準値」を1ドル=7.1996元に設定した。夜間取引終値(7.274元)との乖離(かいり)幅は0.07元と約4カ月ぶりの大きさとなった。人民銀は、人民元の下落が「行き過ぎ」として市場実勢より人民元高方向の基準値の設定でけん制しているとみられる。人民銀は上海市場での人民元相場の1日あたりの変動幅を、基準値から上下2%までとしている」
12月3日21時37分現在、1ドル=7.2854人民元である。夜間取引終値(7.274元)より下落している。じわりじわりと安値へ追込まれている。
(6)「トランプ次期米大統領は選挙期間中に中国に60%の高関税を課すと公約していた。大統領就任後のトランプ氏の対中政策次第では、輸出支援のため中国が今後一定の範囲内で人民元安を容認する可能性もある」
今後ますます、中国経済を取巻く環境は悪化していく。人民元安の進行は止まらない状況だ。ただ、中国輸出にはプラスだ。
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