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米政府は12月2日、中国向けの半導体輸出規制を強化すると発表した。半導体製品全般の禁輸措置となる「エンティティー・リスト」に中国企業140社を追加した。韓国や台湾などが人工知能(AI)向けのメモリーや半導体製造装置は、中国に向けて輸出することを禁じた。レモンド米商務長官は声明で、今回の狙いを「中国に先端技術を自国で生産できるようにすることを断念させるため。バイデン政権の施策の集大成だ」と明らかにした。

 

『ハンギョレ新聞』(12月3日付)は、「サムスン電子を襲った米の対中輸出統制、HBMにも一般DRAMにも『暗雲』」と題する記事を掲載した。

 

米国の中国向け高帯域幅メモリー(HBM)輸出統制で、サムスン電子の未来を襲った暗雲も一層深まった。高帯域幅メモリー競争で遅れを取っているサムスンは、低仕様製品を中国に輸出し不振を一部挽回してきたが、それさえも難しくなったためだ。

 

(1)「12月3日、米商務省の資料によると、米国は来月1日から自国・外国産の高帯域幅メモリーの対中輸出を制限する。これまでは回路線幅が18ナノメートル以下の自国産製品だけが統制対象だったが、今後は海外直接生産品規則(FDPR)を通じて全世界で生産されるすべての高帯域幅メモリーを統制するということだ。高帯域幅メモリーは、DRAMを複数重ねてデータ伝送速度(帯域幅)を引き上げたメモリー半導体で、大規模なデータ処理が必要な人工知能(AI)チップに使われる」

 

AIチップに使われるすべての高帯域幅メモリーが、対中輸出禁止となった。これは、サムスンが手がけている分野である。

 

(2)「業界では、主にサムスン電子が打撃を受けると見通している。物量の大部分を米エヌビディアに供給しているSKハイニックスとは異なり、競争で押されたサムスン電子は、旧型高帯域幅メモリーを一部中国に輸出してきたためだ。サムスンの高帯域幅メモリーの売上のうち、中国の割合は二桁に達するといわれる。一部の証券界では、その比率が20~30%に達すると推測する。今後、サムスンの高帯域幅メモリーの売上がそれだけ減少する可能性がある」 

 

サムスン電子は、旧型高帯域幅メモリーを中国へ輸出してきた。サムスンの高帯域幅メモリーのうち、20~30%の比率を占めるとされる。それだけに、輸出禁止措置は痛手である。

 

(3)「サムスンは、DRAM事業全般でも困難が続く見通しだ。一部の予想とは異なり、米国は今回「ブラックリスト」にチャンシン・メモリーを追加しなかった。2016年の設立以来、中国政府の支援を基に急速成長してきたチャンシン・メモリーは今年、旧型製品である第4世代DRAM(DDR4)を中心に低価格攻勢を展開し、既存のメモリー業界を脅かしている。これに対し、米国がチャンシン・メモリーを相手に牽制を強化するとの期待も一部提起されていたが実現しなかった。ブラックリストに載った企業はさらに強力な輸出統制を受け、半導体製造に必要な装備などを確保することが難しくなる」

 

今回の「ブラックリスト」には、中国のチャンシン・メモリーが入っていない。この企業は、第4世代DRAM(DDR4)を中心に低価格攻勢をかけ、サムスンの販売シェアを荒らしているのだ。

 

(4)「米国の今回の発表は、すでに危機説に包まれたサムスン電子に悪材料として作用するだろうという評価が出ている。DRAM価格を引き下げたチャンシン・メモリーの低価格攻勢は、主にサムスンに打撃を与えてきた。高帯域幅メモリー競争で遅れたサムスンの場合、一般DRAMへの依存度が相対的に高いためだ。中国への輸出が滞れば、高帯域幅メモリーの売上を四半期ごとに2倍程度に増やすというサムスンの公言も、さらに厳しくなる見通しだ。エヌビディアから第5世代高帯域幅メモリー(HBM3E)の納品承認を受けることがさらに重要になったわけだが、未だ決定していない」

 

高帯域幅メモリー競争で遅れたサムスンは、一般DRAMへの依存度が高くなっている。この分野が、中国輸出できなくなっだだけに痛手は大きい。

 

(5)「韓国政府とサムスン電子は、対応策を講じている。産業通商資源部の関係者は、「高帯域幅メモリーが搭載された人工知能チップの完成品は、低仕様であれば中国に輸出できる」として「そのように間接輸出をする方式で影響を最小化する方案を模索中」と話した」

 

韓国政府は、低仕様の高帯域幅メモリーが搭載された人工知能チップであれば、中国輸出が可能でないかとみて、米国政府と交渉する意向だ。「メモリー半導体」王者のサムスンが、意外な脆さを露呈している。