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中国政府は常套手段として、事前に派手な政策宣伝を行い市場に大きな期待を持たせる。だが、結果は宣伝ほどでないことが多い。11~12日にわたり開催された中央経済工作会議も同じ轍を踏んだ。中国は、2025年に政策の軸足を消費の底上げに移し、公的借り入れと政府支出を拡大することを示唆し、期待感を膨らませたのだ。

だが、13日の国営新華社通信は、中央経済工作会議後の声明を伝え、来年の財政赤字目標を引き上げる考えを示した。「消費を大いに押し上げること」と内需全体の刺激が最優先課題としたが、具体策については何ら触れなかった。市場はこれに失望し、株価が下落する一方、国債10年物利回りは過去最低を記録。典型的な不況現象を呈している。

『ブルームバーグ』(12月13日付)は、「中国10年債利回り 初の1.8%割れー本土株は大きく下落」と題する記事を掲載した。

(1)「中国国債は13日の取引で値上がりし、指標の10年債利回りが初めて1.8%を下回った。本土株は大きく下落した。来年の政策優先事項を定める「中央経済工作会議」が12日に閉幕し、共産党指導部が利下げや預金準備率の引き下げを「適切な時期」に行う方針を示したことから、中国国債が買われた」

中央経済工作会議は通常、政策の焦点や方向性を大まかに示すにとどめ、詳細をそれほど明らかにしなかった。国内総生産(GDP)成長率目標や政府予算など具体的な内容は、翌年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)でようやく公表される仕組みになっている。だが、景気が上向きの時は中央経済工作会議終了と同時に、概略が漏れてきたものである。今回は、完全な情報統制が行われている。「大した成果がなかったのでは」という憶測を生んでいる。金融緩和だけは先取りして、国債が買われ指標の10年債利回りが初めて1.8%を下回った。

国債が買われたのは、最も安全な資産が国債という意味でもある。国債利回り低下は、設備投資の資金需要がないことを裏付けるものでもある。長期金利の低下だ。

(2)「一方、本土株の指標CSI300指数は13日の取引を2.4%安で終了。共産党指導部が相次ぎ景気支援を表明しているものの、財政刺激策の具体的な内容について投資家は引き続き推測を強いられている。香港上場の中国本土企業から成るハンセン中国企業株(H株)指数も、2%を超える下げとなっている。世界市場では、中国需要に大きく依存する鉄鉱石や銅などの商品が値下がり。リスク資産に対する投資家の買い意欲が低調なのは、中国刺激策のより詳しい内容開示が依然として待たれていることの証左だ」

株価の値下がりは、中央経済工作会議が財政赤字拡大へ思い切った手を打てない失望感を示している。マッコーリー・グループの中国経済責任者の胡偉俊氏は、中央経済工作会議について、基調として経済成長を支えるものだが、具体策を欠いていると指摘した。

胡氏は「政府が消費者に現金を直接給付するとは思えない」とした上で、「政府は支出を拡大する可能性が高い。中央政府の借り入れを増やすが、インフラ投資など公的支出を強化することで全体的な需要を押し上げるだろう。それが大きな戦略だ」としている。これは、財政支出拡大が、従来型のインフラ投資になることへの「失望」を表しているのでもあろう。

(3)「第2次トランプ米政権発足で緊張が高まるタイミングを控え、中国政府が政策の詳細を意図的に保留している可能性があるとの指摘もある。市場の反応は、投資家の信頼回復という課題に当局が直面していることをあらためて示している。IGアジアのマーケットストラテジスト、ジュンロン・イープ氏は「政府の借り入れ拡大や財政赤字の増大容認、来年に向けた金融緩和が主な政策内容だが、詳細はまだ明らかにされておらず、これが市場の利益を制限する可能性もある」と説明。「米国の関税計画を巡る不透明性により、政策当局は引き続き確約するのが難しい」との見方を示した」

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)以降、中国の個人消費の伸びは工業生産に見劣りしている。輸出拡大で、国内消費の低迷による影響は和らいだが、中国からの安価な輸入品流入を懸念する国・地域からは反発を招いている。イエレン米財務長官らは、中国政府による製造業への不当な補助金が過剰生産能力につながっていると主張している。国内消費への支援を強化するよう繰り返し求めてきたのだ。

これこそ、中国の取るべき経済政策の「王道」だが、相変わらずのインフラ投資に拘っている。高速鉄道を35年までに7万kmへ延伸するという「無駄な投資」に夢中なのだ。もはや救いのない状態である。