中国ファーウェイの最新旗艦スマートフォンは、1年前のモデルとほぼ変わらない半導体を搭載していることがわかった。スマホの進化を支えるのは半導体の進歩によって実現する。ファーウェイは、その肝心の半導体入手で大きな障害に直面している。中国半導体が、米国の輸出規制によって、技術進歩上で大きな網をかけられている結果だ。
中国は、半導体の製造装置や製品も米国の禁輸対象になっている。中国は、この制約を乗り越えるべく、古い半導体装置を使って「マルチパターニング技術」という面倒な過程を導入している。従来1回で済む露光を複数のパターンに分割し、あとでそのパターンを重ね合わせるものだ。手間暇かかって、ズレを生じやすい難点があるという。この方法は、広く知られており、歩留まり率が低く高コストになる。ファーウェイは、この障害に泣かされている。
『ブルームバーグ』(12月13日付)は、「ファーウェイ最新スマホ、前モデルとほぼ同じ半導体搭載ー進歩が停滞」と題する記事を掲載した。
中国の通信機器大手、ファーウェイの最新旗艦スマートフォンは、1年前のモデルとほぼ変わらない半導体を搭載している。同社の技術進歩の減速を示している。
(1)「ファーウェイは、新型スマホ「Mate70 Pro Plus」を発表。昨年、発売された国産半導体搭載の「Mate60 Pro」は、米政府に衝撃を与えた。調査会社テックインサイツがMate 70 Pro Plusを分解したところによると、同機種はMate 60 Proと同じ回路線幅7ナノメートル技術で製造されたプロセッサーを搭載していた。プロセッサー「KIRIN 9020」はファーウェイが設計し、今回も中芯国際集成電路製造(SMIC)が製造した」
昨年、発売された国産半導体搭載の「Mate60 Pro」は、7ナノ半導体を使用していたことが分った。米国が、禁輸措置を取っているにもかかわらず、中国が自力で7ナノ半導体を製造できる技術水準に達したのかとみたからだ。これは、冒頭に指摘した「マルチパターニング」手法による製造である。
中国の半導体メーカーSMICの5ナノ品と7ナノ品の価格は、台湾積体電路製造(TSMC)の同等製品より価格を40〜50%高く設定されているという。そのうえSMICの歩留まりは、TSMCの3分の1にも満たないと指摘されている。マルチマターニングの宿命である。これでは、量産化できず国際競争にならないのだ。
(2)「ファーウェイは年内にも、より先端的な5ナノ技術への進歩を遂げる見込みだと報道されており、中国テクノロジー産業の台頭を抑える米国の試みが失敗しているとの懸念が強まっていた。ファーウェイ自身は半導体技術の詳細を公表していない。今回の分解の結果は、ファーウェイの技術が業界トップの台湾積体電路製造(TSMC)からなお5年ほど遅れていることを意味する。TSMCは2018年に7ナノ半導体の量産を開始し、19年に同製品の強化版の出荷開始を発表した」
SMICの7ナノ品および5ナノ品の生産ラインには、規制強化前に入手済みの米国製装置が使われており、23年に納入されたオランダASML製露光装置も工場内にあるという。オランダ政府が最近、一部の最先端装置の輸出許可を取り消しており現在、ASMLは中国への輸出はできなくなっている。SMICに近い人物は、「米国やその同盟国が先端半導体の製造装置の輸出規制を強化してから、SMICの生産能力引き上げは一段と難しくなっている」と語った。『フィナンシャルタイムズ(FT)』(24年2月6日付)が報じた。
FT記事のように、SMICは新型のASML製露光装置を保有してないのだ。この結果、手造りの「マルチパターンニング」という手法を使わざるを得ない。台湾のTSMCからみれば、5年は遅れている。この差は今後、ますます開いていく。


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