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日銀が、12月の「短観」(短期経済観測)を発表した。顕著な特色の一つは、人手不足が、大企業・中小企業ともにバブル経済以来40年ぶりの事態になっていることだ。こうした労働力不足を背景に高い賃上げ率が、消費を刺激しており、日本経済は好循環過程へ入っている。

すでに、「デフレ状況」は終った。最低賃金近傍(最低賃金+300円以内)で働く労働者の割合は、パートタイムで60%超、フルタイムでも15%超となっている。最低賃金引き上げが、確実に賃金全般を引上げるという新たな波及効果を強めている。日本経済の岩盤が次第に確かなものになってきた。

『日本経済新聞 電子版』(12月13日付)は、「国内景気が堅調、価格転嫁と賃上げ支え 日銀短観12月」と題する記事を掲載した。

国内の景気が堅調に推移している。日銀が13日に発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では製造業が大企業・中小企業ともに改善したのに加え、非製造業の景況感も高水準を保った。

(1)「これまでの賃上げが消費を支え、価格転嫁の進展も企業業績を下支えしている。世界経済の不透明感が強まるなか、来年の春季労使交渉(春闘)でも高い賃上げ率を続けられるかが焦点となる。企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業・製造業で前回9月の短観から1ポイント改善してプラス14。大企業・非製造業は1ポイント悪化してプラス33となった。日銀は「高いレベルで横ばい。良好な水準が続いている」と評価した」

日本経済は、賃上げが消費を支えるという理想的な形になってきた。このペースを崩さないことだ。

(2)「雇用が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」を引いた雇用人員判断DIは大企業・全産業でマイナス28、中小企業・全産業でマイナス40だった。先行きはさらに悪化すると見込む。バブル期以来の人手不足の水準で、企業が賃上げなど待遇を改善して人員を確保しようとする動機となる。2025年の春闘には弾みとなる。大企業だけでなく、中小企業も価格転嫁に積極的だ。販売価格が「上昇」するとの回答の割合から「下落」を引いた販売価格判断DIの先行きをみると、大企業・非製造業は2ポイント上昇してプラス31となった。中小企業・非製造業も4ポイント上昇し、プラス31となった」

人手不足は、1980年代後半のバブル期以来の水準である。企業が、賃上げなど待遇を改善して人員を確保しようとする動機となっている。この状態は、恒常的に続く。日本経済は、「高原状態」が続くはずだ。人手不足が、設備投資を刺激する。

(3)「消費者と向き合う非製造業は価格競争が激しく、長年客離れを懸念して値上げには慎重だった。販売価格判断DIの上昇は、中小企業も含めて収益確保や向上のために、値上げをいとわなくなっていることを示している。値上げは賃上げの原資を確保することになるうえ、長らく停滞してきた生産性の向上にもつながる。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、「中小企業も利益をしっかり確保できているとみられる。価格転嫁は時間をかければ整っていく。前向きな印象だ」と指摘する」

非製造業が、価格引上げによって賃上げ原資を確保する動きに出ている。賃上げの好循環が始まっている証拠だ。

(4)「トランプ前米大統領の返り咲きや中国経済の減速で世界経済が不透明感を増していることを踏まえ、景況感の先行きは弱含んでいる。大企業の業況判断DIの先行きは非製造業が5ポイント悪化してプラス28だった。製造業は1ポイント悪化してプラス13となった」

世界経済の前途は、波乱含みである。大企業の業況見通しを慎重にさせている。

(5)「一部の非製造業では高まる人件費が重荷にもなりつつある。大企業の業況判断DIを業種別にみると、小売りは前回から15ポイント悪化してプラス13、宿泊・飲食サービスは12ポイント悪化してプラス40だった。いずれも個人消費と結びつく業種だ。値上げは進む一方で、人件費などのコスト増を賄いきれず、収益が悪化しやすい傾向にある。人手不足による需要の取りこぼしも起きている」

一部の非製造業では、高まる人件費が重荷になりつつある面もみえている。一方では、人手不足による需要取りこぼしも起きている。ロボットの導入などの工夫で乗切るほかない。

(6)「24年春闘後の賃金の上昇によって、実質賃金がプラスに転換した月もあるが、まだ定着したとはいえない。消費の減速を招かないようにするには、所得環境をさらに改善させる必要があり、その意味で来年の春闘でも高い賃上げ率の確保が欠かせない。政府が掲げるデフレ完全脱却や、日銀がめざす2%の物価安定目標の達成の成否も左右する」

政府が掲げるデフレ完全脱却とは、次の4条件を指している。
1)消費者物価上昇率が2%を超える→超えている
2)GDPデフレーターがプラスである→プラスである
3)需要ギャップがプラスである→不安定である
4)単位労働コストがプラスである→プラスである

政府は、いつまでも「デフレ完全脱却」に拘り、財政拡大を続けていると政策判断を間違える。もう、「自然体」になることだ。