テイカカズラ
   

韓国議会は12月14日、尹錫悦大統領の弾劾訴追案を議決した。国会議事堂前に集まった市民が、歓声を上げて喜びあっている情景は日本にまで伝わっている。実際は、喜びの声を上げるどころか、政治危機の深刻さに涙を流さなければならない局面である。絶対的権力を握る大統領制が、韓国の政治風土には合わないからだ。大統領制を改革して、権力集中を分散化することこそ、悲劇を再び引き起さない手段である。

『韓国経済新聞』(12月14日付)は、「政治改革だけが根本的な解決策」と題するコラムを掲載した。筆者は、尹永寬(ユン・ヨングァン)峨山政策研究院理事長/元外交通商部長官である。

経済規模が世界10位圏の民主主義先進国、世界で歓迎されるK(韓国)文化、K原発、K防衛産業、世界10位の政府開発援助提供国…これが我々の考える韓国だった。ところが尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の非常戒厳宣言で、これらすべてがどれほど脆い政治的基礎の上に立っていたのか、その実情が天下に表れた。

(1)「問題は、我々の政治制度がなぜそのような人物を取り除いたり牽制したりできなかったかだ。一言でいうと、1987年体制が寿命を終えたからだ。過去40年間に4人の大統領が監獄に行き、1人は極端な選択をし、弾劾大統領が2人になろうとしている。こうした政界をいつまで放置するのだろうか。韓国の政治制度は権力が大統領に集中した5年単任の帝王的大統領制だ。さらに、国会も巨大両党が談合して議席を占める」

過去40年間に、4人の大統領が監獄に行き、1人は極端な選択(注:自殺)をし、弾劾大統領が2人になろうとしている。これだけみても、韓国には大統領制は不向きである。議院内閣制によって、内閣の総辞職を可能にする政治制度になるべきだろう。

(2)「2020年の総選挙で二大政党に投票した人は3分の2だが、議席は90%以上だ。国民3分の1の政治的意思がそのまま無視される代表性が弱い制度ということだ。そして大統領が1%ポイントだけ(尹大統領の場合は0.73%ポイント)勝っても政治権力と資源を握る勝者独占の制度だ。こうした政治構造でさまざまな弊害が発生した。何よりも与野党が国のために協力する動機が消え、与野党が死活をかけて争う激しい対立が日常化した。権力を一度逃せばすべてのものを失う勝者独占の制度であるからだ」

韓国は、民主主義が育たない風土にある。民主政治は、妥協の上に成り立つ。その妥協が不可能で、白黒を付けるまで争っているからだ。

(3)「国民が、何を望んで国家のために何が重要かは眼中にない。合理的な政策を政府・与党が出しても野党は無条件に批判して拒否するしかない。その政策で与党が票をさらに獲得すれば、野党自身の執権の可能性が消えるからだ。それで、政権が交代するたびに政策は無条件に反対方向に進んだ。例えば、国の百年大計のためには盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府が推進した「地方均衡発展」政策が李明博(イ・ミョンバク)政権に引き継がれ、それ以降も続くべきだった。しかし政権が交代するやいなや破棄され、我々は今その大きな代価を払っている」

韓国は、現在の政治体制を続けていれば、いずれは破局を迎える。経済的にサムスンの行き詰まりが明らかになっている。あと、2~3年で結論が出るだろう。政策に継続性がないことが、最大の欠陥である。左派陣営は常時、「反日」を叫ぶが、それは何をもたらすか。冷静に考えることが必要だろう。

(4)「李明博政権のグリーン成長政策も同じだ。同じ与党出身の後任の朴槿恵(パク・クネ)政権が引き継いで補完、発展させていれば、今ごろ韓国は環境分野の世界トップ走者になっているだろう。対北朝鮮政策、外交政策も政権が交代すれば覆って一貫性がないため、国際的な信頼度が落ちて久しい。経済は1%台の成長に低下して長期沈滞に差し掛かり、出生率0.72と国自体が消滅していくが、むやみな力自慢と怒鳴り声ばかりが乱舞する」

ここでの指摘は正しい。政治的争いが、最大のテーマである。争って「目立つこと」が、最大の政治的な目的になっている。対日関係は、経済的にも極めて重要なはずだが、そのことに左派は全く気付いていないのだ。日本を評価する言動は、「ニューライト」と呼んで蔑まされる。正常とは思えない政治感覚である。

(5)「今はもう権力構造を変えて、まともな政治家を選出し、牽制する装置を用意しなければならない時だ。現在の5年単任の大統領制を変えなければいけない。大統領個人の過ちが国全体を覆すこの制度が失敗した制度であることは十分に立証された。最終的には内閣制を念頭に置くものの、まずは国民が選んだ大統領が外交を担当し、国会が選出した総理が内政を担当する二元的政府制への改憲を推進する必要がある」

韓国左派に、大統領制改革論が出ないのが不思議である。大統領の絶対的権力を左派陣営の勢力拡大に利用したいのであろう。