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ドイツ自動車業界が、10月29日に発表したレポートによれば、2035年までに自動車業界で14万人が失職する可能性があると指摘した。このレポートは、プログノスがドイツ自動車工業界から依頼を受けて調査したもの。ドイツの自動車業界は、2019年~2023年にかけすでに4万6000人が解雇されている。このペースが続けば、2035年までにさらに14万人の雇用が失われ、合計で19万人近くが失職するとしている。

このようにドイツ自動車業界は、斜陽化の色彩を強めているが、ドイツ防衛産業が「好機到来」とばかりに自動車業界の解雇者の受入先になっている。NATO(北大西洋条約機構)は、ロシアの脅威に対抗すべく防衛費の対GDP費3%引上げ説が出始めている。こういう流れの中で、防衛産業の拡充気運が強まっている。

『ブルームバーグ』(12月14日付)は、「ドイツ自動車業界の労働者、防衛企業が受け入れ-チーム丸ごと雇用も」と題する記事を掲載した。

ドイツ自動車業界の労働者に、救いの手が差し伸べられている。同業界が苦境に立たされ、人員削減をまさに進めようとしている時、防衛産業は雇用を増強している。

(1)「ミュンヘンに拠点を置くレーダーメーカーのヘンゾルトは、軍事関連の受注急増に対応するため自動車部品会社の2社からチームを丸ごと雇い入れる交渉を進めていると、同社のオリバー・デーレ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。雇用するチームの人数は100人に上るケースもあるという。13日にブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じたデーレ氏は、「自動車業界の現在の苦境は、われわれにとってはまさにチャンスでしかない」と語った」

ドイツの防衛産業は、ロシアのウクライナ侵攻後に設備投資に積極的に対応している。

(2)「デーレ氏によると、今年に入りヘンゾルトは既に約1000人を採用し、ソフトウエアエンジニアから成るチームを加入させることになるという。採用交渉を行っている相手の自動車部品メーカーを明かすことは控えた。ヘンゾルトは来年も同程度の人員増加を見込んでおり、新たな提携やM&A(企業の合併・買収)の可能性に対しても積極的になる計画だと、同氏は述べた。他の防衛企業も労働者を受け入れている。戦車や弾薬を生産するラインメタルは6月、タイヤメーカーのコンチネンタルから最大100人の労働者を雇用する計画だと発表した」

ヘンゾルトは、25年も1000人規模の採用を予定している。自動車業界の苦境を救う役割を担っている。

(3)「ウクライナや中東での戦争が続き、トランプ米次期大統領が安全保障への強力なコミットメントを求める中で、欧州各国で国防支出は増加。防衛産業には強い追い風が吹いている。トランプ氏は欧州の同盟国に軍事費の負担増を迫っているが、各国の政治指導者らは資金を使って国内の企業や雇用を支援しようとしている」

欧州防衛産業は、米国の次期大統領のトランプ氏がいかなる要求を出すか分らないので、先手を打って拡充策に出ている。

(4)「欧州の自動車業界は、電気自動車(EV)の需要低迷と中国との競争激化で苦戦を強いられている。コンチネンタルやボッシュ、シェフラーなどの部品メーカーは、低迷の深刻化に伴い人員を削減した。コンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、デジタル化とオートメーションで、現在の仕事上の役割が時代遅れになるため、ドイツの自動車業界では現時点で雇用されている77万人の人員は2030年までに12%減少する見通しだ。人員削減を模索するフォルクスワーゲンは、労働組合との緊迫した協議を続けている」

EVへの転換は、自動車部品点数が大幅に減少するので人員整理が不可避とされている。それだけに、部品メーカーは早手回しに動いているのであろう。防衛産業は、これを「好機」とみて採用を積極化させている。