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自動車は、販売後のサービス提供で収益化を図る時代へ向っている。SDVは、無線通信を利用してソフトウェアの更新を行い、新しい機能を追加したり、既存の機能を改善したりすることだ。これにより、車両が販売された後も継続的に進化し続けることが可能になり、自動車メーカーには新たな収益源になる。日本では、トヨタがこのSDV戦略によってROE(自己資本利益率)20%を目標にする経営戦略を立てた。

『日本経済新聞 電子版』(12月25日付)は、「トヨタ、ROE目標20%に倍増 世界の車大手でトップ級」と題する記事を掲載した。
 
トヨタ自動車は、自己資本利益率(ROE)の目標を2倍の20%とする。上場企業の平均(23年度で9%台)を大きく上回り、世界の車メーカーでトップ級となる。販売後の車にサービスを提供するなど事業モデルを革新し、株主還元を積極化する。日本企業が資本効率を重視する流れが強まりそうだ。

(1)「トヨタのROEは近年、9~16%弱で推移してきた。2025年3月期の市場予想は11%が見込まれている。直近ではROEの具体的な目標を掲げていなかった。効率的な経営の目安であり投資家が重視するROEを引き上げ、市場評価を高める。トヨタ幹部はROEについて「世界で勝つためには20%くらいを安定的に出さないといけないのではないかという話をしている。小さなアセット(資産)から大きな売り上げを生み出す」と話す。達成時期は明らかにしていないが、30年前後を想定しているとみられる」

ROE20%目標は、2030年ころを達成時期に想定している。後述の通り、トヨタとNTTの共同開発によるSDVは、この頃を実用化時期としているので、これも目標達成の手段になっているのであろう。

(2)「ROE改善策の一つは、事業モデルの革新だ。車の販売後に様々なサービスを提供し、新車販売に頼らない事業モデルを構築する。トヨタ車は世界で累計3億台超生産されており、潜在需要は大きいとみる。今でも部品交換や定期点検、販売金融などを展開し、こうした事業の営業利益は「毎年1000億円以上拡大している」(宮崎洋一副社長)という。新たに注力するのが、販売後の車に無線通信を使って機能を追加するサービス事業だ。運転支援や事故防止などの機能を加えたり、自動運転の精度を向上させたりする。「ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)」と呼ばれ、米テスラがサービスを提供している。ソフトウェアが中心となるため、高収益が見込まれている。トヨタも技術開発を強化し、実証実験を重ねている」

トヨタとNTTは10月末に、自動車の交通事故防止のためのAIや通信基盤開発で提携すると発表した。NTTの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を活用し、自動運転技術を向上させる。トヨタは、ソフトが車両の機能や特徴を決める「SDV」(ソフトウエア・デファインド・ビークル)の開発を進めている。両社で、2025年以降に共同開発を始め、30年以降の普及をめざすとしている。30年までに計5000億円規模を開発投資する。トヨタは、このSDVを活用して「ニュー・ビジネス」へつなげるのだろう。

(3)「もう一つは、株主還元の拡充だ。金融機関の保有株売却の意向を受けて自社株買いを積極化しており、9月には25年4月までの取得枠の上限を1兆2000億円と従来から2割引き上げた。配当も安定的に増やす方針で、前期の配当総額は1兆円を超えた。配当と自社株買いを合わせた総還元性向は今期に5割を超す可能性がある」

ROE20%達成には、株主還元策の拡充が前提になる。自社株買いと安定的増配を行う見通しを立てている。ここに注目すべきだろう。トヨタには、100年に1度とされる自動車激変期を、難なくクリアする技術的裏付けがあることだ。

(4)「トヨタにとって、ROE20%は簡単ではない。ROEは純利益を自己資本の期中平均で割って求める。自己資本が前期平均の31兆円なら、純利益は6兆円超となる計算だ。最高益だった前期(4兆9449億円)から1兆円以上の上積みが必要になる。自己資本が35兆円なら純利益は7兆円となる。事業モデルの革新による利益水準の引き上げとともに、資産の有効活用や自己資本の最適化が達成のカギを握る。トヨタは総資金量(金融事業を除く、現預金など)が24年3月期で15兆円と、総資産(90兆円)の2割弱まで積み上がっている。総資金量は1年前に比べて3割増えた。圧縮に乗り出したものの、政策保有株やグループ株もなお多い。余剰な資産をどう効率化するかが課題となる」

トヨタはROE20%を達成する前提として、事業モデルの革新による利益水準の引き上げとともに、資産の有効活用や自己資本の最適化を行う。余剰資産の効率化が課題になってきた。まさに、「持てる者の悩み」というところだ。日産自動車が聞いたら、垂涎の的であろう。