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世界の原油市場は、下落説が強くなっている。2025年は、米国トランプ政権による原油増産政策やOPECプラスの増産が進むとみられる一方、中国経済の不振が需要の伸び悩みにつながるからだ。ウクライナや中東をめぐる地政学リスクで、原油高要因はくすぶるものの、原油価格は下落に向っている。IEA(国際エネルギー機関)が発表した2025年の石油市場は、日量140万バレルの供給超過になると予測する。

原油相場は現在、WTIベースで1バレルあたり約70ドルである。これが、50ドル見当まで下落するとの見方が強くなっている。日本のガソリン相場は、現在の1リットル約180円が150円程度まで下落可能とされる。

中国は、需要面で世界の原油相場へ大きな影響を与えている。この中国が、経済減速とEV(電気自動車)へのシフトによって原油需要の低下が見込まれている。

『日本経済新聞』(12月29日付)は、「中国、原油需要はや天井 輸入量 前年割れ見通し 『エネ安保』にらむ」と題する記事を掲載した。

世界2位の経済大国、中国の原油需要が業界の想定よりも早く頭打ちになるとの見方が出てきた。乗用車では電気自動車(EV)を含む新エネルギー車の販売台数が月間で初めてガソリン車を抜くなど国家主導で経済構造の転換が進む。表向きの理由は脱炭素だが別の狙いも見え隠れする。中国の動向は原油相場の先行きを左右する。

(1)「早期ピーク説が浮上したきっかけは、中国税関が毎月公表する原油輸入量だ。10月まで6カ月連続で前年割れとなり、1~11月累計でも前年同期比2%減となった。2024年通年でも前年を下回る可能性が高まっている。中国需要の弱さを受けてWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は1バレル70ドル前後と、年初来安値に近づいている」

中国の原油輸入量は、24年1~11月累計で前年同期比2%減である。WTI原油先物相場は、1バレル70ドル前後で年初来安値に近づいている。相場が力を失った。

(2)「原油需要は短期的には景気循環、中長期では省エネの進展など経済構造の変化によって決まる。一部の専門家は景気停滞だけでは足元の需要低迷を説明できないと考え始めている。英キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、キエラン・トンプキンス氏は「中国の需要は構造的に弱まる時代に入りつつある」とみる。丸紅経済研究所の李雪連上席主任研究員も「すでにピークにさしかかった可能性がある」と話す。国際エネルギー機関(IEA)公表の見通しによると中国の原油需要は30年ごろに頭打ちになる予想になっている。仮に原油需要が23~24年に天井をつけたとすれば、IEAの想定よりも速いスピードで中国経済の脱・原油依存が進んでいることになる」

中国の原油需要は、構造的に弱まる時代に入りつつある。不動産バブル崩壊という歴史的事件に遭遇している以上、当然である。

(3)「実際、中国の原油輸入量は20年以降、頭打ち感がでており、IEAの想定より早まるシナリオはあり得る。「裏付け」となる動きもある。例えばEVなど新エネルギー車の急速な普及だ。乗用車の新車販売に占める新エネ車の割合は24年半ばにガソリン車を上回るようになった。官民でEV充電設備の整備を進め、24年9月末時点で1143万カ所と前年同期比5割増となった。中国国内の石油製品需要をみるとガソリンやディーゼルなど自動車向け燃料が全体の半分近くを占める。EV普及が原油需要に与える影響は大きい」

中国の原油需要鈍化は、EV普及によってスピードが速められている。

(4)「さらに政府は、世界最大規模の石油精製能力の抑制に動き始めている。5月発表の「2024~25年省エネ・炭素削減行動計画」によると、精製施設の再編を通じて25年末に原油の処理能力を年間10億トン以下に抑えるという。27年ごろにピークを迎え、減少に転じる公算が大きい。なぜ政府は脱・原油依存を急ぐのか。温暖化ガスの排出量実質ゼロの達成を目指しているというのが表向きの理由だ。一方でガス排出量が多い石炭の消費や輸入は増えており、ちぐはぐ感は否めない」

中国は、原油輸入量を減らしている裏で、石炭の消費や輸入を増やすという矛盾した動きをみせている。

(5)「エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の竹原美佳調査部長は「米国など対外関係の脅威に備え、エネルギー安全保障戦略として再生可能エネなど国内の生産能力を強化する狙いがある」と話す。中国は石油の輸入依存度が7割と、天然ガス(40%)や石炭(7%)に比べて大きい。有事には米国によって供給網を遮断されるリスクがある。脱炭素を標榜しつつ、エネルギー自給率を高めるのが真の狙いとの見立てだ」

中国が、原油輸入を減らしている理由に米国との有事が想定されているという。台湾侵攻の「夢」を捨てていないのだ。

(6)「中国需要の構造的な低迷は、原油価格の形成に影響を及ぼす。00年代の原油需要は中国がけん引役だった。現時点でインドが中国に匹敵する需要けん引役になるとの見方は少ない。経済産業研究所の藤和彦コンサルティングフェローは石油輸出国機構(OPEC)加盟国による価格維持政策は限界を迎え、「原油価格は1バレル40~50ドル台が当たり前になる可能性がある」とみていた」

原油価格は、1バレル40~50ドル台が当たり前になる時代がくる可能性もある。これが実現すれば、日本経済も原油輸入額が約215億ドル減る。