韓国は、政治危機の真っ只中にある。最大野党「共に民主党」は、政権奪取に向って大統領代行の韓悳洙(ハン・ドクス)首相まで弾劾する、手のつけられない迷路に迷い込んでいる。韓首相は、憲法裁判所欠員の3裁判官を選任するにあたって、与野党が合意する人事決定を要望し、結論が出るまでは裁判官を任命しないとした。これが、最大野党を激高させて弾劾訴追を決定した。韓首相が、国会へ何を訴えたか、耳を傾けたい。
『朝鮮日報』(12月26日付)は、「大統領職を代行する韓悳洙首相、憲法裁判官任命「与野党合意まで保留」、12月26日談話全文」と題する記事を掲載した。
韓悳洙大統領権限代行・首相(注:その後に弾劾訴追)が26日、「与野党が合意して案を提出するまで憲法裁判官の任命を保留する」と表明した。韓権限代行は、「大韓民国の歴史に与野党合意なしに任命された憲法裁判官は一人もいなかった」として「憲法裁判官任命に対して合理的な国民が異見なく受け入れられる賢明な解決法が必ず必要だ」と述べた。憲法裁判官の任命を強行すべきだという野党の主張に対して、韓権限代行は「大統領権限代行が与野党の政治的合意のない政治的決断を下すことが、果たして韓国の憲政秩序に合致するのか」と述べた。以下は、韓悳洙首相の演説である。
(1)「私は本日、国民の皆様が深い関心をお持ちの憲法裁判官の任命問題について、私が持っている悩みを率直に申し上げるためにこの場に立ちました。これまでわが国が歩んできた道を振り返ってみると、これより大きな困難が迫っても私たちは常に乗り越え、また乗り越えてきました。それを可能にした力の一つがまさに政治の力でした。理念対立で多くの悲劇を経験した韓国ですが、それでもいつも私たちのそばには陣営の有利不利を越え、国全体を考える政治家たちがいました。政治で解決しなければならないことを政治で解決してくださる大人たちがいらっしゃったので、私たちがここまで来られたのだと思います。今日、私たちが多くの葛藤を経験していますが、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長、権寧世(クォン・ヨンセ)国民の力非常対策委員長指名者、李在明(イ・ジェミョン)共に民主党代表を含む与野党政治家たちが必ずそのようなリーダーシップを見せて下さるでしょうし、また見せなければならないと私は固く信じています」
憲法裁判所の3人の裁判官候補が、与野党の合意で決まれば任命すると明言している。
(2)「不幸なことですが、韓国はすでに3度目の大統領権限代行体制を経験しています。大統領権限代行は、国が危機を乗り越えられるよう安定的な国政運営に専念するものの、憲法機関の任命を含む大統領の重大な固有権限の行使は自制せよというのが、韓国の憲法と法律に盛り込まれた一貫した精神です。もしやむを得ずこのような権限を行使しなければならないのであれば、国民の代表である国会で与野党合意が先になされることが、今まで韓国憲政史で一度も崩れたことのない慣例だと思います」
韓国憲政史では、憲法裁判所裁判官任命は、与野党合意が先になされるという原則が守れてきた。今回は、この原則を曲げて野党案の候補を任命せよと迫っている。
(3)「黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行・首相も、憲法裁の弾劾審判の判断に影響を与える任命はしないという原則に基づいて、憲法裁の判断前には憲法裁判官の任命をせず、憲法裁の判断が出た後に任命しました。このように、大統領権限代行が大統領の重大な固有権限を行使する前に与野党が合意する過程が必ず必要な理由は、法理解釈が交錯して分裂と葛藤が激しいにもかかわらず時間をかけて司法判断を待つ余裕がない時、国民の代表である与野党の合意こそ民主的正当性を確保し、国民の統合を引き出すことができる最後の堤防だからです」
朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾時でも、大統領権限代行・首相は憲法裁の弾劾審判の判断に影響を与える任命をしないという原則を守った。最大野党は、弾劾裁判を有利にするように候補者決めて選任を迫っている。「多数の暴力」である。
(4)「事態の早急な収拾と安定した国政運営のために、早急に解決されなければならない重大な事案の一つが憲法裁判官の充員だということに異見を持つ方はほとんどいらっしゃらないと思います。「国民が怒っているから任命すればいいじゃないか。何が問題なのか」とおっしゃる方々もいらっしゃいますが、この問題は残念ながらそんなに簡単に答えを決められないというのが私の悩みです。憲法裁判官は憲法に明示された憲法機関として、その役割と責任が重大です。韓国の歴史を振り返ってみると、与野党の合意なしに任命された憲法裁判官は一人もいなかったという点が、その座の重さを裏付けています」
韓国の歴史を振り返ってみると、与野党の合意なしに任命された憲法裁判官は一人もいないという、事実を無視してはならない。
(5)「憲法裁判官の補充について、与野党はわずか1カ月前まで現在とは異なる立場をとり、そしてこの瞬間も真っ向から対立しています。こうした状況で、野党は与野党の合意なしに憲法機関の任命という大統領固有の権限を行使するよう大統領権限代行に働きかけています。このような状況が続くと、ややもすすれば避けられない非常事態が起きない限り、大統領権限代行は大統領の固有権限行使を自制し、安定した国政運営だけに専念しろという韓国憲政秩序のもう一つの基本原則さえ損なわれる恐れがあります」
1ヶ月前、与党は憲法裁判所裁判官候補を決めようとしたが、野党が反対して決めさせなかった。今度は、野党が自らに有利とみて強引に裁判官候補を決めようとしている。余りにも「党利党略」過ぎるのだ。


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