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習近平中国国家主席は、経済見通しで悲観論を述べることを厳禁している。国有証券会社の著名エコノミストが、米国で「中国の実際GDPは政府発表の半分程度」と批判した以降、発言を禁じられる処分を受けている。このように中国GDPは、粉飾まがいの不透明状態である。国債市場は、これを反映して超長期債から先に利回りが低下しており、中国経済の先行きへ警戒感が一段と強まっている。

『ブルームバーグ』(1月8日付)は、「中国デフレスパイラル、債券市場で高まる懸念ー日本化回避の岐路に」と題する記事を掲載した。

11兆ドル(約1740兆円)規模を誇る中国国債市場の投資家は、世界2位の経済大国に対し、かつてないほど悲観的になっている。1990年代に日本が経験したデフレスパイラルに中国も陥ると見込む向きも出ている。中国当局が打ち出した一連の景気刺激策にもかかわらず、10年債利回りは低下し、この数週間で過去最低水準を付けた。米国債利回りとは3%ポイントもの開きが生じている。

(1)「債券市場の織り込みが正しいとすれば、その影響は極めて大きい。中国の証券大手10社は、いずれも日本の失われた数十年に関するリサーチを発表しており、投資家が日本化リスクをどれほど深刻に受け止めているかを示している。ゴールドマン・サックス・グループは今週、ここ10年近くで最悪の年明けに動揺している中国の株式投資家にとって、日本のケースは「貴重な指南書」になると指摘した」

中国の証券大手10社は、いずれも日本の失われた数十年に関するリサーチを行い、中国との類似性を指摘している。

(2)「中国が、バブル崩壊後の日本と同じような状況に陥るかは分からない。ただ、類似点は無視できない。日中両国は不動産市場の崩壊や民間投資の低迷、消費の伸び悩み、巨額の債務、急速な高齢化に苦しんできた。中国政府による国内経済の管理強化を楽観的な理由として挙げる投資家でさえ、当局の力強い対応が遅れていることを懸念している。日本から得られる明確な教訓の一つは、当局が投資家や消費者、企業の悲観的な見方を払拭(ふっしょく)するのに時間がかかればかかるほど、成長を取り戻すことがますます難しくなるという点だ」

日中経済の類似点は、いくらでもある。不動産市場の崩壊、民間投資の低迷、消費の伸び悩み、巨額の債務、急速な高齢化だ。これだけ上げれば、もう十分であろう。

(3)「アバディーンの投資ディレクター、シンヤオ・ヌン氏は、「これは悪循環であり、是正しなければ悪化の一途をたどるだろう」と分析。「日本の教訓には、心理的な側面もある。つまり、こうした状況が長引けば長引くほど企業や消費者のマインドも低下する」と話す。中国当局は、対策を講じていないわけではない。昨年9月下旬から打ち出した広範な景気刺激策が国内経済を下支えし、習近平国家主席は5%前後に設定した24年の国内総生産(GDP)成長率目標の達成に自信を示した。今年は財政支出を強化する方針で、内需拡大を最優先課題としている」

習近平国家主席が、5%前後に設定した24年のGDP目標達成示唆は「粉飾」である。実態は、2~3%成長と指摘した国有証券会社の著名エコノミストが、習氏から発言を禁じられているのだ。

(4)「現在の中国と90年代後半の日本との間には、大きな違いもあり、特に中国では平均所得が低く、その分成長の余地が大きいと指摘する声もある。ブルームバーグ・エコノミクスの曲天石エコノミストは、景気刺激策の積み重ねと住宅市場の底入れの可能性により、中国経済は26年に持ち直す可能性があると分析。電気自動車(EV)を含む新産業の役割が大きくなる一方、不動産セクターによる経済の足かせは和らぐかもしれないと述べた」

中国は、すでに「中所得国の罠」に嵌っている。民間投資の低迷、消費の伸び悩み、巨額の債務、急速な高齢化が潜在成長力を奪っているのだ

(5)「どのような見方があるにせよ、日本の1990年から2010年までの失われた20年は中国資産への投資家に厳しい警告となっている。日経平均株価は、同期間でその価値の70%余りを失い、企業や銀行の痛手はさらに大きくなった。長期にわたる異次元金融緩和やコーポレートガバナンス(企業統治)を巡るパラダイムシフト、待望のインフレ転換を経てようやく昨年、日経平均は史上最高値を更新した。日経平均株価は、1989年12月29日に史上最高値を付け、この記録は2024年2月まで破られなかった」

習氏は、強権を持ってすれば「粉飾GDP」がまかり通ると思い始めている。こうした姿勢が、真っ当な政策を回避させ中国経済の回復力を奪うのだ。

(6)「中国にとって時間的余裕は少なくなっており、当局は日本の苦境から早急に学ぶ必要があるとアナリストらは指摘する。経済全体のアニマルスピリットを復活させ、人々の消費意欲を高めるよう促すアドバイスはよく目にするが、マインドの危機が続いていることを考えると、それも容易ではない。数十年にわたり日本を調査してきたイェスパー・コール氏は日本経済が好転し始めたのは、当局がインフラや企業に資金を投入するのではなく、「国民の懐にようやく直接お金を回すようになってから」だと分析。「政治家がその教訓を学ぶまで、基本的に20年かかった。中国の指導者らがこの教訓を学び、人々の購買力を高める知恵を持っていると願っている」と語った」

中国の消費者が「安物買い漁り」を止めて、まともな消費に戻れるような、「家計を温める」政策が最も大事である。習氏は、相変わらずインフラ投資と企業補助金へ注意を払っている。家計の重要性に気付かないのだ。中国では、「私」という概念は邪悪扱いされている。インフラ投資は、「我々」概念で正統化されている。このギャップが、中国を滅ぼすのだ。