a0960_008532_m
   

中国共産党は1月8日、国有企業や金融、エネルギー業界に照準を定め、反腐敗闘争を拡大すると公表した。中国社会がいくら「賄賂好き」と言っても、習氏が言うほど諸悪が転がっているのか、信じがたい話しだ。中国共産党の反腐敗闘争は、高官の不正を暴くことを目的としているが、習氏が党内の引き締めや自己への権力集中を図る意図であろう。習近平政権の基盤が揺れている証拠である。独裁政治は、腐敗と同根である。習氏が、腐敗の種をまき散らしているのだ。

『日本経済新聞 電子版』(1月8日付)は、「習指導部『反腐敗』闘争を拡大、金融やエネルギーに照準」と題する記事を掲載した。

中国共産党で汚職の摘発を担う中央規律検査委員会の全体会議は8日、3日間の日程を終えて閉幕した。採択したコミュニケは国有企業や金融、エネルギー業界に照準を定め、反腐敗闘争を拡大すると掲げた。中央規律委は毎年初めに全体会議を開く。党総書記を兼ねる習近平国家主席は開幕した6日に演説し「腐敗は党の直面する最大の脅威だ」と強調した。「党の厳格な統治を末端まで拡大し続ける必要がある」と訴えた。

(1)「8日に採択したコミュニケは金融やエネルギー、たばこ、医薬品、スポーツ、インフラ建設などを汚職撲滅の重点分野に位置づけた。「政府と企業の癒着を厳しく調査し、処分する」と記した。規律検査や監督の体制を広げ、反腐敗の能力を高めると表明した。国境をまたぐ不正行為の取り締まり強化も打ち出した。習氏は12年の1期目発足直後から反腐敗に注力し「大トラ」と呼ぶ大物も摘発した。最高指導部経験者で石油閥を仕切った周永康氏のほか、人民解放軍制服組トップの中央軍事委員会副主席を務めた郭伯雄氏や徐才厚氏を粛清した」

習氏は、反腐敗闘争を自らの権力維持手段に利用している。実に、巧妙である。

(2)「政敵を排除して権力基盤を確立するのが狙いだったが、習氏が絶対的な地位を築いた22年からの3期目でも同様に取り組んだ。国営新華社によると習指導部は24年、省庁だと次官級以上に相当する「中央管理幹部」58人を失脚させた。中央規律委が10月に党籍の剝奪を発表した唐一軍・前司法相もその一人だ。唐氏は習氏がかつてトップを務めた浙江省の勤務が長く、江西省政治協商会議(政協)の主席や遼寧省の省長を務めた。中国国営中央テレビ(CCTV)は7日夜に反腐敗の特集番組を放送し、唐氏を取り上げた。唐氏が地位と権力を悪用し、妻と共に多額の賄賂や不正な利益を得ていた手口を紹介した。妻が犯行を自白し、謝罪する姿も映した。5日には「ハエの貪欲とアリの腐敗を罰する」と題し、汚職官僚に焦点をあてた番組を放送した」

世界覇権を狙う国で、収賄を取り締まっている。何とも、不可思議は構図である。世界のトップに立てる資格があると思えないのだ。

『日本経済新聞 電子版』(1月9日付)は、「読者メール」で同紙の中国総局長 桃井裕理記者の「ディストピアはこれから」を掲載した。

中国の理論誌『求是』の2025年1月号の巻頭には、こんな習近平氏の思いがにじんだ記事がありました。習氏が、2023年2月の党学習会で語った「中国式現代化による強国建設と民族復興の偉業の全面的推進」という過去の談話です。そこにこんな一節がありました。

(3)「「中国式現代化の初期段階における成功と成果、新時代における『東昇西降』『中治西乱』の鮮明な対比は、多くの発展途上国に新たな希望と選択を与えた」。「東昇西降」「中治西乱」という言葉はそのまま「民主主義のたそがれ」と「中国共産党統治への自負」を表しているのでしょう。そして、「ディストピア」(注:暗黒世界)と感じた反腐敗闘争を、習氏は統治の柱としてますます活発化しています」

相変わらず続く反腐敗闘争は、中国がディストピアの証拠である。「東昇西降」とは、東洋(中国)は興隆し、西洋(米国)は衰退するという中国共産党のドグマだ。習氏が、反腐敗闘争を行っている限り「東降西昇」(中国は衰退し、米国が興隆する)構図に変わりない。

(4)「反腐敗は習近平政権の統治における重要なツールです。政権初期には政敵を追い落とす最強の手段となりました。そして今は民衆の不満をそらす「パンとサーカス」の要素も強まっています。政治への不満を表明できない中国の庶民たちにとって、特権を振り回してきた地方幹部らを中央が「成敗」するのは最高のガス抜きであり、公安が汚職と戦うテレビドラマは定番の人気ジャンルです」

中国4000年の歴史は、汚職の歴史である。気の毒だが、いまだにこの悪弊から抜け出せずにいる。近代化していない証拠である。

(5)「こうした面だけをみれば、習氏の反腐敗闘争は間違いなく「正義」といえます。それにもかかわらず、習氏の反腐敗闘争に疑念を抱かざるを得ないのは、彼が庶民受けする腐敗幹部の取り締まりは叫ぶものの、決して「腐敗が起きにくい仕組み」への改革を始めようとはしないためです。中国共産党の統治下には政治の透明性を保つための行政の情報公開手続きや権力の監視システムがありません。もともと収賄や横領がやりやすい環境にあるのです」

選挙制度を無視した独裁制が、腐敗を起こす土壌である。地方政府の行政トップが、選挙で選ばれる民主主義になれば、汚職官僚は自然淘汰されるはず。「独裁と腐敗」は、同根である。習氏は、それに気付かないのだ。中国共産党が存続する限り、腐敗は継続する。