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セブン&アイ・ホールディングス(HD)は1月9日、2024年3〜11月期の連結決算を発表した。売上高に当たる営業収益は6%増の9兆0695億円、営業利益は23%減の3154億円だった。純利益は、前年同期比65%減の636億円へ落込んだ。主力のコンビニエンスストア事業が不振で、不採算店の閉鎖などで特別損失もかさんだもの。

この状態では、「独立」維持がますます困難になってきた感じを否めない。カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT)と、セブン&アイ・ホールディングス創業家からMBO(経営陣が参加する買収)提案を受けており、いずれかを受入れざるを得ない局面に向っている。MBOでは、米国プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社のアポロ・グローバル・マネジメントが出資を検討していることが分かった。最大1兆5000億円の出資になる可能性がある。

『ブルームバーグ』(1月10日付)は、「セブンMBOに米アポロが出資を検討、最大1.5兆円規模ー関係者」と題する記事を掲載した。

セブン&アイ・ホールディングスの創業家が、経営陣へ参加する買収(MBO)計画は、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社のアポロ・グローバル・マネジメントが出資を検討していることが分かった。最大1兆5000億円の出資になる可能性がある。

(1)「複数の関係者が明らかにした。現在計画されている案では、アポロを含めて伊藤忠商事、セブンの創業家を中心に出資額は4兆円規模に引き上げる方向だ。これにメガバンクなどからの融資を合わせて9兆円規模の資金を集めてMBOに臨む計画となる。セブンの創業家が5000億円、伊藤忠は1兆円超の株式(エクイティー)出資し、アポロは優先株で最大1兆5000億円、その他にファンドなども優先株で参加する方向で調整を進めている」

MBOが、ファンドの参加を得て巨額の資金調達に動いているのは、コンビニ事業だけで成功できるという見通しを持っているからであろう。

(2)「カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールの買収提案に実質対抗する形で浮上したMBO計画は、これまで巨額資金の調達が高いハードルとなっていた。大口出資者の確保で資金調達のめどがおおむねたったことから、実現に向け大きく進むことになる。当初の想定より銀行からの借入金も圧縮し、リスク低減も見込める。アポロ広報担当はコメントを控えた。報道を受けてセブン株は上げに転じ、一時前日比7.4%高の2550円を付けた。SBI証券の田中俊シニアアナリストは、MBOの実現可能性が高まるほか、クシュタール側の買収額引き上げもあり得るとの期待で、株価が押し上げられたと分析。「しばらく株価にポジティブに効くだろう」と話した」

MBO計画が具体化すれば、クシュタール側(ACT)がどのような対応をするのか。一説では、クシュタール側に資金調達面で限界があるとされる。となれば、MBOで9兆円を出すのは再考されることもあろう。7兆円以上という見方もあるからだ。

(3)「MBO案の現実味が増したことで、これまでセブンの同意を前提に買収を進める意向を示してきたクシュタールの次の打ち手にも関心が集まる。ただ、関係者の1人によると、詳細な出資形態や出資後の議決権比率、非公開化後の取締役の構成など、詰めるべき点が残っているという。また、依然として銀行からの借入額は数兆円規模と、非公開化後のセブンには重い返済負担がのしかかる」

クシュタール側の次の対応に関心が集まっている。一般株主は、株価の値上がり期待でクシュタールの反応を期待しているだろう。

(4)「MBO案とクシュタールの提案は、いずれもセブンの社外取締役で構成する特別委員会が検討している。セブンの丸山好道最高財務責任者は9日に開いた決算説明会で、買収提案について「評価するべき材料が出そろっていない」と強調。意思決定の時間軸については、5月の定時株主総会が一つの目安になると述べた」

セブンの社外取締役などでつくる特別委員会は現在、次の3提案を議論している。
1)創業家主導の買収による株式非公開化。
2)ACTの傘下入り。
3)単独による現経営体制の維持。ACT提案では、米国での独占禁止法規制への対応策は明らかになっておらず、資金調達を含め買収実現性に疑問符が付いている。ACTが、いつ正式提案を出すかは見通せない状況だ。

セブン創業家によるMBOの株式非公開化調整は、想定よりも遅れている。当初は、2024年内に正式に非公開化を提案する予定だった。それだけに、投資会社のアポロ・グローバル・マネジメントが出資を決めたとすれば、大きく前進する。