韓国の尹錫悦大統領弾劾に伴う「内乱罪」捜査で、国内は左右両派の対立が激しくなる事態に巻き込まれている。国会での大統領弾劾訴追では、「内乱罪」を弾劾条項に掲げていた。最大野党「共に民主党」はその後、これを取り下げたのだ。こうした一貫しない姿勢が、右派の反発を招いている。弾劾訴追に内乱罪がないことを理由に、大統領逮捕を不当としている。国内の政治不安が、経済活動不振へと波及しており、国内経済は大きなダメージを受けている。
『ハンギョレ新聞』(1月10日付)は、「『朴槿恵弾劾の時より深刻』…2年ぶりに『韓国経済の下方リスク』の警告灯」と題する記事を掲載した。
国策研究機関である韓国開発研究院(KDI)が、韓国経済の下方リスクが大きくなっているという診断を出した。内需回復の遅延と輸出の鈍化、通商環境悪化の可能性など国内外の経済の不確実性が高まる中、「国内政治状況」で経済心理の悪化まで加わったという判断だ。KDIが経済の下方リスクが大きくなっていると警告灯を点灯したのは2年ぶりのことだ。
(1)「KDIは8日に発行した「経済動向1月号」で、「最近の韓国経済は生産増加傾向が鈍化し景気改善が遅れる中、不確実性の拡大による経済心理の萎縮で、景気下方リスクが増大している」と明らかにした。1ヶ月前の12月号で通商環境が悪化する可能性に言及し、「不確実性の拡大」を指摘したときよりもさらに暗くなった見通しであり、KDIが「景気下方リスク」に言及したのは2023年1月号以後2年ぶりのことだ。2年前、景気下方リスクに触れた背景は、国内外の金利引き上げだった」
保守派大統領が、連続して「弾劾」されるとは余りにも異常すぎる事態である。尹錫悦大統領の場合、「戒厳令」を出すという突拍子もない行動だけに、国民への衝撃が大きい。その背景には、最大野党が国会審議を妨害していた事実もある。左右両派が本来、裁かれる立場なのだ。「景気下方リスク」が高まるのは、当然であろう。
(2)「この日、KDIが景気下方リスクの警告灯をともしたのは、「12・3内乱事態」以降経済心理がかなり速く悪化しているためだ。KDIは、過去の朴槿恵(パク・クネ)元大統領に対する弾劾前後期間と最近を比べると、今回の方が家計と企業の心理がさらに大きく萎縮している点に注目した。KDIは「過去(朴元大統領弾劾当時)には3ヶ月にかけて消費者心理指数(CCSI)が9.4ポイント低下したが、最近は1カ月間で12.4ポイント低下した」とし、「企業心理指数も過去とは異なり比較的大幅に下落した」と明らかにした」
尹錫悦大統領は、国会へ兵士を送って封鎖しようとしただけに、この衝撃は簡単に消えないであろう。
(3)「実際、韓国銀行の消費者動向調査結果を見ると、消費者心理指数は昨年6月から11月まで100を小幅に上回ったが、12月に入って88.4と前月に比べて12.3ポイント下がった。これは新型コロナウイルスの大流行の衝撃が襲った2020年3月(-18.3ポイント)以来最大幅の下落だ。一方、朴槿恵元大統領の弾劾が国会で本格的に議論された2016年11月には前月に比べて6.7ポイント下落した。消費者心理指数は100より大きければ現在の消費者期待心理が長期平均(2003〜2023年)より楽観的だという意味であり、100未満ならば悲観的だという意味だ」
韓国の消費者心理は、政治不安に対して敏感な反応するという特質がある。市民は、国会前で大統領弾劾デモをする一方で、深い心の傷を負っている。これが、短期間に癒えるはずがない。
(4)「企業の見通しも暗い。韓国銀行の企業景気実査指数(BSI)調査で、製造業企業の業況展望指数は10月の73.0から11月71.0、12月66.0、1月61.0へと3ヶ月連続で下落した。この指標が100以下の場合は、今後の景気悪化を予想する企業がそうでない企業より多いことを意味する。ただし、KDIは「昨年12月3日以後、金融市場が多少不安定だったが、過去の政局不安の時期(2016年10月24日以後)に比べては安定している」と評価した」。
国内政治不安によって急激に進むウォン安は、中小企業にとって大きな負担となっている。5大都市銀行の中小企業信用貸出金利(新規取扱額平均金利)は、先月公示基準で年5.16~6.26%である。韓国銀行の二度の利下げ直前である昨年9月末(年5.11~6.06%)に比べて、むしろ最大0.2%ポイントも上昇した。信用格付けが低い場合(6等級以下)は貸出金利が年12%を超えるところもある。このように、政治不安が招くウォン安によって、貸出金利が押上げられている。
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