あじさいのたまご
   

中国の金融市場は、すべてが弱気に支配されている。中国株も10日の取引で値下がりしているからだ。米国での第2次トランプ政権の発足を10日後に控え、MSCI中国指数は、再び弱気相場入りする可能性が高まっている。同指数は、一時1.1%下げ、昨年10月7日からの下落率が約20%にも達した。

中国人民銀行(中央銀行)は10日、国債の買い入れを一時停止すると発表した。景気停滞を見込む投資家資金が債券に流れ込み、利回り低下が人民元の下落を促している。人民銀は声明で、国債の供給が需要に届かず、購入を今月中断すると説明している。国債の買い入れ目的は、市場に資金を供給し金利を低下させることで、企業や個人の借り入れコストを下げ、経済活動を促進することを目指している。だが、これが過度の利回り低下となって人民元安へ跳ね返っていう。中国経済は、「八方塞がり」に陥っている。

『ブルームバーグ』(1月10日付)は、「中国人民銀、国債買い入れ一時停止ー景気停滞懸念の中で人民元支援」と題する記事を掲載した。

中国人民銀行(中央銀行)は10日、国債の買い入れを一時停止すると発表した。人民銀は声明で、国債の供給が需要に届かず、購入を今月中断すると説明。市場の状況に応じて買い入れ再開の時期を決めるとした。

(1)「景気下支えに向けた積極的な緩和策を見込む動きや安全資産に対する需要を受け、ベンチマーク債の利回りは低下、過去最低を付けていた。長引く不動産危機や消費の低迷、デフレ懸念の中で、投資家は債券に目を向けており、オフショア人民元は最安値が視野に入っている。みずほ銀行のアジア外国為替チーフストラテジスト、張建泰氏は人民銀の動きについて、「国債利回りの急低下や元安圧力の高まりに対する当局の不満」を反映していると指摘。「利回り水準はすでに今年の金融緩和を積極的に織り込んでいると考えられる一方、人民元は今後も堅調なドルや関税の脅威から圧力を受けるだろう」と語った」

現在の中国経済は、米国「トランプ2.0」を迎えて完全な受け身になっている。「中華民族再興」と言った浮ついた話でなく、なんとか生き延びたいという切羽詰まった事態へ追込まれている。習近平氏は「形無し」状態だ。この不安状態をかき消すために、「反腐敗闘争」を各方面へ仕掛けて、忠誠心を維持させている。習氏もサバイバルで必死だ。

(2)「人民銀は昨年、政策の枠組みを見直し、国内経済の流動性を管理する手段として国債の売買を追加した。だが、債券高によってこの手段の活用が難しくなっている。債券投資家は世界2位の規模を誇る中国経済に対し、かつてないほど弱気になっており、デフレスパイラルに陥ると見込む向きさえある。国債利回りが日に日に上昇する米国とは極めて対照的だ。中国当局が為替相場を安定させようと取り組んでいるにもかかわらず、元相場は対ドル許容変動幅の下限近くまで下げる状況となっている。みずほセキュリティーズアジアの周雪エコノミストは、「人民元の下支えに向けた人民銀による新たな動きだ」と話す」

経済活動へ刺激を与える目的で始めた国債買い入れが、全く違う方向へ進んでいる。実物経済を刺激せず、先行き不安で国債人気を高めているからだ。これが、国債利回り低下を招き、人民元安相場へ飛び火する最悪事態を招いている。「泣き面に蜂」だ。日本が、ついこの間まで苦しんでいた状況の再現である。

(3)「共産党指導部が昨年12月、金融政策を14年ぶりに「適度に緩和的」とする方針を打ち出して以降、積極的な金融緩和観測が広がっていたが、人民銀の発表はこうした見方を弱める可能性もある。バンク・オブ・アメリカ(BofA)は人民銀が今年に補完的な政策手段として純額で3兆元(約64兆7700億円)相当の国債を購入すると見込んでいた」

人民銀行の国債買い入れ「一時中止」は、市場の雰囲気を変えるための便法であろう。何時までも「やせ我慢」できるはずもない。

(4)「今回の発表後、国債利回りは全般的に上昇。5年物は一時0.08%ポイント上がり、10年物は0.04ポイント上昇し1.675%となった。オフショア人民元は0.1%高と小幅ながら上昇した。ING銀行の大中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は今回の措置は政策転換というよりも、市場環境に対する短期的な反応に見受けられると分析。1~3月(第1四半期)に利下げなどの金融緩和が実施されると引き続き見込んでいる。ソン氏は、「今回の発表で利回りは短期的にやや上昇すると考えられ、人民元も若干下支えされる可能性がある」と述べた」

今回の国債買い入れの「一時中止」によって、国債利回りは反発している。だが、経済状況に抜本的な変化がない以上、いずれ、国債買い入れ再開となろう。