あじさいのたまご
   

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が15日、身柄を拘束された。この直後に文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は、フェイスブックに「平凡な市民たちの巨大な連帯が成し遂げた勝利」と投稿した。勝利感が溢れた文面である。ここは本来、沈黙するべきであろう。こうした不幸な事件が起こったことに、前大統領として忸怩たるものがあるはず。それを感じないとしたならば、もはや言うべき言葉を失う。韓国の民族的悲劇であるからだ。

『中央日報』(1月16日付)は、「米シンクタンク『尹大統領逮捕で韓国は未知の領域へ 経済楽観は逆効果招く』」と題する記事を掲載した。

尹錫悦大統領が、高位公職者犯罪捜査処に逮捕された。これが、韓国社会にさらに深刻な不確実性を引き起こすという、米国シンクタンクの分析が出てきた。

(1)「聯合ニュースによると、米戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ氏らは15日、CSIS傘下の北朝鮮専門サイト「ビヨンド・パラレル」に掲載された分析文で、「尹大統領の逮捕は戒厳令宣布から43日ぶりに発生した前例のない事件で、韓国社会を未知の領域に追いやった」と診断した。続けて「戒厳令宣布から逮捕に至る過程は韓国民主主義の回復力と脆弱性を同時に表わし、韓国の分裂をさらに深めさせた」と説明した。チャ氏らは「長引く政治的危機はもっと大きな危険を招く。政治的混乱と経済的悪影響を最小化するために安定化に集中する時」と提言した」

現職大統領が身柄拘束される事態は、民族的な悲劇とみるべきだ。左派が、右派大統領を追放したという感覚であれば、韓国は救われまい。文在寅前大統領は、「平凡な市民たちの巨大な連帯が成し遂げた勝利」と喜んでいるが、この事件を引き起した責任の一半は左派にもあるからだ。そういう認識を欠いて左派が喜んでいれば、韓国の分裂をさらに深めるであろう。これが、4回目、5回目の大統領弾劾事件を引き起すであろう。

(2)「チャ氏らは、特に韓国政府が経済に対し楽観している点を指摘した。チャ氏らは、「韓国政府は2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領弾劾と2016年の朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾当時の経済関連成果を提示して、現在のガバナンス危機から韓国経済が回復力を維持できると自信を示している。こうした評価は投資家に信頼を与えるためのものだが2つの理由でむしろ逆効果を呼ぶ」と指摘した。最初の理由では「経済に対する誤った信頼を投影すれば政治家らに自己中心的内部闘争から抜け出し効果的ガバナンスに戻る最も速く効果的な道を探させる圧迫が失われる」とした」

左右両派は、今回の事態を重く受止めて会談を開くなど対策を立てるべきである。現状は、互いに「流言飛語」の渦中で、相手陣営を非難して「満足」している状態だ。

(3)「また、「中国の経済成長と半導体輸出実績が、弾劾危機から韓国を回復させるのに助けになった2004年と2016年と違う。尹大統領弾劾をめぐる現在の経済状況は、はるかに不利だ」と評価した。チャ氏らは韓国の現在の経済状況に対し、「欧州と中東で行われる2つの戦争、停滞する中国の経済成長、差し迫る米国の関税、半導体輸出統制などがある。時間(早急な収拾)は政治的危機を解決するのに絶対的に重要だ」と強調した」

韓国経済は過去、中国への輸出で経済危機を乗り越えてきた。だが、この便法はすでに消えている。中国の安値輸出攻勢にさらされているからだ。経済の立直しには、政治不安を早急に払拭することである。それには、国会で最大議席を占める野党「共に民主党」が率先すべきは、与党と協力して残された議案を審議して早急に成立させることだ。勝ち誇った態度で横柄な姿勢をみせれば、国内政治不安は消えるどころかさらに激化するだろう。