中国自動車業界の平均稼働率は、5割見当と最悪局面である。政府補助金を貰い、生残りを賭けた死闘を続けている。何とも資源の無駄使いで時間を空費している。習近平国家主席は、生き残った企業が世界企業になれると「公認」しているのだ。ここだけは、「市場競争派」である。すべては、中国の世界覇権の前哨戦という見立てなのだろう。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月16日付)は、「中国の自動車業界、『淘汰』の段階に」と題する記事を掲載した。
中国の自動車メーカーが過剰生産能力を抱えた結果、世界最大の自動車市場が淘汰の段階に入っている。中国乗用車協会(CPCA)が、9日発表した昨年の国内自動車販売台数は、前年比5.5%増の2290万台だった。しかし、この需要は各社が構築した生産能力をはるかに下回っており、メーカーは生き残りをかけて値下げや国外市場への進出を迫られている。
(1)「中国の電気自動車(EV)メーカー、小鵬汽車(シャオペン)の何小鵬CEO(最高経営責任者)は昨年12月31日付けの社内文書で、「自動車業界は2025~27年に淘汰の時期を迎える」とし、「2025年の競争はかつてないほど激しいものになる」と述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこの文書を確認した。早々に「負け組」に名を連ねているのは外国ブランドだ。米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲンは、地場メーカーにシェアを奪われている。CPCAによると、中国市場では昨年、国産ブランドのシェアが61%となり、前年から8.6ポイント上昇した」
中国の地場メーカーは、補助金に助けられて値下げ競争を行っている。海外メーカーは、この煽りを食ってシェアを奪われている。
(2)「とはいえ、国産ブランドも試練に直面している。コンサルティング会社アリックスパートナーズのマネジングディレクター、スティーブン・ダイヤー氏によると、昨年、23のEVブランドが中国市場から撤退したか他のブランドに統合された一方で、12の新ブランドが市場に参入した。昨年の1~9月に少なくとも1台のEVを販売したブランドは112に上るという。同氏の推計では、中国の自動車メーカーは24年、生産能力の半分程度しか使用しなかったとみられる」
国産ブランドも過激な競争を繰り広げている。これが、生産者物価指数をマイナスへ引き込む逆効果を生んでおり、デフレマインドを増幅する事態へ落込んでいるのだ。この一方で、国債を発行して耐久消費財購入促進を行っている。中国に、総合的視点の経済政策が存在しないのだ。
(3)「調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズで世界の自動車生産・販売予測を担当しているサム・フィオラニ氏は、「国有企業や大手民間企業は生き残れるだろうが、小規模企業、特に輸出実績のない企業の間では再編と淘汰が進むだろう」と指摘する。こうした淘汰は、中国政府の産業政策の結末としてよくあることだ。中央・地方政府はまず、補助金や政策支援で特定の産業を奨励する。一定の規模に達すると、生存競争を繰り広げさせる。同様の動きは、最近では太陽光パネルや風力タービンで、過去には鉄鋼や電子機器でも見られた」
中国は、他産業でも過当競争させて生き残った企業を保護するというスタイルとっている。自動車も同じだ。
(4)「競争に生き残った企業は世界トップ企業になることも多く、国の誇りの源となる。EV大手の比亜迪(BYD)をはじめとする中国の自動車メーカーは、すでに世界のEVメーカーの上位に入っている。中国の新車販売台数の半分超を占めるのは、フルEVかPHV(プラグインハイブリッド車)だ。同国の習近平国家主席は新年の演説で、2024年にこれらの車両の生産台数が1000万台の節目に達したことを強調した」
民間企業BYDが、EV勝者になったことは確実だ。だが、支払手形の期限を延長するなど、苦しい経営事情も伺わせている。
(5)「テスラは、欧米や日本の競合他社の多くよりも健闘している。調査会社グローバルデータによると、テスラの昨年の中国での販売台数は前年比8%増の約66万2000台だった。それでも、BYDをはじめとする国内ライバルに後れを取っている。BYDは昨年、中国で約400万台を販売した。GMの中国合弁会社の販売台数は、2018年から24年にかけて5割余り減少した。オートフォーキャストのフィオラニ氏は、GMの工場は中国に6カ所あり、過剰だと指摘する。GMは先月、中国事業の不振により50億ドル超の非現金費用を計上するとの見通しを示した」
GMは、中国国内に工場を6カ所も持っている。過剰と指摘されている。
(6)「資金力のある後ろ盾があっても、(中国)企業の将来は保証されない。中国のソーシャルメディアに昨年12月、国内のあるEV新興企業の従業員が上司を取り囲み、給与などが確実に支払われるのか懸念を伝える動画が投稿された。中国の高級EVメーカー、上海蔚来汽車(NIO)のウィリアム・リー(李斌)CEOは先月、「自動車会社には欠点が許されない」とし、自動車業界は「最も激しく残酷な競争の段階に入った」と述べた」
中国EVでは、賃金未払いが起こっている。それでも、販売競争を続けている。補助金政策の空恐ろしさを感じるのだ。市場競争の限界をはるかに超え、「野蛮な競争」へ突入している。
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